クミアイ化学・三井化学・日産化学の3社は10月6日、各社がブラジルの日系農薬メーカーIharabras S.A.に出資したと発表した。
いずれも同社株主でブラジルの日系企業のAgroinvest Kayatani S.A.から買収した。
クミアイ化学 |
発行済み株式3.15%を取得。 | |
三井化学 | 11.89%を取得。 | |
日産化学工業 | 3%を取得。 | |
これにより、同社の主要株主は以下の通りとなる。 | ||
日本曹達 | 28% | |
住友商事 | 22% | |
クミアイ化学 | 22% | |
三井化学 | 11.89% |
Iharabrasは1965年にイハラ農薬と三井物産が、広大な農業市場をもち、高い成長が見込まれるブラジルに着目し、共同で設立した。当初の社名はIndusutrias Quimicas Mitsui-Ihara S.Aであった。
イハラ農薬は1949年に静岡県清水市で庵原農薬として設立された。
1962年にイハラ農薬に社名を変更、同年、東京証券取引所第二部に上場した。1968年にクミアイ化学工業に社名を変更した。
1968年に日本曹達、三菱商事、住友商事、住友化学、武田薬品、東邦化学が出資した。
1972年に三井物産が離脱、クミアイ化学が主株主となり、社名を現在のIharabras S/A に変更した。
クミアイ化学はその後のブラジル経済の悪化で経営が維持できなくなり、1984年に一部株式の保有を残し、Agroinvest Kayatani S.A,に株式の66%と経営権を譲渡した。
(買い手が見付からず、苦肉の策として日系人グループがAgroinvest Kayataniを設立して事業継続を決めたもの)
クミアイ化学は、農薬原体の供給および製剤の技術提携など、Iharabrasとの友好的な協力関係は継続してきた。
Agroinvest Kayatani は1997年に日本企業に株式を譲渡、出資比率を51.2%とし、その後も日本の企業に株を売却、今回の売却で同社から撤退する。
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Agroinvest Kayatani は クミアイ化学がギブアップしたIharabrasの事業継続のため設立した投資会社で、主な出資者は日系人一世、ニ世で何らかの形で農業に関ってきた人々で構成されている。
Kayataniの参加により、成長への基盤ができると同時に、従来にも増して農業生産の現場に入り込み、生産者の声を自社製品の販売・製造にできる限り反映させていった。
1986年にはIharabrasがバイア州の野菜農場(Bagisa)に出資、生産者の立場から自社製品の品質向上を図った。
1993年にIharabrasの社長となったクニカズ・ニノミヤ氏は、積極的に近代的経営手法を取り入れた。
同氏は1994年に稲盛和夫氏(京セラ、KDDI創立者)の盛和塾に出会い、稲盛氏の「充分な利益を出さない会社は『ぼろ会社』」との言葉に感銘したという。「生きるか死ぬかの瀬戸際にあった当時、最も重要だったのは、発想の転換でした」。
売り上げ、利益、経費に関する明確で厳しい目標を設定すると同時に、従業員教育に力を入れた。
農業関係では収穫が天候に左右されるため債権回収が課題となるが、財務部門の権限と関与を強化し、客先との取引開始から債権回収まで深く関与する体制を確立、これにより、債権回収率は飛躍的に改善された。
2004年の売上高は1億2千万ドルに達し、利益率は17%となった。
同氏は2006年に日本での盛和塾全国大会体験発表会で最優秀賞を受賞した。
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クミアイ化学は海外において有望な複数の農薬原体の登録・上市を見込んでおり、グローバル展開の更なる強化・拡大のため、また、世界の人口増加等に対応して世界規模での食糧増産に寄与することが見込まれるブラジル市場における事業強化の一環として、Iharabrasの株式を追加取得した。
同社との関係をさらに深め、同地域でのクミアイ化学の薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発・上市を促進し、事業の更なる拡大を図る。
三井化学は、2011 年度中期経営計画において、農業化学品事業を景気変動による影響を受け難い「重点5 事業」の一つとして位置付け、早期拡大を図っている。
今回の株式取得により、三井化学グループはIharabrasとの関係を強化し、同地域での事業ノウハウ・情報の取得、同社薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発促進につなげ、農業化学品事業の更なる強化・拡大を図る。
日産化学も農薬事業をコア事業の一つと位置づけ、自社開発品の創出に向けて研究開発に注力し、一方で、他社剤の買収を積極的に推進し、既存の自社開発品を含め、アジア、欧州、北米を中心に販売体制の拡充を図っている。
Iharabrasとの関係強化により、中南米市場の開拓を本格的に進めることで、さらなる事業拡大を目指す。
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