ブラジル鉄鋼大手CSN、ウジミナス株買い取りを提案

| コメント(0) | トラックバック(0)

ブラジルの鉄鋼大手CSN (Companhia Siderurgica Nacional SA) は、同業のウジミナス (Usinas Siderurgicas de Minas Gerais SA) の株主2社に対し、ウジミナスの議決権株式26%分の買い取りを正式に提案した。

地元紙の報道では、CSNのCEOが、ウジミナス株主の
VotorantimとCamargo Correa Group社に総額で約29億ドルで株式の買い取りを提案したという。

CSNは1969年設立で、生産能力は年間560万トンに達し、粗鋼のみならず、鉄板、亜鉛めっき、スズの生産も行っている。
CSNは自らの鉄鉱石鉱山NAMISAを保有しており、2008年に日韓企業連合がこれに参加している。

ウジミナスは、両社と新日本製鉄グループ、ウジミナス従業員年金基金が株主間協定(下記)を締結して共同で経営しており、両社が保有株を売却する場合、新日鉄に先買権がある。

CSNは8月末に、市場で同社株を購入し、現在、ウジミナスの普通株11.29%、優先株15.1%を保有していると発表した。

本件に関して、ブラジル政府の競争監視担当の法務省経済法制局が、事実関係の報告を求めていることが明らかになった。

CSNは市場で11%強(議決権ベース)のウジミナス株を取得済みで、同局はCSNがウジミナスに対して影響力を行使できる立場にあると判断。「両社合わせた国内シェアが一部鉄鋼製品で70%に達する」と指摘し、報告と審査が必要としている。

新日鉄では、事業戦略の違いなどにより、ナミザ鉄鉱山の経営でCSNとの提携を解消しているとしており、CSNと共同で事業を行う可能性は少ない。

また、新日鉄がブラジル最大の製鉄会社Gerdau S.A.とこの提案を阻止するため協議を進めていることが分かった。

新日鉄が株式先買権を行使した場合、購入株の一部をGerdau S.Aに転売するとされている。

Gerdau S.Aは、ブラジルの鉄鋼メーカーで、南北アメリカ各地に生産拠点をもち、ブラジルのほかアルゼンチン、カナダ、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、グアテマラ、メキシコ、ペルー、アメリカ、ウルグアイ、ベネズエラ、スペインなどにも工場を持つ。
2007年の粗鋼生産量は約1860万トン。

 

付記

新日鉄は11月28日、協定株購入に関する契約および同社に関する新たな株主間協定を締結したと発表した。

1) 新日鉄が、ウジミナスの従業員年金基金から、全議決権の約1.69%相当を購入。
2) 中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium Groupが、VotorantimとCamargo Correa及び従業員年金基金から
全議決権の約27.66%相当を22億ドルで購入。
3) 新日鉄グループ(新日鉄、日本ウジミナス、三菱商事グループ)、テルニウム・グループ、従業員年金基金の間で、  新たな株主間協定を締結。

  * テルニウム・グループ
     Ternium Investments S.à r.l.社(ルクセンブルグの投資会社)、Confab 社(ブラジルの鋼管・機器製造会社)、
       Siderar 社(アルゼンチン鉄鋼会社)およびProsid 社(ウルグアイの投資会社)

付記

CSNはその後の買い増しで議決権株の16%とした。

ブラジル司法省は、ウジミナス株の16%を保有する同業のナショナル製鉄(CSN)に対して、ウジミナス株の買い増しを禁止する通達を出した。一部製品での両社のシェアは7割を超えており、寡占状態を防ぐための措置との見方が多い。

買い増し禁止は普通株に加え優先株も対象。司法省はCSNがウジミナスの取締役や監査役を任命する権利も制限した。
鋼板の販売価格など経営情報にアクセスすることも禁じた。違反には1000万レアル(約4億4000万円)の罰金が科される。
 

