ソウル大学生命科学部の白盛喜(Sung Hee Baek)教授をはじめ浦項工科大学、淑明女子大学で構成される共同研究チームは12月12日、癌細胞を殺す働きのタンパク質を発見したことを明らかにした。生命科学専門誌「Molecular Cell (2011/12/9)に掲載された。
P53タンパク質は損傷を受けた細胞の自然死(アポトーシス)によって癌の進行を食い止めるが、癌患者の5割以上は、このP53タンパク質に突然変異が生じたり、その働きに異常があったりする。
今回、癌によって正常なDNAが損傷を受けると体内ではDNA損傷信号が作られ、「RORα」というタンパク質の活性化が行われ、このタンパク質がP53タンパク質を安定化させて、究極には癌発生を抑える働きをすること明らかにした。
白教授は「今回の研究はRORαタンパク質が、P53癌抑制遺伝子の細胞死滅機能を直接コントロールし、癌抑制に中心的な役割を果たすことを初めて究明したところに意味がある。」とし、「P53を利用した癌治療剤の開発可能性を高めた」と語った。
RORαタンパク質は小脳発達に重要な発現物質であり、白教授と淑明女子大学生命科学部の金教授の研究チームチームが2010年2月、このタンパク質に大腸癌を抑制する働きがあることを初めて明らかにした。
プロテインキナーゼ酵素の活性化
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RORαのアミノ酸・セリンのリン酸化を促進
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タンパク質のベータカテニンと結合、ベータカテインの機能を抑制
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大腸がんの抑制同チームが大腸がん患者から確保した30組の大腸の正常な組織とがん組織で調べたところ、大腸がん組織でRORαのリン酸化が70%以上減少 していることが分かった。研究チームはRORαのリン酸化有無を大腸がんの主要診断基準として用いることができるとしている。
今回の研究は、大腸癌だけでなく他の癌の抑制課程にもこの物質が関わっていることを初めて明かしたことになる。
白教授(女性)は2000年から3年間、米カルフォルニア州立大学で研究教授を務め、2003年ソウル大教授に採用された。
白教授のチームは2006年、がん転移過程とかかわる「SUMO」タンパク質の機能を世界で初めて究明した.
レプチンは癌転移を促すタンパク質として知られているが、どんな過程を通じてそうなるかが不明であった。
チームは次の点を明らかにした。
SUMOタンパク質がレプチンと結合すると、がん転移を阻む遺伝子(KAL1)が働かなくなる。
レプチンからSUMOが落ちると、KAL1が活性化し、癌拡散を阻止する。レプチンとSUMOの分離にSENP1が酵素の役割を果たす。
白教授は、「正常の細胞に影響を与えずにがん細胞のみを選んで攻撃する新しい概念の抗がん剤の開発に応用できるだろう」と述べた。
白教授は、世界初の癌転移抑制遺伝子と調節のメカニズムを解明し、抗がん治療の新たな転機を作ったことが功績として認められ、2011年9月に「韓国ロレアルーユネスコ女性生命科学賞」振興賞を授与された。
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