コバレントマテリアルは8月11日、半導体ウエハー事業を台湾のSino-American Silicon Products Inc.(SAS:中美矽晶)に約4億5100万ドル(約347億円)で売却すると発表した。
子会社のコバレントシリコン(CVS)にシリコンウエハー事業を集約し、CVS全株式をSASに譲渡する。
収益が悪化していたウエハー事業を切り離し、セラミック関連事業に注力する。
半導体製造装置用セラミックス製品など、半導体関連部材事業について競争力の維持・強化を図るとともに、第二の柱となるエネルギー・環境事業も用途開発と新製品の投入を強化、成長を加速させる。
SASは台湾で太陽電池向けのウエハー事業を展開している。連結売上高は約600億円。コバレントのウエハー事業を買収することで半導体向け事業に参入する。
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コバレントの前身は東芝が40.4%を出資していた東芝セラミックス。
2006年10月、東芝セラミックスはCarlyle Groupとユニゾン・キャピタルが設立した特別目的会社エスアイシー・インベストメントを通じた自社株の株式公開買付を宣言、東芝の賛同を得て、これを実施した。
2007年6月にエスアイシーはTOBとその後の株式交換により完全子会社化した東芝セラッミクスと合併し、コバレントマテリアルとして発足した。
現在の株主は以下の通り。
Carlyle Group 45.6% ユニゾンキャピタル 22.8% UC Mask Investor 24.7% 東芝 3.1%
世界のシリコンウエハーのシェアは、信越化学が36%、SUMCO(旧三菱住友シリコン)が29%を占めるのに対し、コバレントはMEMC(米)、LG Siltron(韓)、Siltronic AG(独)の後塵を拝し、6位となっており、シェアは5%程度に過ぎない。
半導体需要は伸びているが、価格競争に拍車がかかっており、開発投資の負担も増えている。
同社の決算(百万円)は以下の通りだが、 前々期、前期とも大赤字で、累積損益は-33,239百万円となっている。
うち、ウエハーの営業損益は当期は黒字だが、 前々期は-2,212百万円、前期が-1,550百万円となっている。
当期も税引前損益は赤字で、最終が黒字になったのは繰延税金資産の計上によるものだが、これは今回の事業売却に伴う特別利益を前提にしたものである。
2009/3 2010/3 2011/3 全社 セラミックス ウエーハ その他 売上高 93,717 67,859 82,867 37,832 40,949 4,085 営業損益 -3,818 -12,505 2,733 1,743 519 430 経常損益 -5,844 -14,356 -372 税引前損益 -1,131 税金 -1,762 当期損益 -15,976 -16,408 573
大株主として収益回復を急がせたいCarlyle等が事業譲渡を促したとみられている。
しかしウエハー事業の売却により、同社の売上高は半減することとなる。
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売却先の台湾のSino-American Silicon (中美矽晶)は太陽光パネル用ウェハーで急成長してきた新興勢力。
2010年の連結売上高は約600億円。
半導体も太陽光パネルもシリコン製のウエハーを加工して生産するが、ユーザーが求める純度や品質の水準は半導体用が圧倒的に高い。
技術力で後れを取る台湾企業は、大量生産体制を築く資金力が勝敗を分ける太陽光パネル用で勢力を伸ばしてきた。
SASはコバレントの持つ高純度のウエハー製造・加工技術を獲得することで、半導体ウエハー事業に本格参入する。
SASでは、台湾には世界最大級の半導体メーカーのTSMC(Taiwan Semiconductor)、半導体受託生産で世界第二位のUMC、半導体組み立て/検査大手のASEがありながら、大手のウエハーメーカーがないが、今回の買収により台湾の半導体産業の国際競争力を著しく増大させるとしている。
同社は2008年に米国のエピウェーハのメーカーのGlobitechを買収して、売上高を3倍、利益を2倍にし、シナジー効果を体験している。
今後、欧米に加え、日本にも進出するとしている。
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