ギリシャ第二次支援決定

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EUのユーロ圏17カ国は2月21日の財務相会合で、ギリシャへの総額1300億ユーロの第2次支援を決めた。
支援実行と引き換えに、同国をEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させることで一致した。

第2次支援の実行が決まったことで、ギリシャは3月下旬の国債の償還資金を手当てし、債務不履行(デフォルト)を回避することになった。

ギリシャ支援を巡る合意内容の骨子は以下の通り。

 ・EUとIMFが1300億ユーロ(約13兆6500億円)を支援

 ・民間債権者が保有するギリシャ国債の元本削減率を50%から53.5%に引き上げ

ギリシャ国債を最長30年の新発国債などと交換する。

銀行等保有の国債
 2000億ユーロ
1070億ユーロ(53.5%) 削減
 930億ユーロ(46.5%) 31.5%  最長30年の複数の新規国債 利率2.0~4.3%
15.0% 短期の欧州金融安定化基金債

クーポンは最初の3年間がわずか2%で、30年間の平均では3.65%となる。 (実勢は10年満期で30%超)
金利減を含めると約7割の債務削減となる。

国債の交換は、民間側の代表である国際金融協会(IIF)と合意したが、債権者はこれから個別に文書にサインする必要があり、最終的な参加率がどの程度になるのか、まだ確定的はことは言えない。

ギリシャ政府は、一定以上の合意があれば全ての国債交換を進められるようにする集団行動条項(CAC:collective-action clauses)を盛り込んだ法案を議会に提出した。

 ・ECBとユーロ圏各国の中央銀行が支援に参加

ECBは債券買い入れプログラムに基づき購入した債券の利益を放棄
  購入した500億ユーロのギリシャ債からの利益 120-150億ユーロを放棄、
  ユーロ圏17カ国の中央銀行のギリシャ向け融資の損失を補てん

ECBと中央銀行は投資ポートフォリオで保有している債券の利益を放棄
   ギリシャが資金調達する必要のある金額は今後3年間に18億ユーロ圧縮される見通し。

ECBによる担保の受け入れ
  ギリシャ債がデフォルトと分類されても、オペの担保として銀行が保有するギリシャ債を受け入れる。

 ・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に

 ・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる
    財政主権を事実上制限して、4月の総選挙後も同国が財政健全化の取り組みを緩めないようにするのが狙い

EUなどの代表がギリシャに常駐し、予算編成なども含めて同国が約束した財政緊縮策を確実に履行しているかどうかを監視。
第2次支援でギリシャに融資される資金は、通常の予算とは別の特別会計で管理し、債務返済を優先させる。


当面のデフォルト危機は回避できるが、EU・IMFの報告書は、ギリシャの景気が想定以上に悪化するなどの場合、第2次支援を実施しても2020年時点で債務の対GDP比率が160%程度に高止まりするリスクを指摘しており、ギリシャの財政再建の前途は厳しい。

これまでの経緯は以下の通り。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ
 最大合計 7500億ユーロ


2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(
21%の損失負担
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。
ギリシャ問題については
民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7   EU 金融危機

その後 EU・IMFの試算では、当初予定していた第2次支援を実施しても、2020年時点でギリシャの政府債務の対GDP比率は129%までしか低下せず、目標の120%を実現するための追加策が残された大きな論点となった。

ギリシャ政府の追加緊縮策が整わないことなどを理由に正式決定が先延ばしされてきた。

EUは第二次支援を1300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとし、ギリシャにそのための条件を科した。

2月15日、3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」
   2012年で33億ユーロ分の 賃金、年金、公務員削減による節減策を議決

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
   ギリシャ与党党首が「緊縮策実行の誓約書」に署名。

3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)
   6億2500万ユーロの歳出削減めぐって暗礁に乗り上げたが、
    うち、3億ユーロを年金の削減で賄うことを決定
   残り 3億2500万ユーロについては、最終的に国防費や公共投資などの削減で賄うことを決定。

 

 

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