枝野幸男経済産業相は1月27日の記者会見で、今夏の電力需給対策を巡って「日本の産業に大きな影響を与えることなく乗り切る検討を進めている」と話した。
その上で「いかなる状況でも制限令なしで乗り切りたい。強い意志だ」とし、電力使用を強制的に制限するような措置は回避する姿勢を強調したが、具体的な裏付けは示さなかった。
電力需給対策については原発が全く稼働しない最悪のケースも想定する一方で、原発の再稼働については安全確保を最優先して今後も取り組む考えを改めて強調した。
現在、54基の原発のうち、稼働中は北海道電力泊3号機(4月定検)、東京電力柏崎6号(4月定検)、関西電力高浜3号(2月定検)の3基のみで、4月末には全て停止する。
ストレステストは15基について提出されているが、仮に安全委員会で確認されても、政府が簡単に稼働を認めるとは考え難く、また政府が認めても、地方自治体の了承を得るのは難しい。
少なくとも本年の夏については、原発の稼働はないという前提で考える必要がある。
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1月23日付の毎日新聞は、原発なしケースでの本年夏の電力需給について、昨年時点で2つの予測があったが、政府は不足ケースのみを発表していたと報じた。
政府のエネルギー・環境会議が2011年7月にまとめた見通しが発表された。過去最高の猛暑だった2010年夏の需要と全原発停止という想定で、需要ピーク時に9.2%の供給不足になるとの試算である。
これに対し、国家戦略室に置いた総理補佐チームが菅首相(当時)の指示でまとめ、2011年8月に、首相に報告した。
結果は、電力使用制限令を発動しなくても最大6.0%の余裕があるというものだが、これは公開されなかった。
2012年夏の電力需給見通し (2011年夏時点 単位:万kW) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)最大需要
政府発表は、過去最高の猛暑だった2010年夏の需要
未公表分は、各電力の見通しの積み上げで、需給調整契約を発動
(電力の大口消費者に対し、平常時の電気料金の割引きの見返りに、電力需給逼迫時の消費抑制を求める契約)
2)供給
政府発表分 一部火力発電で定期検査を8月に設定、揚水発電を低めに設定、再生可能エネルギーはほぼゼロ
未公表分 現在の法律に基づいて電力会社が調達できる再生可能エネルギー容量を折り込む
3)供給余力
政府発表では1,656万kWの不足だが、未公表分では逆に1,006kWの余力があることとなる。
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河野太郎議員のブログ「ごまめの歯ぎしり」も2011年10月26日の「原発がなくとも電力は足りるか」で(本年冬の電力不足について)以下の通り書いている。
原発が全て止まっても、この冬に電力が足らなくなることはなさそうだし、来年の夏も原発なしで電力が足りるかもしれない。
この冬の電力状況と政府の需給予測の問題点をISEP(環境エネルギー政策研究所 )のレポートでみてみると:
北海道電力 原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。
東北電力 政府は需要を過大に見積もると同時に他社受電を内容不明に低下させている。
東京電力 政府は需要を過大に見積もると同時に、冬の需要期に火力発電所を三基定期検査する想定。これをずらせば200万kW以上の供給力が出てくる。自家発電の受電を、意味なく削減している。さらに100万kW以上の火力発電の出力低下が組み込まれている。
中部電力 政府の供給予測では、火力発電が300万kW以上出力低下することになっている。火力発電所を需要期に定期検査するのか。
北陸電力 原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。
関西電力 政府の予測は火力発電が100万kW以上出力低下する想定になっている。自家発電の受電を夏よりも減らしている。揚水発電の供給を大幅に減らしている。中国電力からの受電余力がある。
中国電力 原発なしでも冬の需要を上回る供給力がある。政府の予測は火力発電の出力を100万kW以上減らしている。
四国電力 政府予測は火力発電の出力低下等を想定すると同時に関西電力への電力融通をそのまま残している。余力がある中国電力からの融通に切り替えれば、四国電力は供給に余裕が出る。
九州電力 政府予測は火力発電の出力を低下させている。中国電力からの融通も可能なはず。
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揚水発電については、これまでとは意味が異なってくる。
原子力発電は需要に応じて発電量を変えられないため、不需要時の電力で水を揚げ、ピーク時にこれで発電する。
原発が止まった今は、わざわざ燃料を使って発電して水を揚げる必要がある。
このため、ピーク時以外でも節電は必要である。
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