中国商務部は11月25日、米政府による自国の再生可能エネルギー業界への政策支援や補助金拠出が貿易障壁に当たるかどうか、調査を始めたと発表した。
来年5月25日までに調査結果を公表し、貿易障壁が存在すると判断した場合は、WTOへの提訴など相応の措置を講じるとしている。
米商務省が11月9日に、反ダンピング課税と相殺関税について調査すると発表、ITCが12月5日までに反ダンピング課税などを課すか仮決定する。
これに対し、中国商務部は11月10日、これに対し、「重大な関心を寄せている」とのコメントを出した。
今回の調査はこれに対する対応と見られている。
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米商務省は10月にドイツの太陽電池大手SolarWorld の米国子会社など7社から、「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。
SolarWorldは本年初めに太陽電池パネルの大幅値下がりによりカリフォルニアの工場を閉鎖しており、中国の輸出業者のダンピングで米国のメーカーは根こそぎにされると批判している。
米商務省によると、中国からの太陽電池パネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。
ダンピング課税に賛成するグループは、免税、安い原料、安い土地代や電気水道代、有利な借入金、輸出保険、輸出支援など、中国政府による実質的な補助金に対し、相殺関税を課するよう求めている。
他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社(The Coalition for Affordable Solar Energy)はこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。
グループには、米国のMEMC Electronic Materials やSolar City、中国のSuntech Power(尚徳電力)やYingli Green Energy(英利緑色能源)の子会社が含まれる。
中国最大の太陽発電ディベロッパーCECEP(中国節能環保集団公司)は早速、関税によりコストが高くなり過ぎるとして、カリフォルニア、ニュージャージー、テキサスでの5億ドルの太陽発電計画を中断した。
中国のSuntech Power(尚徳電力)やYingli Green Energy(英利緑色能源)など大手4社の会長は11月29日、北京で会見を行い、「我々の成功は技術とマネジメントの結果であり、中国の業界は特別な扱い、特別な支援を得ていない」とし、米国勢は経営判断の誤りを中国勢に押し付けていると主張した。
中国商務部は、米国の太陽電池メーカーは自身の競争力からくる問題を中国製品との競争のせいにしていると強調、米政府が中米経済貿易関係を傷つけないことを望む」とけん制した。
11月22日には、中国の複数の太陽電池メーカーが米国製ポリシリコンの輸入に関して反ダンピングと反補助金調査を行うよう求めた。
中国商務部は今回の調査開始について、中国の企業が米国の政策は中国の再生可能エネルギー製品の米国への輸出に対する貿易障害になると主張していると述べた。
中国の業界団体は、ドイツのSolarWorld の米国子会社が2007年に米国で新工場を建設した際に4300万ドルの補助金を得ていると指摘している。
調査対象にはワシントン、マサチュセッツ、オハイオ、ニュージャージー、カリフォルニア州の政策も含まれ、風力発電、太陽発電、水力発電関連の製品も含まれる。
米国の太陽電池の全世界輸出は56.3億ドルで、輸出と輸入の差のネットでは18.8億ドルの輸出となっており、対中国でも輸出の方が多い。中国からの輸入も米国メーカーによるものも多い。
紛争がエスカレートすると米国メーカーに悪影響を与える可能性もある。
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なお、太陽電池市場は供給過剰により価格下落が進み、中国の主要メーカーも全社が赤字になっており、各社とも年間出荷予想を下方修正している。
中国メーカー自身が過当競争で疲弊しており、サンテックのCEOは「今後6カ月から9カ月内で業界再編が進む」と予測している。
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