財務省は2月8日、2011年の国際収支状況(速報)を発表した。
経常収支は年間で9兆6289億円の黒字で、黒字額は前年比で43.9%減と、1985年以降で最大のマイナス幅を記録した。
内訳は以下の通り。
1)貿易収支(財貨の輸出入の差、FOBベース)
東日本大震災後のサプライチェーン寸断や海外景気減速の影響で輸出が落ち込む一方、火力発電用LNGの輸入増加が響き、1兆6089億円の赤字に転落した。
旧統計基準を含めた国際収支ベースで1963年以来、48年ぶりの貿易赤字。
輸出額は62兆7234億円で、1.9%減少した。輸入額は64兆3323億円で15.0%増えた。
財務省が2月8日発表した2012年1月上中旬(1~20日)の貿易統計(通関ベース)によると、貿易収支は1兆5600億円の赤字となった。
輸出は前年同期比11.9%減となる一方、輸入は同12.6%増加した。付記
財務省が4月19日発表した2011年度の貿易赤字は4兆4101億円となった。1979年度以降で最高。
輸出 65兆2819億円
輸入 69兆6920億円地域別貿易収支
米国 4兆3024億円 (前年度比 -4.8%)
EU 9194億円 ( -49.8%)
アジア 5兆2185億円
(うち中国 -2兆3020億円)
中東 -11兆2770億円
2)サービス収支(輸送、旅行、通信、建設、保険、金融など、財貨以外のサービスの取引差)
大震災と原発事故をきっかけに訪日外国人が減り、「旅行収支」などの赤字が増え、1兆6407億円の赤字となった。
「特許使用料」では黒字が拡大している。
上記2つの合計の貿易・サービス収支は1985年以降初の赤字となった。
3)所得収支(利子・配当など)
所得収支黒字は19.9%増え、14兆296億円となった。所得黒字の拡大は4年ぶり。
外国債券などへの「証券投資」から得る利益は9兆5375億円で、海外金利の低下にもかかわらず、前年より15%増えた。
海外への「直接投資」に絡んだ収益は34%増の3兆8136億円となった。
2009年度税制改正で、海外法人からの受取配当は2009年4月からほぼ非課税となった。
それまでは、海外の税率が低い場合、国内税率との差が課税された。
このため、配当を日本に還流させず、現地で再投資する方が有利であった。世界的に配当免税の流れが加速したため、税制改正が行われた。
4)経常移転収支(政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など)
1兆1510億円の赤字となった。
付記
財務省が3月8日発表した2012年1月の国際収支状況(速報)によると、経常収支は4373億円の赤字だった。単月の経常赤字は2009年1月以来で、3年ぶり。対前年同月では9845億円の悪化となった。
貿易収支 -1兆3816億円 サービス収支 -930億円 所得収支 1兆1326億円 経常移転収支 -952億円 経常収支合計 -4373億円
経常収支の推移は以下の通り。
財務省では今後、所得収支は一定の黒字基調が見込めるとしながらも、貿易収支の赤字転落は、震災以外にも海外景気減速の影響など一時的ではない要因もあると指摘、経常収支がすぐに赤字となることは考えづらいが、黒字幅の推移は弱含みが続きそうだとしている。
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