会社更生手続き中のバイオ企業 林原は8月3日、長瀬産業とスポンサー契約を結んだと発表した。
今後、管財人が11月18日までに更生計画案を提出する。
経緯については、
2011/1/28 林原が私的整理手続き
2011/2/7 林原が会社更生法申請
長瀬産業は再建中の林原グループ3社に対し、総額700億円の資金支援を実施する。
長瀬産業は林原のバイオ技術を自社の酵素研究に取り込みたい意向で、700億円の買収額についても、「私どものグループになって相乗効果で将来の発展を考えれば高くはない」としている。
長瀬産業は、酵素事業をバイオ分野の基盤と位置付け重点育成する方針で、バイオケミカル技術の確立も視野に入れている。
酵素ビジネス では、1939年にアミラーゼを工業化して以来70年以上の歴史を持つ。
1950年代に深層液体発酵技術、70年代には国産初の異性化糖製造技術を確立した。
現在は遺伝子工学、たん白質工学、細胞工学・代謝工学、生物情報科学といった基盤技術をベースに、ナガセR&Dセンターが製品設計、新規商品の開発を行い、ナガセケムテックス福知山事業所での生産に結びつける体制を敷いている。
主なターゲットはエキス・調味料、ヘルスケア製品をはじめとした食品分野。とくに海外市場での販売に力を入れる。
裁判所の認可を経て、林原(製造、グループ統括)、林原商事(販売)、林原生物化学研究所(R&D)の3社は合併し、統合後に100%減資を実施する。
長瀬産業は存続会社が発行する全株式を取得し、弁済資金の貸し付けなどとあわせ、総額700億円を拠出する。
林原のスポンサーには当初70~80社程度の企業から打診があり、多数の会社が応募したが、7月25日の最終入札には次の4社が残った。
長瀬産業 | |
日本たばこ産業(JT) | |
韓国CJグループ (国内ファンドのユニゾン・キャピタルとの連合) |
サムスングループの製糖事業(第一精糖 Cheil Jedang)がルーツ。 1993年にサムスンから独立 韓国内外で食品やバイオ、流通、メディア事業などを展開 |
群栄化学工業 | フェノール系樹脂、澱粉糖類、高機能繊維、高機能複合材料、その他 |
スポンサー選択には、「トレハロース」をはじめとする食品素材、香粧品素材、医薬品素材、機能性色素事業について、その研究開発・製造販売活動が一体として継続・発展することが基本方針で、買収額のほか、美術館や博物館、チンパンジー研究など林原が行っていたメセナを含めた事業の一括引き受けが条件となった。
当初、買収金額は400億円規模とみられたが、林原の持つトレハロースの技術が評価され、価格は段階的に引き上げられた。
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長瀬産業は8月4日、林原の本社で会見した。
長瀬社長は「今のまま岡山に軸足を置いて事業を続けてもらい、林原の会社名も当面は残す」との考えを示し、従業員の雇用も継続すると断言した。
メセナ活動については、「林原のメセナが社会的にも意味のある事業であることは理解している。当面はそのままの継続を考えている」としたが、「将来、もっといい主体が出てきたら引き継ぐか考えたい」と述べた。
「当面」の時期については、「2、3カ月ということはないが、1年なのか数年なのか十数年なのかは、今の時点でお答えしかねる」と答えた。
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林原の事業の状況は以下の通り。
会社更生法申請 | 林原 (製造、グループ統括) |
合併 統合後に100%減資 増資を長瀬産業が引き受け (引受と貸付で700億円拠出) | |
林原商事 (販売) | |||
林原生物化学研究所) (R&D) | |||
太陽殖産 (不動産) |
不動産部門 |
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保険部門 | |||
林原美術館 | 当面 長瀬が引き受け | ||
林原自然科学博物館 | |||
林原共済会 (メセナ活動) | |||
京都センチュリーホテル | 2011/7/25 京阪電気鉄道が99.72%を買収 | ||
H+Bライフサイエンス (健康食品) |
2011/6/21 ㈱ハーバー研究所が買収 (無添加化粧品メーカー) | ||
アメニティルネサンス | |||
ザ ハヤシバラシティ | 駅前の土地の事業(下記) |
林原の管財人は、林原が所有するJR岡山駅前の駐車場(約45千m2)について、別の入札で来月をめどに売却先を決めると説明した。
中国銀行が設定した担保権を無効とする否認請求も東京地裁に行っており、管財人は100~200億円の売却額を想定している。
管財人は又、林原健・前社長、林原靖・前専務と前常務、前取締役の旧経営陣4人に対する損害賠償査定を8月3日付で東京地裁に申し立てたことを明らかにした。前社長に200億円、前専務に150億円とされる。
裁判所が賠償責任を認めれば、前社長らに支払いが求められる。
なお、林原グループの負債総額は約1400億円。
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