大日本住友製薬は2月29日、米国のBoston Biomedical Inc.を買収することで合意したと発表した。
大日本住友製薬は4月25日、Boston Biomedical Incの買収を完了し、完全子会社としたと発表した。
同社の会長のDr. Chiang Li等がつくっている 1Globe Health LLCが過半数を所有しており、株主数は合計6 名。
三井物産のベンチャー投資子会社の三井物産グローバルインベストメント(旧称 エム・ヴィー・シー)も株主の1社で、設立直後から出資し、取締役を派遣している。同社も大日本住友製薬への売却に同意した。
買収の対価は以下の通り。
買収完了時 | 200 百万米ドル | ||
開発マイルストン 開発中の化合物 BBI608、BBI503 |
最大 540 百万米ドル | ||
販売マイルストン | 最大 1,890 百万米ドル | (年間売上高が4,000 百万米ドルの場合) |
BBI608 及びBBI503 について、2015 年以降の発売を目指している。
Boston Biomedical は癌領域を専門とするバイオベンチャー企業で、癌幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製された低分子経口剤であるBBI608 及びBBI503 の2 つの有力な開発パイプラインを有している。
(BBI608 及びBBI503 の日本、北米における独占的な権利を保有している。)
がん幹細胞に特異的な標的分子の同定が困難で、現在までのところ、がん幹細胞に対する抗がん剤が成功した事例はなく、BBI608 及びBBI503 は世界初のがん幹細胞に対する抗がん剤となる可能性を有している。
BBI608は現在、北米において大腸がんに対する第3 相臨床試験実施の準備段階にあり、また各種固形がんに対する第Ib/II 相臨床試験の段階にある。
BBI503は、北米において進行性の各種固形がんに対する第1 相臨床試験の段階にある。
大日本住友製薬はBBI608 について2011 年3 月に、全ての癌種を対象に日本をテリトリーとした開発・販売権に関する独占的なオプション契約をBBI 社と締結した。契約一時金および開発費用の一部として15 百万ドルを支払った。
北米での臨床試験の結果に基づき、オプション権を行使したときには、日本における独占的開発・販売権を取得する。
米国およびカナダについては独占交渉権を保有。
オプション契約締結後、開発パイプラインの革新性及び高い創薬・開発能力を評価し、本買収を決断した。
今後、大日本住友製薬の100%子会社として、ボストン地区で事業を継続する。
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大日本住友製薬は第二期中期経営計画で新薬継続創出に向けたパイプラインの拡充を掲げており、癌や免疫疾患などのスペシャリティ領域をチャレンジ領域とし、ファースト・イン・クラスの革新的な医薬品の創製を目指している。
ファースト・イン・クラス(画期的医薬品)は特に新規性・有用性が高く、化学構造も従来の医薬品と基本骨格から異なり、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的医薬品をいう。
癌領域はアンメット・メディカル・ニーズが極めて高い領域であり、同社では、癌治療薬への挑戦を研究開発型製薬企業の重要な使命であると考えており、大きな事業チャンスとも見ている。
「今回の買収で、癌領域における革新的な開発パイプラインを獲得するのみならず、卓越した創薬・開発能力の取得により、今後の継続的な開発化合物候補の創出が期待できる優れた創薬プラットフォーム及び開発能力を獲得することとなる。これにより、米国での研究開発体制を構築し、グローバルにおける癌事業での当社のプレゼンスを高め、癌領域を精神神経領域に次ぐ当社の将来の重点事業領域の一つとすることを目指す」としている。
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Boston Biomedical Inc.の会長のDr. Chiang J. Li は米国のバイオテクノロジー会社 ArQule Inc のChief Strategic Officeer & Executive VP であった。同社のR&D部門を立上げ、同社を化学品サービス会社からR&Dに焦点を当てた企業に変身させた。
2002年にArQule のR&D部門のメンバーがCyclis Pharmaceuticalsを設立し、癌治療薬の開発を行ったが、2003年7月にArQuleがこれを買収した。
2007年に開発がうまくいかず、ArQule はこれを分離してBoston Biomedical とし、500万ドルの研究補助金付きでDr. Chiang J. Li に与えた。現在もArQule 出身者が26名働いている。癌幹細胞領域の研究開発に特化。
ArQuleは開発業務をBoston Biomedical に移したことで、臨床試験中の製品に重点を移した。
ArQule はBoston Biomedical には出資していない。
Dr. Chiang J. Liは現在も ArQuleのScientific Advisory Boardの会長をしている。
第一三共は2008年11月に、ArQuleとの間で癌治療領域での研究・開発・販売の提携で合意した。
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