野田首相は11月13日、APEC首脳会議でTPP交渉への参加を表明した。カナダやメキシコも参加の意向を示した。
TPP(Trans-Pacific Partnership)はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国(通称 P4)が域外への経済的影響力を向上させることを戦略的な目的として締結し、2006年5月に発効した。
他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定しているが、実際は下記のとおり順次撤廃する。
ブルネイ チリ ニュージーランド シンガポール 発効時 92% 発効時 89.39% 発効時 96.5% 発効時 100% 2010年 残り1.7% 2009年 残り0.94% 2008年 残り0.03% 2012年 残り1.1% 2011年 残り0.29% 2010年 残り1.54% 2015年 残り5.2% 2015年 残り0.12% 2015年 残り1.92% 2017年 残り9.26%
4か国に加え、米、豪、マレーシア、ベトナム、ペルーの合計9か国が交渉を行っており、既に市場の相互開放に向けた大枠を確認した。
今回の参加表明に当たり、野田首相は「TPPはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の基礎となる」と強調した。
FTAAPはアジア太平洋経済協力(APEC)の加盟国全域(21カ国:下図の赤字表示)において、自由貿易圏を構築する構想の名称。
2010年のAPECの首脳宣言「横浜ビジョン」では、下記のように記載されている。
「我々は、APECの地域経済統合の課題を進展させるための主要な手段であるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けて具体的な手段をとる。
FTAAPは,中でもASEAN+3、ASEAN+6及び環太平洋パートナーシップ(TPP)協定といった、現在進行している地域的な取組を基礎として更に発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきである。」
関係各国の立場は以下の通り。
TPP交渉参加国
ASEAN 10か国 |
中国は米国に対抗するため、ASEANを核とする自由貿易圏の構築で巻き返しを図る。
中国はASEAN+3のFTA締結を主張しているが、日本は中国を警戒、ASEAN+6を主張している。
ASEAN+6のFTA締結状況は以下の通り。
ASEAN 日本 中国 韓国 インド 豪州 NZ ASEAN ーーー ○ ○ ○ ○ ○ ○ 日本 ○ ーーー ○ 中国 ○ ーーー ○ 韓国 ○ ーーー ○ インド ○ ○ ○ ーーー 豪州 ○ ーーー NZ ○ ○ ーーー
* 韓国は米国(及びEU、EFTA)とFTAを締結している。
TPP協定交渉では、21分野が交渉対象となる。
(1)物品市場アクセス |
(作業部会としては、農業、繊維・衣料品、工業) 参考 2010/11/10 TPP参加と農業問題 | |
(2)原産地規則 | 関税の減免の対象となる「締約国の原産品(=締約国で生産された産品)」として認められる基準や証明制度等について定める。 | |
(3)貿易円滑化 | 貿易規則の透明性の向上や貿易手続きの簡素化等について定める。 | |
(4)SPS(衛生植物検疫) Sanitary and Phytosanitary Measures |
食品の安全を確保したり、動物や植物が病気にかからないようにするための措置の実施に関するルールについて定める。
参考 WTO/SPS協定 | |
(5)TBT(貿易の技術的障害) Technical Barriers to Trade |
安全や環境保全等の目的から製品の特質やその生産工程等について「規格」が定められることがあるところ、これが貿易の不必要な障害とならないように、ルールを定める。 | |
(6)貿易救済(セーフガード等) | ある産品の輸入が急増し、国内産業に被害が生じたり、そのおそれがある場合、国内産業保護のた めに当該産品に対して、一時的にとることのできる緊急措置(セーフガード措置)について定める。 | |
(7)政府調達 | 中央政府や地方政府等による物品・サービスの調達に関して、内国民待遇の原則や入札の手続等のルールについて定める。 | |
(8)知的財産 | 知的財産の十分で効果的な保護、模倣品や海賊版に対する取締り等について定める。 | |
(9)競争政策 | 貿易・投資の自由化で得られる利益が、カルテル等により害されるのを防ぐため、競争法・政策の強化・改善、政府間の協力等について定める。 | |
サービス | (10)越境サービス | 国境を越えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量規制等の貿易制限的な措置に関するルールを定めるとともに、市場アクセスを改善する。 |
(11)商用関係者の移動 | 貿易・投資等のビジネスに従事する自然人の入国及び一時的な滞在の要件や手続等に関するルールを定める。 | |
(12)金融サービス | 金融分野の国境を越えるサービスの提供について、金融サービス分野に特有の定義やルールを定める。 | |
(13)電気通信サービス | 電気通信サービスの分野について、通信インフラを有する主要なサービス提供者の義務等に関するルールを定める。 | |
(14)電子商取引 | 電子商取引のための環境・ルールを整備する上で必要となる原則等について定める | |
(15)投資 | 内外投資家の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続等について定める。 | |
(16)環境 | 貿易や投資の促進のために環境基準を緩和しないこと等を定める。 | |
(17)労働 | 貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める。 | |
(18)制度的事項 | 協定の運用等について当事国間で協議等を行う「合同委員会」の設置やその権限等について定める。 | |
(19)紛争解決 | 協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続きについて定める。 | |
(20)協力 | 協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うこと等について定める。 | |
(21)分野横断的事項 | 複数の分野にまたがる規制や規則が、通商上の障害にならないよう、規定を設ける。 |
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