東京電力は11月4日、中間決算を発表した。
今回初めて、損害賠償額が計上されたが、年度合計では支援機構からの支援で全額が相殺される。
(単位:百万円、配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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経常損益では前期比で約3100億円の減益となったが、主な内訳は以下の通り。
電気料収入減 ...... -2,200億円 燃料費増 -2,100億円 購入電力増ほか -400億円 固定費減 1,500億円 その他収入増 100億円 合計 -3,100億円
特別損益は-5,078億円となった。
・災害損失 -1,850億円 (前年度 -10,205億円、累計 -12,055億円) ・損害賠償 -8,909億円 (見込み額 10,100億円 マイナス 賠償補償* 1,200億円) ・支援機構より 5,436億円 (差し引き) (-3,473億円) この額について支援機構が11月4日に資金交付決定、下期に特別利益
(下記参照)・有価証券売却益 245億円 差引合計 - 5,078億円 * 通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(発電用原子炉の場合は通常1200億円)まで保険金が支払われる。
地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われる。
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枝野経済産業相は11月4日、東京電力の合理化策を盛り込んだ緊急特別事業計画を認定した。
これで事故の賠償費用として、東電が原子力損害賠償支援機構から8909億円の資金支援を受けることが決まった。
東電は社員やOBの年金削減などで10年間に2.5兆円を超える経費を削減、発電施設を含む資産売却を進める。
来春をメドに、より抜本的な「総合特別事業計画」に改定する。
電気料金値上げの是非、廃炉への対応、東電の資本増強といった懸案は総合計画に盛り込む。
要旨は以下の通り。
【原子力損害の賠償】
東電は要賠償額の見通しを1兆1010億円とし、保険収入を控除した残り 8,909億円の資金援助を申請した。
損害状況把握の進展など状況が変化した場合は、要賠償額見通しを変更申請する。
【東電の事業運営に関する計画】
(1)事業および収支の中期的な計画
東電は「改革推進チーム」を編成。機構は東電社内の常駐スペースに職員を派遣する。
機構・東電のトップが参加する「経営改革委員会」を設置する。
(2)経営合理化
東電と機構は11月中に「アクションプラン」を策定し、直ちに具体的施策を実行する。
資材・サービス、燃料などの調達コストや人件費を全面的に見直し、11年度は2374億円のコスト削減を実行。
人員数は13年度末までに連結で11年度期初比約7400人、単体で同約3600人減らす。
社員の年収一律減額措置は、管理職25%、一般職20%を当面の間継続。
確定給付企業年金は現役1.5%、受給権者(OB)2.25%以下に再評価率の下限を引き下げる。
終身年金も30%削減に向けて取り組み、12年度中の新制度実施を目指す。
原則3年以内に不動産は2472億円相当、有価証券は3301億円相当、関係会社は1301億円相当を売却。
関係会社328億円相当は11年度に売却を目指す。
(3)賠償資金確保のための協力要請
総合特別事業計画認定までの間、全取引金融機関に対して本計画認定時の与信を保つことを要請。
日本政策投資銀行に賠償金支払いのため3000億円の短期融資枠設定を要請。
主要取引行には震災後の緊急融資1兆9650億円の資金使途追加を要請。
(4)円滑な事業運営
電力供給力不足に対応するため、11年度は緊急電源設置などで7199億円の設備投資を実施。
(5)経営責任明確化
役員報酬の減額措置を継続。
総合特別事業計画では、役員退任や退職慰労金放棄などさらなる経営責任明確化のための方策について結論を得る。
【資金援助の内容】
(1)東電に対する資金援助の内容および額
機構は8909億を、損害賠償の履行に充てる資金として今年度交付。
(2)国債の交付希望額
11年度第3次補正予算が成立した場合、合計5兆円の国債交付を希望。
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