従来は、放射性物質を吸着するゼオライトを入れた鉄製の容器に汚染水を通し、放射性物質濃度を数万分の1~数十万分の1に低減していたが、新しい部品は吸着性能が高い「フェロシアン化合物」を添加したものとする。
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ところが、11月30日の朝日新聞の報道によると、Arevaの除染装置は9月以降、使われていないという。
この結果、Kurionのセシウム吸着設備単体では性能が低下したため、部品を取り換えることとしたもの。
フェロシアン化合物を添加したものを使うことで、Kurionの装置単体でも安定的に数十万分の1程度まで除去できる ほか、従来部品より使用期間が長いため、交換頻度が減り、放射性廃棄物も抑制できるという。
Arevaの高速凝集沈殿装置では汚染水に薬剤を注入し、放射性物質を凝集沈殿させ、上澄みを次工程に回す。
沈殿した超高濃度の放射性廃液(スラッジ)は現在、建屋の貯留槽内に仮置きしている。
スラッジの表面の放射線量は毎時1シーベルトを超えるとみられ、これの処理方法が決まっていない。
仮置き量が増大したため、休止を決断したという。
KurionやSarryの場合は、凝集沈殿ではなく、ゼオライトなどの固形物に放射性物質を吸着させ、上澄みを次工程に回す。
廃棄物は貯めて容器ごと捨てる仕組みで、容器の線量は毎時4ミリシーベルト程度でスラッジより扱いやすいが、廃棄物の総量は膨大になる。
これの最終処分も決まっていない。
Arevaでは、毎回容器を交換するなど手間のかかるSarryに比べて、スラッジは扱いがシンプルであるとし、経駿を重ね、廃液の処理法を知っていると主張している。東電に協力を提案したが、受け入れられていないという。
(東電では「廃炉に向けた中長期的な計画の中で取り組んでいきたい」と話すにとどめている。)
これまでのトラブルについては、緊急に対応する必要があり、十分に準備できなかったため(Sarryは準備に2か月ほど多くかけた)としている。
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東京電力は12月4日、淡水化装置(蒸発濃縮装置)周辺の堰内に水が溜まっていることを確認したと発表した。堰内に溜まっている漏えい水は約45立方メートルと推定している。
蒸発濃縮装置のVVCC蒸発器上流に設置されている廃液予熱器(熱交換器)出口側のRO濃縮水(蒸発濃縮装置の処理原水)配管との接続フランジ部から漏えい跡が確認されたため、当該箇所からの漏えいの可能性が高いと推定している。
その後の調査で、コンクリート製の堰にひび割れがあり、そこから堰外の側溝に漏えいした水、約300リットルが漏れ出ていることを確認した。
4日時点の放射性セシウムは1リットル当たり18ベクレルで、海洋への放出限度以下だったが、ストロンチウムについては除去されておらず、海に流出した放射能の量は260億ベクレルと推定されている。
東京電力は、「放射性物質は海で薄まるため、排水路近くの海にいる魚を毎日食べても、1年間の被ばく量は3.7マイクロシーベルトで、人の健康や環境への影響はほとんどないと考えている」としている。
逆浸透膜型淡水化装置は継続運転しており、淡水化処理した水は十分にあることから、「原子炉注水への影響はない」としている。
淡水化システムは当初、放射性物質を吸着、沈殿させた後に「逆浸透膜」の装置に通して作られた真水を原子炉の冷却に再利用していたが、汚染水を4割しか再利用できていなかった。
東電は8月から蒸発濃縮装置を導入した。
この蒸発濃縮装置は逆浸透膜を通した後に出る濃い塩分の廃液からさらに真水を取り出すことができ、2段階で淡水化すれば、再利用率が8割まで上がる。
(Sarry導入による2系列化で処理量は上記から倍増している)
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東電は12月5日、福島第1原発で貯蔵している低濃度汚染水を来年3月にも海洋に放出する計画をまとめ、全国漁業協同組合連合会に説明した。
全漁連の服部会長は、漁業に深刻な影響が出かねないとして、東京電力に抗議、海に放出しないよう伝えた。
放出するのは建屋地下などに流入した汚染水から放射性物質を分離処理後の水で、原子炉への注水などに利用しているが、注水に必要な量以上の処理水が発生しており、来年3月にも貯蔵しきれなくなるおそれがあるという。
9万6000トン余りが放出の対象で、放射性ストロンチウムなども処理し、法令で定める周辺海域での基準値以下まで下げるとしている。
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