最近の米国の住宅着工状況

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米商務省は、10月19日、9月の住宅着工件数を発表した。

それによると、季節調整済みの年率換算で658千戸で、前月比で15%の増、前年同月比で10%の増と、久しぶりに高水準となった。

2011年1~9月の平均では、年率換算で589.9千戸となる。

米国の住宅着工はバブル最盛期の2005年の2,068千戸(月別では2006年1月の年率2,273千戸)を頂点に続落した。
2009年以降は500千戸台で横ばいで推移している。

2006年 1,802千戸
2007年 1,355
2008年   905.5
2009年   554.0
2010年   586.9
2011年  589.9  (1~9月)

 

バブル期の住宅需要の増加は2つの要因に支えられていた。

一つは住宅価格の高騰で、もう一つはこれを前提にしたサブプライムローンである。

Alan Greenspan FRB議長はITバブル崩壊による企業の投資削減に対応するため短期金利を一気に下げた。
この結果、住宅需要が増えてきたが、企業の資金需要が出れば金利が上がり、住宅需要も抑えられると考え、放置した。

2004年に企業のバランスシートがきれいになり、企業の投資が始まると考え、ようやく金利を上げた。

しかし、他方で中国など新興国や年金ファンドがどんどん米国債を購入し、国債価格がアップ(長期利回りが低下)していたため、短期金利を急速に上げても、長期金利に対応する住宅需要はむしろ増大し、住宅価格も急騰した。

全米住宅価格指数は1990年代半ば以降年平均2~8%の上昇が続いてきたが、2004年4~6月期以降は前年比+10%超に達した。

住宅価格の高騰により、担保価値が上がり、より高価な住宅への買い替え需要が増え、富裕層は転売目的に住宅を購入した。

他方、住宅価格の高騰で、NinjaNo Income, No Job, No Asset)ローンと呼ばれるサブプライムローンが急増した。
ローン返済が出来なくても、住宅価格は上昇を続けるため、取り上げた担保を売却すればよいという前提で、本来住宅購入が出来ない階層に住宅を売りつけた。

2006年1月には住宅着工件数は年率で2,273千戸にもなった。完全な住宅バブルであった。

これが破綻し、多額の不良債権を持つ金融機関が破綻、Lehmanショックに至った。

米国の住宅ローンは日本と異なりnon recourse型で、担保物件を売却しても借金が残っても、債務者は残りの債務を負担しない。
サププライムローンは債券化され、世界中にばら撒かれたため、問題が世界中に広がった。

ーーー

ギリシャ危機が起こるまでは、米国経済はLehman危機から立ち直ったかに見えた。

しかし、住宅着工件数は低い水準で低迷したままである。

住宅価格は依然として低迷したままである。

2011年6月の米国の家計の住宅資産評価額はピーク時比で6兆6000億ドル減って、16兆1000億ドルとなった。
この間、住宅融資残高はほぼ横ばいで、9兆9000億ドル。

従って、ネット資産は12.8兆ドルから6.2兆ドルへと、半分以下となっている。
住宅価値が借入額を下回るケースも多い。

このほかに、商業用不動産(非金融部門)もピークから2兆8500億円減っている。

(2011/10/9 日本経済新聞)

買い替え需要や転売目的の購入はなくなり、住宅を必要とするが資金を持たない階層は、これまでのようなサブプライムローンの利用は出来ない。

住宅在庫は9か月分とされるが、このほかに、銀行が差し押さえ、売却処分をしていない隠れ在庫が600万戸もあるとされる。

このような状況下では、近い将来に住宅着工が増える可能性は少ない。

PVCや板ガラスなど、住宅需要に依存する業界の復旧にも時間がかかると思われる。

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