SABICとSinopecはTrinidad and Tobago に共同で53億ドルを投じてメタノールコンプレックスを建設する件で同国政府との交渉を開始した。SABICが2月11日に証券取引所に報告した。両社は他の各社も入った入札で一番札となった。
SABICとSinopecは2012年1月14日、新規事業開発に関する協力覚書を締結している。
2012/1/18 Saudi AramcoとSinopec、サウジでの製油所建設の合弁契約締結
具体的な計画は明らかにしていないが、地元紙はMethanol-to-olefins (MTO) と Methanol-to-petrochemicals (MTP) が含まれていると報じている。
同地の天然ガスを原料とするもので、立地はPoint Lisas。
Trinidad Tobagoは天然ガスが豊富で、液化能力は1,520 万t/年あり、米国への最大のLNG 輸出国である。
2009年の天然ガス利用量のうち、LNGは59%、メタノールは15%、アンモニアは15%となっている。詳細(上記グラフも)はJOGMEC資料 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3638/1008_out_l_tt_lng.pdf
本計画の入札の透明性についてTrinidad and Tobago で論争が起きており、野党議員も、Sinopecが参加することを知らなかったと述べ、交渉内容を明らかにするよう求めている。
報道によると、米大使は政府に書簡を送り、米国企業(Celaneseが参加)などの競合相手を抑えてSABICを選ぶことに懸念を表したとされる。
問題の一つは原料の天然ガスの価格の大幅値引きである。
SABICはNYMEXでの天然ガス価格が100万BTU当たり2.48ドルであるのに対し、1ドル以下を要求していると伝えられている。
このため、国内メーカーよりも極端に安い価格を外国企業に認めるのはおかしいとの声が出ている。
Point Lisasでは国営Methanol Holdings (Trinidad) やMethanexがメタノールを生産しているが、減税などの恩典はあるが、原料の天然ガスについては国営National Gasから特別な割引は受けていないとされる。
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現在、Point Lisasには合計7つのメタノールプラントがあり、能力合計は660万トンに達する。
国営 Trinidad and Tobago Methanol Company
1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。
子会社
統合Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン 1996 TTMC II 55万トン Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)2005 184万トン 合計 400万トン
Methanex 及び Atlas Methanol
工場 能力 備考 Methanex 85万トン Atlas Methanol 170万トン BP 36.9%/Methanex 63.1%
現在はメタノールはそのまま海外に輸出されている。
今回の計画は、単にメタノールを生産するだけでなく、酢酸やエチレン・プロピレンを生産し、付加価値をつけるもの。
同国では川下分野の多角化を進め、付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという戦略をつくっている。
既にLyondellBasellがこの方針に基づき、Methanol - Propylene - PP計画を進めている。
Basell とTrinidad and Tobago の National Gas Company、National Energy Corporation 及びLurgi AG は2007年12月に、Trinidad and Tobago で統合PP コンプレックスを建設するMoU を締結した。
2008年9月、LyondellBasell は上記各社にTrinidad and Tobago 政府も参加して、本プロジェクトのProject Development Agreement に調印したと発表した。
計画内容は以下の通り。
Methanol :Lurgi's MegaMethanol technology
Methanol-to-propylene (Lurgi's MTP technology)
PP 490千トン(Spherizone technology)
2007/12/25 Basell など、Trinidad and Tobago で PP 事業
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SABICは今後、サウジで原料を大量に得るのは難しいと考えており、サウジでのプロジェクトのほとんどは高付加価値製品である。
逆にSABICは最近、シェールガスを原料に米国でクラッカーを建設することを考えていると明らかにした。
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