この数日、人民元が高騰している。
2010年6月19日以来、中国人民銀行が毎日発表する基準値に対し、±0.5%の変動を認めているが、本年初め以降は人民元の緩やかな上昇を狙い、終値が上昇した場合は翌日の基準値を下げるなどの操作を行ってきた。
しかし、8月9日の終値が上昇したにもかかわらず、10日の基準値は大幅に引き上げ、その後も終値が最高値を更新しているが、翌日の基準値を引き上げている。
12日の基準値、終値、一時高値はいずれも2005年7月の人民元切り上げ以来の最高値を更新した。
昨年6月18日の終値に対し、昨年末では3.59%の上昇であったが、12日の終値は6.83%の上昇となった。
基準値 | 終値 | 一時高値 | '10/6/18比 | ||
終値 | 一時 | ||||
2010/6/18 | 6.8262 | ||||
2011/8/ 8 | 6.4305 | 6.4360 | 6.4250 | 6.06% | 6.24% |
8/ 9 | 6.4335 | 6.4306 | 6.15% | ||
8/10 | 6.4167 | 6.4181 | 6.36% | ||
8/11 | 6.3991 | 6.3945 | 6.3895 | 6.75% | 6.83% |
8/12 | 6.3972 | 6.3895 | 6.3890 | 6.83% | 6.84% |
7月の中国の消費者物価指数(CPI) は前年同月に比べ6.5%上昇した。6月の6.4%を上回り、2008年6月の7.1%以来、3年1カ月ぶりの高水準となった。(うち、食品が14.8%、非食品が2.9%の上昇であった。中国の食卓に欠かせない豚肉が56.7%上昇した。)
このため市場では「当局が輸入物価の値下がりにつながる元高を加速させ始めた」との見方が広がっている。
中国の政府系メディアは12日、中国人民銀行による政策変更の可能性を一斉に報道した。
中国証券報は、中国人民銀行が輸入インフレを管理する上で、人民元を主要ツールとして活用する用意があることを示していると報じた。
人民日報は、元の上昇加速は短期的に物価圧力の緩和を可能にし、長期的には中国の輸出セクターの成長を助けるとの見方を伝えた。
「元高傾向は、沿海の輸出産業の技術力強化、製品イノベーション、中西部地区への移転を推進する。同時に輸出部門の資源を、サービス業など内需部門に向けることを促し、経済の輸出に対する過度な依存を防ぐことができる。これらは産業のアップグレード、構造改革、経済発展方式の転換に役立つだろう」
中国政府にとっては、現在の物価高は国民生活に直接響くため対策が必要であるが、人民元の上昇は輸出産業に深刻な影響を与える。金融引き締めにも限度があり、非常に難しい選択を迫られている。
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