Eastman Kodakが一時、米国でBayer Aspirinを製造販売していた。
Kodakは1988年に医薬会社Sterling Drug を買収した。
Sterling は第一次世界大戦後に敗戦国のBayerから米国におけるBayerの商標を買い取り、Bayer Aspirinを製造販売してきた会社である。
筆者は1970年代に米国でBayer アスピリンを買い、箱に「製造元 Sterling Drug 」とあるのを見て驚いた経験がある。
Bayerは1994年になって、ようやくSterling Drug を買収し、1918年以来初めて、米国でBayerの社名を使い、Bayer Aspirinを販売できるようになった。
KodakがSterling Drug を売却したのは「選択と集中」の一環である。(これは有機EL事業売却などと異なり、妥当なものである)
2012/1/23 Eastman Kodak、米連邦破産法11条申請
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Sterling Drugは1901年に Neuralgyline Co.として設立された。
第一次世界大戦後の1918年、敗戦国ドイツのBayer AGの米国資産は敵国財産接収法(Alien Property Custodian Act)により没収され、Sterling Drugが入札で531万ドルで買収した。
参考 2006/3/23 2つのMerck社
同社はイギリスとその植民地などでも商標権を獲得し、中南米、南アフリカ、インド、オーストラリアなどにもアスピリン販売網を広げた。(1921年に判事がSterlingによる"aspirin"の製品名使用を認めたため、Bayer Aspirinとして販売できるようになった。)
この結果、ラテンアメリカでは両社が同一製品名で競合することとなり、混乱を避けるため、話し合いにより1923年にSterlingは子会社Winthrop Laboratoriesの株の50%をBayerに与え、見返りに製造面の情報を受け取った。ラテンアメリカ市場は分割した。
1971年にアスピリンが何故効くのかが初めて分かり、Johnson & Johnsonは非アスピリンのTylenol を発売、その後、Bufferinなどが次々発売され、1983年にはBayer aspirinのシェアは13億ドルのアスピリン市場の10%にまで下がった。
1970年代にSterlingは医療用医薬品の開発を開始した。
1988年にEastman Kodakが51億ドルでSterling Drugを買収した。
1991年にSterlingは当時のElf Sanofi(現在のSanofi-Aventis)と戦略的提携を行った。
1994年にSanofiはSterling の処方箋医薬品事業を買収した。
Kodakは残りのOTC医薬品事業(Bayer Aspirinが中心)をSmithKline Beecham に 10億ドルで売却し、SmithKlineはこれを同額でBayerに売却した。
これにより、Bayerは米国でのBayer Aspirinを取り戻した。
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米国でのBayerの商標を失ったBayer は1954年に米国にMonsantoとのJVのMobay Chemical (ポリウレタン事業)を設立し、1970年代に100%子会社とした。(MobayはMonsanto と Bayer から取った)
1979年にMiles Laboratoriesを買収し、米国の拠点とした。
1992年に米国子会社のMobayやAgfaなどをMilesに吸収した。
1994年にBayerの商標を持つSterlingをSmithKlineから買収したのに伴い、1995年にMilesをBayer USAに改称した。
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