米国の石油会社 Sunocoは8月16日、 オハイオ州Haverhillのフェノール工場を売却すると発表した。
これにより、同社の石油化学は消滅する。
Sunoco は2008年12月にアナリスト説明会を開催したが、その中で、能力で北米3位のPP、北米1位のフェノールを含む化学品部門の売却を考えていることを明らかにした。
同社は2004年に無水フタル酸、オキソ、エステル、2-エチルヘキサノールなどの可塑剤事業をBASFに売却している。
2008/12/19 Sunoco、化学品部門の売却を検討
Sunocoは2010年2月、PP事業をブラジルのBraskemに売却する契約を締結したと発表した。
同社のPP工場は下記3工場(合計能力は95万トン)で、米国全体のPP能力の約13%を占める。PittsburghにあるR&Dセンターも売却する。
テキサス州La Porteとウエストバージニア州Nealは2000年に三菱商事から買収した旧Aristech Chemicalの工場で、
ペンシルバニア州Marcus Hookは元Epsilon Products(Sunoco とBAR-L のJV)の工場。なお、Sunocoは2009年春にテキサス州Bayportの能力18万トンの工場を閉鎖している。これは2003年にEquistar Chemicals(その後Lyondell と合併、現在はLyondellBasell)から買収したプラント。
2010/2/3 Sunoco、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却
フェノール、アセトンについては同社はFrankford (Philadelphia, PA) とHaverhill, OHに工場を持っていた。
Frankford は1998年7月にAlliedSignalから買収した。
能力はフェノールが450千トン、アセトンが280千トン、α-メチルスチレンが 30千トン。Haverhillは2001年に三菱商事から買収したAristech Chemical の工場。
同社は2003年11月に老朽化した1系列160千トンを休止した。
現在の能力はフェノールが306千トン、アセトンが173千トン、ビスフェノールA が110千トンとなっている。
Sunocoは2011年5月、Frankford 工場をHoneywell International に85百万ドルで売却した。
Honeywell はHopewell, Virginiaに375千トンのカプロラクタム工場を持ち、これまでSunocoから原料のフェノールの供給を受けていた。
Frankford 工場の元の持ち主のAlliedSignal は1999年にHoneywellと合併しており、今回元の持ち主に戻ったことになる。
Sunocoは8月16日、Haverhill工場を、化学品商社のVinmar International などを有するコングロマリットGoradia Capital に売却する契約を締結した。売却額は106.5百万ドルで、Goradia Capitalは運営のためHaverhill Chemicalを設立した。
売却するのは、フェノールが306千トン、アセトンが173千トン、ビスフェノールA が110千トン。
この売却により、コア事業以外の事業を売却し、化学事業から離脱するという同社の戦略が完了することとなる。
Sunoco はPennsylvania州のMarcus HookとPhiladelphiaに製油所をもっている。
Philadelphia 製油所には545千トンのキュメン工場を持つが、これは維持する。
付記
Sunocoは9月6日、Refinery事業からも撤退し、Marcus HookとPhiladelphiaの製油所の売却手続きを開始したと発表した。同時に抜本的な戦略レビューを行っていることを明らかにした。
事業の収益性悪化によるもので、収益性の高いRetail とlogisticsに経営資源を集中させたいとしている。なお、同社は子会社で冶金コークス大手のSunCoke Energy をスピンオフさせた。
同社のBusiness Unit は以下の通り。
Refining & Supply 撤退検討
Retail Marketing
Chemicals 撤退完了
Logistics
Coke スピンオフ
ーーー
参考
Sunocoは2001年に三菱商事からAristech Chemical を買収した。
Aristech Chemical は化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。
1989年にHuntsmanがAristech の買収を計画した。Aristech はこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。
買収額は850百万$だが借入金の 引継ぎなどをいれると10億$以上となるといわれた。当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レ-ヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。
三菱商事は石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化し、売却した。
コメントする