サムスン創業者の遺産相続で訴訟

| コメント(0) | トラックバック(0)

サムスングループの創業者、故李秉喆(イ・ビョンチョル)氏の長男、李孟熙氏(81)が弟の李健熙サムスン電子会長を相手取り、総額7100億ウォン(約494億円)の株式の分与を求める訴訟を起こした 。

李秉喆は1938年に大邱で三星商会を設立した。
1948年には三星物産を設立、続いて第一製糖と第一毛織を設立した。

サムスングループは現在、韓国最大手の総合家電・電子部品・電子製品メーカーのサムスン電子、総合電子部品企業のサムスン電機、薄型パネルや電池製造のサムスンSDI、デジタルカメラや製造装置、軍事機器のサムスンテックウィン、造船やプラント生産のサムスン重工業、商社事業と建設事業のサムスン物産、サムスンエンジニアリング、サムスン生命などを抱える。

李秉喆は1987年11月19日に逝去、現在の体制は以下の通りで、三男の李健熙がその地位を受け継いだ。

李孟熙の長男の李在賢が会長を務めるCJグループは旧第一精糖で、1993年にサムスングループから分離した。
また、長女の率いるハンソルグループは1991年にサムスングループから独立したチョンジュ製紙が起源で、製紙に加え、インテリア、精密化学品、建築・レジャー施設開発、物流、IT、そして環境へと事業分野を拡大している。 

付記 次女(LG系列の食品・レストラン業アワホームの具会長の夫人)の李淑姫も2月27日、同様の訴訟を起こした。

ソウル中央地裁によると、李孟熙氏は「父が生前に第三者の名義で信託した株式などの財産を、李健熙氏がほかの相続人に無断で単独名義に書き換えた」と主張し、相続分に相当する株式の分与を求めた。

今度の訴訟の争点は、故李秉喆が経営権保護などを理由に役職員の名義で管理していた三星生命と三星電子の借名株式。
故李秉喆は後継者として3男の李会長を選び、この過程で役職員の名義で管理していた三星生命の借名株式などが李会長の所有になった。

これに関しては2008年4月に特別検察官チームが、経営権継承疑惑、裏資金疑惑、不法ロビー疑惑で李健熙会長を背任と脱税など3つの容疑で起訴、三星幹部10人を書類送検した。

会長は執行猶予付きの刑が確定したが、韓国政府は、2018年冬季五輪招致に弾みをつけるため、2009年末に特別赦免した。

2010年3月24日、李健煕氏がグループ社長団会議の要請を受け、サムスン電子の会長に復帰した。

2008/4/26 揺れる韓国サムスングループ

「父が生前に第3者名義で信託した財産を李健煕会長が他の相続人に知らせず、単独名義に変更した」とし、「これは不当利益および不法行為に当たるため、民法上相続分189分の48に合わせて株式と今までの配当分を譲渡してほしい」と請求した。

また、 1998年12月にサムスンエバーランドが買収する形で名義変更されたサムスン生命の株式3447万株も法定相続分に従い返還されるべきだと主張している。

要求額は以下の通り。

李健煕会長に対し
  三星生命の株式824万余株、
  三星電子の株式20株(相続分 普通株57万株、優先株3100株の一部として)
  現金 1億ウォン(約696万円)
三星エバーランドに対し
  三星生命の株式100株(相続分 876万株の一部として:名義変更の経緯が不明確なため)
    現金 1億ウォン  

今後、訴訟の進行状況を見ながら、追加的な訴訟で財産分割を求める。

李孟熙氏が要求したサムスン生命の株式824万株を全て手にしたとしても、李健熙氏とサムスンエバーランなどの系列企業がサムスン生命の株式を40%以上保有しており、経営権に影響を及ぼすことはできない。

当時の民法によれば、相続回復請求権は「相続権侵害を知ってから3年が経過するか、あるいは相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過した時点で消滅する」と規定されている。

李孟熙氏は「昨年6月に受け取った文書に、他人名義の信託財産に関する言及があるのを見て、相続権が侵害された事実を知った」と主張している。
但し、2008年4月の三星秘密資金疑惑と関連した特別検事の捜査結果の発表には借名株式の存在が含まれており、この時点からは相続財産を要求できる除斥期限(3年)が既に経過している。

付記

本件は、2011年6月に国税庁が長男の李孟熙ら相続人に送った公文書がきっかけだったことが分かった。

国税庁は「イ・ビョンチョル会長が他人名義で保有していた財産が、2008年12月に李健熙サムスン電子会長の名義に書き換えられたが、相続人は法定相続分を放棄し、李会長に贈与したのか」と照会する公文書を送った。

国税庁の照会を知った李健熙会長は、直後に李孟熙氏の息子の李在賢CJ会長に「先代会長の財産は、相続当時に分割が決定され、全ての相続人はほかの相続人の財産にいかなる異議もない」とする文書を送り「この文書に押印し、ソウル地方国税庁に送ってほしい」と要求した。

しかし、李在賢会長はそれに応じず、今回の訴訟となった。

 

故李秉喆氏の遺言状が存在しない状況で、李健熙氏は父が他人名義で管理していた株式を相続した根拠を明らかにすることも容易ではなく、財界関係者は「失う部分が多い李健熙氏が譲歩し、金銭で和解する可能性が高い」と指摘している。

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/1746

コメントする

月別 アーカイブ