公取委は12月14日、新日本製鉄と住友金属工業の合併計画に関し、問題とした2点について両社の問題解消措置を前提とすれば、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認め、審査を終了した。
公取委は本年5月31日に本計画の届出を受理して第1次審査を開始し、6月30日に第2次審査を開始した。
両社から12月9日に問題解消措置に関する変更報告書の提出を受けた。
なお、公取委は6月14日に企業合併の新たな審査指針(ガイドライン)を公表した。
審査の目安となるシェアについて、国内だけでなく世界的な競争状況を勘案する。
また、市場規模が縮小している場合は合併を認めやすくすることも明記した。2011/6/21 公取委、企業合併の審査指針を公表
公取委は本件について、このガイドラインの公表前の5月31日に審査を開始しているが、改正後の基準を前倒しで適用した。
また、7月施行の「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」改正では、「公正取引委員会との協議制度」が創設され、「主務大臣が計画を認定をしようとするに際して、当該計画に従って行おうとする措置が、事業者の営む事業の属する事業分野における適正な競争が確保されないおそれがある場合として政令で定める場合に該当するときは、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとすること」となった。
新日本製鉄と住友金属工業は7月に改正産活法の適用を経産省に申請した。
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公取委の審査では、①無方向性電磁鋼板、②高圧ガス導管エンジニアリング業務、③鋼矢板、④スパイラル溶接鋼管、⑤熱延鋼板、⑥H形鋼の6品目が取り上げられた。
いずれも合算シェアは第一位で、水平型企業結合のセーフハーバー基準に該当しない。
(競争を実質的に制限することとならない範囲:セーフハーバーの指標はHHIが2,500超の場合はHHIの増分150以下)
公取委は①、②のみを問題とし、他については「競争を実質的に制限することとはならない」とした。
①、②については、両社の問題解消措置を認めた。
以前の評価と比べると、非常にフレキシブルになっている。
①無方向性電磁鋼板
平成22年度シェア
順位 会社名 シェア 1 新日鉄 約40% 2 A社 約40% 3 住友金属 約15% 輸入 約 5% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 4,600
HHI増分 約 1,100約55%
評価:競争を実質的に制限
・有力な競争事業者が存在するが、十分な供給余力を有しない。
・高グレードの製品については、輸入圧力は認められない。
・低グレードの製品については、一定程度輸入があるが、十分な品質でなく、安定調達の面で不安。
・調達先メーカーの変更は容易でなく、需要者からの競争圧力も認められない。
問題解消措置:
① 合併後5年間、現在住友金属が販売する全グレードを住友商事にフルコストベースで販売。
② 住友商事に対し、住友金属の国内ユーザー向けの商権を譲渡。
③ 合併後5年間、1事業年度に1回、前記措置の実施状況を公取委に報告。
②高圧ガス導管エンジニアリング業務
平成18年度~22年度シェア
順位 会社名 シェア 1 B社 約35% 2 日鉄パイプライン 約30% 3 住友金属パイプエンジ 約30% その他 0-5% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 4,900
HHI増分 約 1,800約60%
評価:競争を実質的に制限
・入札に参加する事業者は基本的に高炉系エンジ会社のみで、入札参加事業者は3社から2社になる。
・参入圧力が働いていない。
・需要者からの一定程度の競争圧力はあるが、ガス会社等は競争性を高めるための施策を十分に持たない。
問題解消措置:
(1) UO鋼管の安定供給
① 新規参入者から要請があれば、子会社に供給する場合と実質的に同等・合理的条件でUO鋼管を提供。
② 上記措置について合併の日までに周知。5年間、実施状況を公取委に報告。
(2) 自動溶接機の供給及びその取扱いに係る技術指導
① 新規参入者から要請があれば、合理的な条件で自動溶接機の新品を譲渡し、or 中古品を譲渡・貸与。
② 新規参入者から要請があれば、自動溶接機を取り扱うに必要な技術指導を行う。
③ 5年間、実施状況を公取委に報告。
③鋼矢板
平成22年度シェア
順位 会社名 シェア 1 新日鉄 約40% 2 C社 約30% 3 住友金属 約25% 4 D社 0-5% 輸入 0-5% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 5,100
HHI増分 約 1,900約65%
評価:競争を実質的に制限しない。
・有力な競争事業者が存在し、十分な供給余力を有する。
・参入圧力や隣接市場である代替工法からの一定程度の競争圧力が働いている。
鋼矢板の価格が5~10%上昇した場合、代替的な工法に切り替わる可能性
・需要が縮小していく中で需要者からの競争圧力が働いている。(新ガイドライン)
④スパイラル溶接鋼管
平成22年度シェア
順位 会社名 シェア 1 新日鉄 約40% 2 E社 約30% 3 住友金属 約15% 4 F社 約15% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 4,000
HHI増分 約 1,300約55%
評価:競争を実質的に制限しない。
・有力な競争事業者が複数存在し、供給余力を有する。
・隣接市場からの競争圧力が一定程度働いている。
⑤熱延鋼板
平成22年度シェア
順位 会社名 シェア 1 新日鉄 約30% 2 G社 約20% 3 H社 約10% 4 住友金属 約10% 5 I社 約5% 6 J社 約5% 7 K社 0-5% 8 L社 0-5% 9 M社 0-5% 10 N社 0-5% 輸入 約15% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 2,200
HHI増分 約 500約40%
評価:競争を実質的に制限しない。
・有力な競争事業者が複数存在し、供給余力を有する。
・輸入圧力や需要者からの競争圧力が十分に働いている。
関税は無税、韓国や中国からの輸入品は国内品に比べ安価、流通上の問題も存在しない。◎国内市場には、新日鉄が10%超・単独第1位の議決権を持つ中山製鋼所、日新製鋼、大同特殊鋼がいる。
これらは実態から結合関係があるとは認めらなかった。(シェア計算に含めない)
⑥H形鋼
平成22年度
順位 会社名 シェア 1 新日鉄
(含 トピー工業、合同製鉄)約30% 2 O社 約20% 3 P社 約20% 4 Q社 約15% 5 住友金属
(含 住金スチール)約15% 輸入 0-5% 合計 100% 1 合併後
HHI 約 2,800
HHI増分 約 1,100約40%
合算シェアは45%となるが、公取委は約40%としている。 トピー工業、合同製鉄のシェアを外したか?
評価:競争を実質的に制限しない。
・有力な競争事業者が複数存在し、これらの事業者は十分な供給余力を有している。
・新日鉄とO社は活発な競争をしており、合併後もその構図に変化はないと考えられる。
・合併後も、合併会社とトピー工業・合同製鉄との間には一定程度の競争関係が維持されると考えられる。
・輸入圧力、隣接市場からの競争圧力が一定程度働いている。
・需要者からの競争圧力が一定程度働いている。
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