ーーー

ウジミナスについて

1956年4月、ブラジル政府より日本政府に一貫製鉄所建設協力の申し入れがあり、1957年6月に協定が調印された。

同年12月、日本側投資会社として日本ウジミナスが設立され、1958年1月にウジミナスが設立された。
 (当時の八幡・富士鉄が日本ウジミナスに合計 30.1%を出資、日本ウジミナスはウジミナスに40%を出資)

以来、新日鉄は製鉄所建設に尽力し、1962年10月の第一高炉火入れ以降も、継続的に一貫操業指導契約を締結し、実行してきた。

1999年6月には、新日鉄とウジミナスとの間で溶融亜鉛めっき鋼板合弁事業「UNIGAL社」を設立した。

2006年12月に新日鉄は日本ウジミナスの株式を追加取得し、出資比率50.9%で子会社化し、ウジミナスは新日鉄の持分法適用関連会社となった。

ウジミナスの現在の株主は以下の通り。

  現協定(~2016年11月) 新協定(2016年11月~) 付記
改正新協定
議決権 普通株+
 優先株
協定内 議決権 協定内 議決権 協定内
当社・日本ウジミナス社 26.14   40.93 26.1 48.6 27.83 43.57
三菱商事・メタルワン
                   (商事・双日)
1.62   2.54 1.6 3.0 1.62 2.54
日本グループ合計 27.76 13.8 43.47 27.8 51.7 29.45 46.12
Votorantim 13.0   20.3 13.0 24.2    
Camargo Correa Group 13.0   20.3 13.0 24.2    
V/Cグループ合計 25.97 12.9 40.67 26.0 48.3 0 0
ウジミナス社年金基金 10.13 5.0 15.86 - - 6.75 10.57
Ternium Group           27.66 43.31
協定株主計 63.86   100.00 53.7 100.0 63.86 100.00
Previ 10.4 5.9          
一般株主(株式市場)
 (うち CSN)
25.7
(11.29)  
50.2
 
         

 

ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができ、ブラジル証券取引所にも登録される。

協定株主は、議決権株式の過半数を確保した上で、株主総会・経営審議会(日本の取締役会)において議決権を統一的に行使することを取り決めており、協定株主間の合意は、会社の意思決定事項となる。

2006年11月に日本グループ、V/Cグループとウジミナス社年金基金が株主協定を締結した。
2011年2月に年金基金を除外して新協定を締結した。

ウジミナスはミナスジェライス州イパチンガ市とサンパウロ州クバタン市 (コジッパ社)に製鉄所を持つ。

2008年の粗鋼生産量は8百万トンで、ブラジルの鉄鋼メーカーの中ではGerdau に次ぐ第2位。

粗鋼生産量のシェアはブラジル国内では23.8%(2008年)。厚板や熱延・冷延薄板などの鋼板を製造する。

1999年にウジミナス 70%、新日鉄 30%出資で溶融亜鉛めっき鋼板製造のUNIGAL Ltdaを設立している。

2010年に高級厚板製造設備が稼働し、本年はウニガル社の第2メンキ鋼板設備、新連続熱延設備等が稼働予定となつている。

ーーー

日韓企業連合の日伯鉄鉱石(新日鐵・JFEスチール・住友金属工業・神戸製鋼所・日新製鋼、伊藤忠商事、韓国鉄鋼最大手POSCO)は2008年10月、CSNの100%子会社の鉄鉱石生産・販売会社であるNAMISA社に資本参加し、同社株式の40%を取得することで合意した。
日韓共同事業体の投資額は3,120百万ドル。

鉄鉱山はミナス・ジェライス州(鉄四角地帯)にあり、2009年の予定販売数量は1800万トン、拡張を経て2013年の販売数量を3,800万トンまで拡大する予定。

その後、2011年6月に新日鉄が日伯鉄鉱石から撤退、住友金属工業も出資比率を引き下げた。

  当初   2011/6
伊藤忠 40.00 56.12
JFEスチール 16.20 21.60
新日本製鉄 16.20 0
住友金属工業 6.57 1.25
神戸製鋼所 3.08 3.08
日新製鋼 1.75 1.75
韓国POSCO 16.20 16.20
合計 100.00 100.00
 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/1584

コメントする

月別 アーカイブ