ロシア、カザフスタン、ベラルーシの首脳は11月18日、ユーラシア経済同盟に関する文書に調印した。
ユーラシア経済同盟は、来年3月のロシア大統領選に立候補を表明し大統領職復帰が確実視されているプーチン首相が先月に創設を提唱、まず3カ国で経済統合を進め、旧ソ連中心の地域統合「ユーラシア同盟」につなげようとのプーチンの長期的外交戦略実現の第一歩になる。
最終的には統一経済圏の創設へと移行する。
ユーラシア経済同盟は、加盟を希望する国々へ扉を開く。有力な加盟候補として、タジキスタンとキルギスが挙がっている。
2012年1月1日から3国の圏内では、統一経済圏を形成する17の合意が発効するが、それとともに関税タリフ政策、関税調整がスタートする。共通の国境を形成するなかで、具体的なタリフ政策、自然独占、通貨および信用貨幣政策の調整が新たな方向性となってくる。
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1991年12月8日、ソビエト社会主義共和国連邦の消滅と独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)の創立が宣言され、1993年にはソ連邦を構成していた15か国のうち、バルト三国を除く12か国が加盟した。
その後、トルクメニスタン、ウクライナ、モルドバが事実上の準加盟国(あるいは加盟国としての任務の拒否)になり、2008年8月の南オセチア紛争(ロシア-グルジア戦争)により2009年8月にグルジアが脱退したため、現在の正式加盟国は8か国である。
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)はCIS設立前に独立したため加盟せず、2004年5月1日にEUに加盟した。(NATOにも参加)
加盟国は必ずしも利害が一致せず、調印された数百の協定も強制力がないために有名無実となっている。
2000年11月、ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニアはロシアとの緊密な関係を保ち、「関税同盟」を基礎にしてユーラシア経済共同体を結成した。
これに対して、グルジア、ウズベキスタン、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバはロシアから距離を置く政策を取り、これら諸国の頭文字を取ってGUUAMと称される組織を形成した。その後、ウズベキスタンが離脱、GUAMとなった。
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ロシアのプーチン首相は10月3日、旧ソ連のベラルーシとカザフスタンの3カ国で結成した関税同盟をベースに、将来的には超国家連合「ユーラシア連合」(ユーラシア・ユニオン)にまで拡大・発展させる構想を明らかにした。
共通の経済政策や為替政策を持った超国家連合を目指す。
2010年1月1日から関税同盟の加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン)は原則統一された税率を適用し、加盟国間の輸出入は免税となる。
キルギスの参加についてはすでに承認されており、タジキスタンも参加への関心を示しているほか、モンゴルも幾度となく関心を表明している。
ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学上の悲劇」と公言するプーチンにとって、ロシアと周辺国を束ねて米欧や中国との対抗軸にするのは悲願で、大統領復帰後のロシアの針路を示したもの。
プーチン首相が新聞「イズベスチア」に寄稿した論文で、関税同盟と統一経済圏が、将来のユーラシア経済同盟の基礎となるとし、「我々は、現代世界における極の一つとなり、ヨーロッパとアジア太平洋を結ぶ役割を担うような、強力な国家間組織のモデルを提案する」と述べている。
2011年11月18日、CIS諸国は、CISの枠内に自由貿易ゾーンを創設することに関する条約に調印した。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アルメニアの計8カ国が署名。
比較的ロシアと距離を置くトルクメニスタンやウズベキスタン、アゼルバイジャンの3カ国は、年末までに条約加盟を検討するという。
更に、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンは、ユーラシア経済同盟についての宣言草案をまとめた。
(3国の首脳は11月18日、ユーラシア経済同盟に関する文書に調印した。)
CIS首相評議会では又、CIS諸国内での通貨調整や通貨管理政策の基本的原則についての合意や、2020年までの鉄道輸送の戦略的発展のコンセプトに関する決定にも調印がなされた。
付記
EUは12月5日、2012年からグルジア及びモルドバとFTA締結交渉を始める方針を発表した。
旧ソ連邦 |
準加盟
モルドバ 永世中立宣言、EU加盟を標榜
ウクライナ CIS合意に調印したが、正式的にCIS憲章を承認せず
トルクメニスタン 1990年永世中立国、2005年CIS加盟資格を永久停止
脱退
グルジア 1993年CIS参加、2009/8 ロシア-グルジア戦争により脱退
非加盟
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)
CIS設立前に独立、2004年5月EUに加盟、NATOにも参加
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ロシアはこれまで非ロシアの姿勢をとるCIS諸国に対しては、石油や天然ガス価格の引き上げ措置を取り、これが欧州諸国にも影響を与えてきた。
2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争
2007/1/15 ロシアーベラルーシ石油抗争 解決
2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止
ロシアとベラルーシは2011年11月、天然ガスの販売価格を引き下げることで合意した。
両国政府は2012年の天然ガスの販売価格について、2011年比で3割安い1000立方メートルあたり164ドルで合意。ベラルーシにとり20億ドルの値下げにつながる見込み。
ベラルーシはロシアが主導する旧ソ連諸国の経済統合を支持しており、ロシアはその見返りとして値下げに応じた。
ロシアの国営ガス企業ガスプロムが、ベラルーシの国営パイプライン運営会社ベルトランスガスの株式の5割を保有するが、残りの株式5割を25億ドルで取得し完全子会社にすることでも合意した。
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