第一三共子会社 Ranbaxy、米国で「リピトール」の後発品を発売

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第一三共は12月1日、連結子会社のインドのRanbaxy Laboratoriesが高コレステロール血症治療剤アトルバスタチン(Atorvastatin )を米国にて発売したと発表した。

11月30日にPfizerのアトルバスタチン(商品名Lipitor)の特許が切れた。Ranbaxyは同日付で、略式新薬承認申請に対する販売承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得した。また、同社は発売から180日間の独占販売期間を得た。

Ranbaxyは、今回の米国での発売に際し、Teva Pharmaceutical USAとのコラボレーションに関して合意、Tevaに対して、発売から180日間の独占販売期間の売上高に応じた一定の支払いを行なう。

Ranbaxyは2003年以降、長期間にわたり、Pfizerとの間でLipitor の特許について争っていた。

2008年6月、両社はこれに関して和解を行った。
これは両社間だけのもので、Pfizerと他社との間の特許抗争には無関係としている。

対象となる特許は以下の通り。
 基本物質特許 (米国で2010年に失効)
 光学異性体特許(同 2011年)
 プロセス、結晶型特許(同 2016、2017年)
 多剤混合薬特許(同 2018年)

和解により、Ranbaxyは2011年11月30日にLipitorの後発薬を発売する。
RanbaxyはLipitor特許にチャレンジした最初の後発薬メーカーであるため、発売に当たり180日の独占期間の権利を得ることとなる。

Ranbaxyはまた、時期は異なるが、これをカナダ、ベルギー、オランダ、ドイツ、スウェーデン、イタリア、豪州で販売する権利を得る。両社の間の各国での特許紛争は終結する。

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アトルバスタチン(商品名Lipitor)は高コレステロール血症治療剤で、Pfizerより創製され、日本ではライセンス契約によって2000年5月からアステラス製薬(契約当時は山之内製薬)が製造・販売している。

セジデム・ストラテジックデータ㈱の調査では2010年の世界の大型医薬品売上高のNo.1で、売上高は12,023百万ドルとなっている。米国では9月までの9か月で7,890百万ドルを売っている。

アトルバスタチンは2008年に米ラスカー賞を得た遠藤章・東京農工大名誉教授が発見したスタチンの一種で、スタチンはHMG-CoA還元酵素の働きを阻害することによって、血液中のコレステロール値を低下させる。

遠藤氏は三共(現第一三共)の研究者だった1973年、コメの青カビがつくるスタチンを発見。これが血液中のコレステロール値を下げることを動物実験で確認した。

2008/9/16 米ラスカー賞に遠藤章・東京農工大名誉教授

略式新薬承認申請(ANDA=abbreviated new drug application)は米国でのジェネリック医薬品の承認手続きで、その参照とする先発医薬品との化学構造および生物学的同等性を示すデータなどの提出だけで製造・供給を承認する。

ANDAを申請する場合、後発版の製造・使用・販売により先発医薬品の特許が侵害されないとの証明書(下記の4つのケース)をFDAに提出すれば、特許権者である先発企業に通知され、証明書を提出した最初の後発企業に180日のジェネリック薬先発(独占)期間が与えられる。(先行者利益を与えることにより、訴訟費用を負う誘因を与えるのが趣旨)

1. 新薬に関する特許情報がFDAに提出されていない(パラグラフI)、
2. 新薬の特許はすでに有効期限が切れている(パラグラフII)、
3. 今後特定の日付に新薬の特許の有効期限が切れる(パラグラフIII)、
4.  新薬の特許が、無効、法的強制力がない、
  または後発薬の製造、使用、もしくは販売によって侵害されることはない(パラグラフIV)

Ranbaxyは長期間にわたり、Pfizerとの間でLipitor の特許について争い、2008年6月に和解を行ったため、Lipitor特許にチャレンジした最初の後発薬メーカーとして180日の独占期間を獲得した。

今回、RanbaxyはTeva Pharmaceutical とのコラボレーションを行うが、その背景は以下の通り。

米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、Ranbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。
これを解除するには数百億円の罰金を払う必要があるとの見方がある。

医薬品の安全性に問題はないが、Ranbaxyのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxyは当初、後発品の原体をインドでの生産を検討していたが、現状では米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託する。製剤は米国子会社のOhm Laboratories, Inc. で行う。

これにより、RanbaxyはPfizerの特許切れの翌日から直ちに販売することが可能となった。
Teva はこの代償として、
Ranbaxyの利益の一部を受け取る。

また、RanbaxyはTevaの米国の強力な流通チャネルを利用して拡販するメリットもある。

Tevaは12月1日、FDAからアトルバスタチンの略式新薬承認を得たと発表した。2012年5月にRanbaxyの180日の独占権が終了した時点で販売する。

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Pfizerはこの動きに対応し、対応策を取っている。

11月初めには、今後出てくる後発品に対応するため、値下げを行った。
Pfizerは、RanbaxyのFDAとのトラブルを材料にして、値下げの代わりに医療保険会社に対して後発品を使用させないようにしようとした。
(しかし最大の医療保険会社のWellPointは後発薬の使用をサポートすることを発表し、Pfizerの試みは失敗した。また3人の上院議員がPfizerのこの動きを問題視している。)

また、PfizerはWatson PharmaceuticalsにPfizer製の低コスト版の「公式後発薬」を供給した。これはPfizer製のため、FDAの承認は必要としない。
Wal-Mart はWatsonの後発薬を扱うと発表した。

この結果、Ranbaxyの後発薬の販売価格は当初想定より40%は低くなると見られており、米国での製造コストがインドで製造するより高いこともあり、Tevaへの支払いも含め、同社の利益は当初想定よりかなり少なくなる。

Tevaが承認を得たのに続いて、MylanやインドのDr. Reddy's Laboratories などもRanbaxyの6か月独占が過ぎた後の販売を狙い、FDAの承認を求めている。

 

 

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