Peabody Energy とArcelorMittal、豪州Macarthur Coal の買収提案

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Peabody Energy とArcelorMittalは8月1日、共同でMacarthur Coal 買収提案を行った。

Macarthurは世界最大の低揮発・高炉直接吹込用石炭(low volatile pulverized coal injection coal)のメーカーで、豪州のクイーンズランド州東部Bowen Basinで生産及び開発を行っている。

 

主な鉱山と権益は以下の通り。

  Macarthur  CITIC 丸紅 双日  JFE商事 日鉄商事 Gloucester
Coppabella鉱山 73.3% 7% 7% 7% 3.7% 2%  
Moorvale鉱山
Middlemount鉱山 50%           50%
新規 Codrilla鉱山 85% 15%          

中国中信集団(CITIC)はMacarthurの第一位の株主で24.60%を所有している。


Peabody は民間
企業としては世界最大の石炭生産企業で、米国の総発電需要の約10%、世界の2%の石炭を供給している。
米国内を中心として、豪州やベネズエラ(同国最大の炭鉱の権益を有する)で石炭生産に携わり、世界各国で約30の炭鉱を所有する。
モンゴルの
Tavan Tolgoi 開発にも応札している。

ArcelorMittalは、2006年にインドのMittal Steel が欧州のArcelorを買収して統合した世界最大の鉄鋼メーカー。
Macarthurの二位の株主で、16.07%を保有している。

両社は7月11日にMacarthur Coal に対して15.50豪ドルで買収提案をしたことを発表した。
その後、同社と協議し、7月14日にDue Diligenceを開始した。

この時点でMacarthurは買収価格を16豪ドル以上に引き上げるよう求め、さらに2社が株式の9割以上を取得した場合は買収価格を同18豪ドルにするよう主張したが、2社は結局、この条件を拒否した。

Due Diligenceの結果、今回の正式な買収提案となった。

2社は買収契約(Bid Implementation Agreement)の締結を求めたが、Macarthur は他の買収提案の可能性もあるとして拒否した。

両社が設立する新会社PEAMCoal Pty Ltd (Peabody 60%、ArcelorMittal 40%)が買収を行う。
ArcelorMittal は既に
Macarthurの株式の16.07%を所有している。

同社の第一位の株主は中国の中国中信集団(CITIC)で24.60%を所有している。
二位が
ArcelorMittal の16.07%で、五位に韓国POSCO(7.02%)がいる。

買収の条件は以下の通り。

・買収金額は1株当たり15.50豪ドル(7月11日終値に41%のプレミアム)
・総額47億豪ドルとなる。
・株主は第2四半期分の配当 16セントを受け取るため、実質15.66豪ドルとなる。
・最低 50.01%の買収
・政府、関係当局の認可

これに対し、Macarthur は8月1日、2社の提案は企業価値を正当に評価していないと批判し、株主には買収提案に反応しないよう訴えた。

付記

ArcelorMittal は2011年10月25日、Macarthurの買収から撤退すると発表した。

10月23日の発表では、同社とPeabody EnergyがMacarthur買収のため設立したPEAMCoalはMacarthur株の約59.85%を取得し、買収は成立したが、買収した株式はPeabodyが引き継ぐ。
 なお、
PEAMCoalは8月に買収提示額を1株当たり16豪ドルに引き上げた。

ーーー

Macarthur Coalに対しては2010年春に、Peabodyを含め、3社による買収合戦があった。

2009年12月に香港のコモディティ会社のNoble Groupが豪州の子会社 Gloucester Coal の株式と交換に、Macarthurの株式23.2%の購入を提案した。

Macarthurがこれを株式総会に諮る準備中の2010年3月にPeabodyが1株13豪ドルでの買収を提案、4月に14豪ドルにアップしたが、直後に豪州の同業のNew Hopeが14.58ドルでの買収を提案した。
これを受け、Peabodyは一気に16豪ドルに引き上げた。

更にスイスのXstrataがMacarthur Coalの株主との話し合いを始めた。

その後、Peabodyは帳簿をチェックし、豪州政府の新しい鉱山税の影響も勘案し、買値を15豪ドルに引き下げた。
(当時は増資前で、15豪ドルでも総額は38億豪ドルであった。)

しかし、MacarthurとGloucesterの合併交渉はつぶれ、New HopeとPeabodyの提案もMacarthurが安過ぎるとして拒否した。
Macarthurは拒否の理由の一つとして、大株主のCITICと
ArcelorMittal の意向を挙げている。

 

今回、PeabodyはそのArcelorMittal と組んで買収提案を行ったもの。

 

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