中国のレアメタルの輸出規制が世界貿易機関(WTO)のルールに違反しているとして、2009年に米国・EU・メキシコが訴えた貿易紛争を巡り、WTOの最終審に当たる上級委員会は1月30日、欧米側の主張を認める第1審裁決を支持する報告書を発表した。
問題となったのは、下記の9種の鉱物資源の輸出関税、輸出割当、最低輸出価格、輸出許可制などの輸出制限で、その結果、これらの価格が上がり、各国の産業に幅広い被害が出たと訴えた。
ボーキサイト、亜鉛、黄燐、コークス、蛍石、マグネシウム、マンガン、炭化ケイ素、シリコン金属。
ほとんどの製品で中国が主要産地となっており、輸出制限でグローバルに需給ギャップが広がった。
中国は2010年末時点で亜鉛と蛍石の最大産地で、ボーキサイトも2番目に大きいとされる。
このうち、石炭コークスについては2012年に臨時の40%の輸出関税を課しており、黄燐の輸出関税も20%となっている。
米国などの批判に対し、中国は天然資源の保護や環境保護を輸出規制の理由として説明した。
WTOの前身のGATTの規定では、希少天然資源の保護、環境保護のために輸出関税を課したり、輸出を制限することを認めている。
しかし、上級委員会は、中国が天然資源保護を言いながら国内での生産・消費を制限していないこととの関連を説明できなかったとし、環境保護についても、輸出制限が短期的、長期的に環境汚染を減らすということを説明できなかったとしている。
中国商務部では、この決定について「遺憾だ」としながらも、「中国はWTOの裁決を真剣に評価し、またWTOのルールに基づき資源製品に対する科学的な管理を行い、持続的な発展を実現する」と表明した。
今回の決定そのものは、影響は限定的とみられている。
貿易紛争が起きた2009年以降、これら9品目の需給関係は大きく変化した。世界経済が低迷する中で、欧米では原材料需要が伸び悩んでおり、中国が規制を解除したとしても、需給関係を速やかに変化させることはなく、短期的にみれば業界や企業への影響は限定的とみられる。
しかし、これが今後のレアアースの輸出問題に与える影響が注目されている。
上記の9品目とは異なり、レアアース価格が過去最高の水準にあり、欧米や日本にとって今回の裁決は問題の対象をレアアースに向けさせることに真の意義がある。
付記
日本と米国、EUは3月13日、中国によるレアアースの輸出制限について、WTOに提訴した。
提訴対象にはレアアースのほか、タングステンとモリブデンも含まれる。
このほか、錫、タングステン、アンチモンなどに対する中国の輸出政策も注目されている。
商務部は2011年12月、タングステン、アンチモンなどの非鉄金属の2012年第1弾の輸出割当枠を発表した。
タングステンは1万1400トン、酸化アンチモンは3万3500トン、錫は1万800トンの輸出枠を設定した。
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