電気化学と住友化学は1月10日、両社のスチレンモノマー製造JVの千葉スチレンモノマーを4月末に電気化学の100%子会社とすることで合意したと発表した。
千葉スチレンモノマーは1992年1月に電気化学60%、住友化学40%の出資で設立、電気化学の千葉工場内に年産27万トンのプラントを建設した。
製品の引取は出資比率見合いで、電気化学 162千トン、住友化学 108千トンとなっている。
電気化学は自社プラント(24万トン)と千葉スチレンモノマーのプラント(27万トン)を同社千葉工場に有するが、これを機に自社プラントを停止し、競争力のあるプラントでの集中生産体制を確立、スチレンチェーンの基盤強化を図る。
これにより、電気化学の能力はこれまでの402千トン(240+162)が270千トンとなる。
同社は新日鉄化学、ダイセルとのPS合弁会社東洋スチレンを持っている。電気化学では、2015年の創立100周年に向けた経営計画、「DENKA100」と実行計画「Challenging Spirit 2013)の目標達成に取り組んでいるが、今回の措置は、その基本方針 「カーバイドチェーンやスチレンチェーンの収益を基礎として、電子材料や機能・加工製品などの高収益製品を、成長分野と成長地域で伸ばす」 に則った事業展開具体策としている。
今回、合わせて機能・加工製品事業であるウィッグ(カツラ)・ヘアピース用合成繊維「トヨカロン®」の製造工場をシンガポールに新設することを決定したことを発表した。
住友化学は日本オキシランにSM/PO併産設備(SM 412千トン)を有し、千葉スチレンモノマー品の販売を日本オキシランに委託しているが、今般の千葉スチレンモノマーの生産枠(108千トン)の放棄で、競争力が低下している輸出を縮小する。
(同社は三井化学とのJVの日本ポリスチレンを停止、解散した)
ーーー
スチレンモノマー能力推移は下記の通り。(単位:千トン)
三菱化学は2011年3月に鹿島のプラントを停止し、SM事業から撤退した。(同社はPSから撤退している)
新日鐵化学と昭電は2011年3月、新日鐵化学大分の芳香族事業(スチレンモノマーおよびベンゼン、トルエン、キシレン)を母体とする共同事業会社「NSスチレンモノマー」を設立し、両社の合弁事業として運営することで合意した。
共同化により合理化を図る。既に、三井化学はプラントを太陽石油化学に売却して撤退、東ソーは日本スチレンモノマーから撤退している。
産構法時代
1996/12
2005/12
2011/12 2012年 〔 〕はPS合弁 処理前
処 理
処理後
旭化成 水島
川崎330
65
(395):
:
(50):
:
(345)409
ー
(409)751
ー
(751)678
ー
(678)〔PSジャパン〕
出光興産 千葉
徳山160
ー0
ー160
ー210
340
(550)210
340
(550)210
340
(550):〔PSジャパン〕 三菱化学 鹿島
四日市169
241
(410):
:
(100):
:
(310)325
180
(505)371
ー
(371)0
ー
(0)2011/3 停止
〔PSジャパン〕離脱電気化学 千葉
160
0
160
240
240
240 0
2012/4 停止
〔東洋スチレン〕千葉スチレンモノマー
(電気化学/住友化学)千葉
ー
ー
ー
270
270
270 270 2012/4 電化 100%化
住化離脱住友化学 千葉
100
100
0
ー
ー
ー 〔日本PS〕解散 日本オキシラン
(住友化学/Lyondell)千葉
225
0
225
352
412
412
三井化学 大阪
宇部90
ー90
ー0
ーー
284ー
↓ー
ー〔日本PS〕解散 太陽石油化学 宇部
ー
ー
ー
ー
294
335 NSスチレンモノマー
(新日鉄化学/昭電)大分 ー ー ー ー ー 422 新日鐵化学 大分
168
0
168
191
190
(190)↑
(232)↑〔東洋スチレン〕
日本スチレンモノマー
(新日鐵化学/東ソー)大分
ー
ー
ー
232
232
↑ (2008/6 解散)
東ソー 四日市
91
0
91
130
0
ー 合計
1,799
340
1,459
3,163
3,310
2,907 2,667 :
スチレンモノマーの内需の推移は下図のとおりで、特にPSの需要の減が大きく、能力300万トン程度に対し、内需は150万トン程度に止まり、残りを輸出で補っている。
PSでは日本ポリスチレンが2009年9月末に操業停止して解散、三菱化学は2009年10月、PSジャパンから撤退した。
三菱化学はABSでも、2009年3月31日付けでJSRとの合弁事業に関する業務提携を解消し、テクノポリマーをJSRの全額出資子会社とした。(三菱化学はPS、ABSのプラントを停止)
近年、SMの事業環境は、欧米での需要低迷、中国・中東等での能力増強による需給緩和、円高の進行による競争力の低下など非常に厳しい状況にあり、今後、SMを輸出して安定的に収益を確保していくことは困難な情況である。
電気化学と住友化学は、これを勘案し、SM事業の縮小を決めたもの。
コメントする