台湾の石油化学4社は8月17日、シノペックと組み、福建省の古雷半島で石油精製・石油化学基地を建設すると発表した。
参加するのは、台湾聚合化学品、李長栄化学、中国石油化学工業開発、和桐化学の4社で、この計画を主導する台湾区石油化学工業同業公会の陳武雄理事長(和桐の創業者)が代表団を率いて北京市を訪問し、シノペック及び福建省政府との間で一貫生産拠点の建設に向けた枠組み協議に調印した。
台湾聚合化学品
USIカプロラクタム、アクリロニトリル、氷酢酸、ナイロンチップなど 李長栄
Lee Chang Yung ChemicalDME、アセトアルデヒド、MIBK、MEK、PPなど 中国石油化学工業開発(中石化)
China Petrochemical Development CorporationLDPE/EVA、LLDPE 和桐化学
Ho Tung ChemicalNormal paraffin, Alkyl Benzene, LAS など
4社は台商古雷石化(漳州)を設立し、福建煉油化工(シノペックと福建省政府のJV)との折半出資で事業を行う。
投資額は45億米ドルとされる。
台湾紙によると、計画内容は以下の通り。
さらに長春大連集団や国喬石油化学(グランド・パシフィック)などが参加を計画しており、全体の投資額は150億米ドルに上るとみられている。
万トン | 投資 | |
石油精製 | 1,600 | JV |
ナフサ分解 | 120 | JV |
EVA | 20 | 台湾聚合化学品 |
PE | 49.1 | 台湾聚合化学品 |
合成ゴム | 14 | 李長栄 |
PP | 63.4 | 李長栄 |
n-パラフィン | 16.6 | 和桐 |
LAB | 20 | 和桐 |
年末にも始動し、3年内に稼働にこぎ着けたいとしているが、問題は台湾政府の認可が得られるかどうかである。
投資には経済部投資審議委員会の認可が必要となるが、台湾政府は現在、「投資が認められるのは石油精製と川中~川下のみ」とし、エチレンについては認めていない。
政府は遅かれ早かれナフサ分解プラントの対中投資を解禁するとみられているが、総統選挙を控え、年内に中台絡みの大きな政策変更をするのは難しいとの見方が強い。
本計画は2009年に既に明らかになっていた。
当時は福建省泉州市泉港区の泉港石化工業区で検討しており、和桐化学、大連化学、李長栄、長春人造樹脂、國喬石油化学、台湾合成ゴムの6社が参加するとしていた。
2009/5/26 台湾の石化メーカーが中国でエチレンコンプレックスを計画
なお古雷半島には、パラキシレンの反対運動を受けて、騰龍アロマティックスが福建省厦門の海滄投資区から移転している。
この計画の背景の一つに、台湾での今後のエチレン不足問題がある。
台湾国営の中国石油は高雄に日産 270千バレルの製油所と50万トンのエチレンコンプレックスを持つが、住民からの公害問題での苦情を受け、2015年までに閉鎖することが決まっている。
このため、中国石油は、2006年1月に、同社43%出資で誘導品各社との合弁会社の國光石化科技を設立し、雲林に日産30万バレルの製油所とエチレン120万トンを建設することを決めたが、土地買収に失敗した。
その後、彰化県大城濱海区での計画を進めていたが、 環境アセスメントをめぐり、地元住民との対立が続いた。
予定地 彰化県大城濱海区 着工予定 2011/11 完工予定 2015/4 主要工場 ナフサ分解、製油所、誘導品約30プラント
馬英九総統は本年4月にこの計画を支持しない方針を正式に表明した。
建設予定地の彰化県を訪れた際に農民やカキ養殖業者が天に祈っている姿に心打たれたとし、同地は「国家湿地自然公園」として開発するよう内政部に指示した。
馬総統は、「政府は石化産業の発展を放棄したわけではない。ただ産業構造や政策の方向性を再検討する必要がある」とし、これまでの量的成長から質的成長へとかじを切る方針を示した。川中~川下産業の高品質、高付加価値化の実現を目指すとしている。
中国石油では投資規模を縮小し、彰濱工業区か台中港区で特殊化学品を生産する方向で調整しており、エチレンについては海外への移転が焦点となる。
マレーシアやインドネシアなどが候補先として挙げられているが、中国石油では一時、中東進出も検討していた。
2007/1/24 台湾の中国石油、中東進出か?
中国石油のエチレン供給量は現在年間108万トンで、2013年に林園の第3ナフサの設備更新によって150万トンへの拡大が見込まれるが、第5ナフサが停止すれば、直ちに50万トンの供給不足が生じるという。
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