三井化学、フェノール・チェーンを強化・拡大

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三井化学は8月29日、フェノール・チェーン事業の強化・拡大の一環として、大阪工場のプロピレン法IPA(イソプロピルアルコール)プラント(年産28千トン)を停止し、アセトン法IPAプラント(60千トン)を新設すると発表した。
2013年4月に営業運転開始の予定。

同社はフェノール・チェーンをグローバルに拡大させる競争優位5事業の1つと位置付けている。
  ・フェノール・チェーン(フェノール、BPA)
  ・PO系コンパウンド(PPコンパウンド/アドマー)
  ・エラストマー(タフマー/EPT)
  ・メタロセンポリマー(エボリュー)
  ・高屈折率メガネレンズ

IPAは塗料・インキ分野を中心に使用される基礎的な汎用溶剤で、環境負荷の少ない溶剤として、アジア各国で需要の伸張が見込まれている。

今回の原料転換によるS&Bの背景は以下の通り。

フェノールの製法
  
ベンゼンプロピレン→フェノールアセトン

  原料プロピレンは需給が逼迫。
  フェノールに副生するアセトンは需要が少なく、フェノール増産のネックとなる。

IPAの製法
  従来法
(プロピレン法):プロピレンと水を高温高圧下で水和し、
                粗イソプロピルアルコール水溶液を分離し、精製
  

  新法(アセトン法):アセトンと水を気相反応(独自開発の高活性触媒を使用)

原料転換によりフェノールの原料で需給が逼迫するプロピレンの使用を止め、フェノールの副生品で余剰のアセトンを使用することで、両面からフェノールチェーンを強化しつつ、IPAを国内及びアジア市場に安定的に供給する体制を構築する。

なお、同社はこの触媒を使用したアセトンリサイクルシステム(ARS)をJVの千葉フェノールに導入している。
フェノール副生のアセトンをIPAを経由してプロピレンとし、再度フェノールの原料として使用している。

同社は現在、千葉、大阪、シンガポールの3拠点でフェノール92万トン、アセトン54万トンを生産しているが、うちアセトン14万トンをプロピレンに再生しており、アセトン販売量は40万トンにとどめている。

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三井化学は2009年4月15日にシノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。

その一環として2010年8月にフェノールの合弁事業化で合意した。

両社はビスフェノールAの合弁の上海中石化三井化工で、BPA原料のフェノールの合弁事業を行う。
既設の
上海中石化高橋分公司のフェノールプラントも合弁会社に統合する。

1. 所在地   上海市・上海化学工業区
2. 出資比率 50:50
3. 生産能力
   フェノール  アセトン  BPA
今回新設  25万トン  15万トン  
既設(上海中石化三井化工)      12万トン
既設(上海中石化高橋分公司)  12.5万トン   7.5万トン  
合計  37.5万トン  22.5万トン  12万トン
4. 新プラントプロセス 三井化学技術
5. 営業運転開始時期 2013年第2四半期

同社の誘導品事業(ビスフェノールA、MIBK)を含めたフェノール事業は、フェノール92万トン、誘導品54万トン、合計146万トンで2位だが、中国のフェノールを加え、世界トップを目指す。

2009/11/4  三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

三井化学の中国以外のフェノールの状況は以下の通り。(単位:千トン)

三井化学(大阪)    200
    (千葉) 190
千葉フェノール  230
シンガポール  300
合計 920

2006/4/25 フェノール業界 
  

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