トヨタグループの豊田中央研究所は9月20日、太陽光エネルギーを利用し、水とCO2のみを原料にして有機物を合成する人工光合成の実証に、世界で初めて成功したと発表した。
人工光合成の実現に対する関心が高くなっているが、従来の技術では、以下のような何らかの付加的要素が必要で、水とCO2と太陽光だけで有機物を合成することは困難とされていた。
・ 犠牲薬と呼ばれる酸化剤や還元剤を添加する
H2O + CH3OH → 3H2 + CO2
H2O + 硫黄化合物→ H2 + S, SO42- 等
・ 太陽光には含まれない波長域の紫外線を利用する
太陽光にも含まれていない300nm以下の紫外線で、量子収率が50%を超える光触媒も見つかっているが、可視光では非常に難しく、長年成功していなかった。
産総研では2種類の光触媒をヨウ化ナトリウムの水溶液に混合して懸濁し、可視光を照射するシステムを構築した。
・ 外部から電気エネルギーを加える
今回開発した技術は、
①水から電子を抽出する酸化反応と、
②抽出した電子でCO2 を還元して有機物を合成する還元反応
の二つの反応を組み合わせ、それを光エネルギーで促進させる。
研究チームは、リン化インジウムの半導体にルテニウムなどを塗布した新しいコンセプトのCO2還元光触媒を開発した。
水から電子を抽出し、光を吸収する半導体で太陽光を受けて抽出した電子を活性化させ、希少金属の一種を触媒に使って、その電子とCO2から、「ギ酸」をつくる。
酸化チタン光触媒とこの触媒をプロトン交換膜を介して組み合わせることで、太陽光を利用して有機物であるギ酸を合成できることを実証した。
今回は原理の実証を行った段階で、太陽光エネルギー変換効率は現在0.04%であり、これは一般的な植物の光合成効率の1/5 程度。
研究チームは今後、植物を越える効率の実現と、メタノールなどのより付加価値の高い有機物の合成技術の実現に取組む予定。
本成果は9月7日付Journal of the American Chemical Society 電子版に掲載された。
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