ExxonMobilのTillerson会長兼CEOは3月8日に行った講演で、将来の需要の伸びに対応するための新たなエネルギー源の開発に今後5年間で約1,850億ドルを投資すると述べた。これは過去5年間の投資を29%上回る。
ExxonMobilでは今後著しい効率改善があったとしても、世界のエネルギー需要は2040年までに2010年比で30パーセント増加すると見ている。電力需要に伴って天然ガスが主要なエネルギー源として最も急成長し、石油と天然ガスが今後30年間のエネルギー需要の60パーセントを満たすと予想している。
これに対応するため、ExxonMobilは2016年までの5年間に年間370億ドルを投資する。
2012年から2014年の間に合計21件の石油・ガス計画が生産開始する。
このうち 2012年と2013年には、西アフリカの4カ所、カザフスタンのKashagan Phase 1 、カナダの Kearl Oil Sands project を含む9件の主要な川上プロジェクトを開始、2016年までに原油換算で日産100万バレル以上の純産出量を期待している。
Kashagan ガス田はカスピ海北部にある海上ガス田で、Eni が主体で開発しており、日本の国際石油開発(Inpex) も参加している。
出資比率は、Eni (18.52%)、Shell (18.52%)、Total (18.52%)、ExxonMobil (18.52%)、ConocoPhillips (9.26%)、KazMunayGas (8.33%)、Inpex (8.33%)。Kearl Oil Sands ProjectはAlberta州のKearl Lake areaで開発中で、出資比率は、
Imperial Oil Resources 70%、ExxonMobil 30%。
同社では過去2、3年、天然ガス開発に注力している。同社では天然ガスは2025年までに石炭を追い抜き2番目に重要な燃料になると見ている。
ExxonMobil は2009年12月にXTO Energyを410億ドルで買収すると発表した。
XTOは米国のみで操業する非在来型天然ガス生産大手で、シェールガス、タイトガス、コールベッド・メタン、シェールオイルなど、合計換算 45兆立方フィートのガス資源を有しており、Barnett, Fayetteville, Haynesville, Marcellusなど主要シェールガスの全てで開発を行っている。
しかし天然ガスは今のところ、儲かっていない。シェールガスの供給増大で価格が急落している。
Chesapeake EnergyやConocoPhillipsは供給過剰対策で本年に生産を停止している。
Exxonは天然ガスの生産減は行わないが、将来計画では石油を重視するとしている。
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Tillerson会長はシェール開発についても述べた。
シェールの採掘には水圧破砕法(Hydraulic fracturing 又は fracking)が使われているが、一部でこの技術ではガスを採取できないケースがあることが分かった。
坑井内に高い圧力を加えて採収層に割れ目(フラクチャー)を作り、その中に砂などの支持材を充填することによりその閉塞を防ぎ、採収層内に非常に浸透性の高い油・ガスの通り道を形成するもの。
大量の水と600種類にも及ぶ薬剤を投入する。一つの井戸で18回も投入する。
ExxonMobil はXTO Energyを買収したが、ポーランドで行った最初のシェールガス開発(2か所)で失敗した。
昨年第4四半期に完成した井戸はガスが出ず、高圧ジェットでの試みも失敗した。
米国のシェール層でも水圧破砕法が有効でないものが確認されている。
Exxonでは現在、他の流動体、プロパント(砂やセラミックの顆粒)、ポンプ技術の使用でうまくいかないか、検討している。
こういう問題はあるが、同社では Bakken シェールで40万エーカー、Permian Basinで80万エーカー、Woodford Shaleで17万エーカーの権利を持ち、シェールは同社にとってのドル箱(Cash Cow )になるとみている。
同社は2011年7月、Sinopecとの間で四川省でのシェールガス開発の可能性を共同で評価することに合意した。
同社はまた、アルゼンチンのVaca Muertaシェールの開発も行っている。
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なお、シェールガスについては環境汚染の懸念から規制強化の動きがある。
フランスでは2011年7月に水圧破砕法を使用するシェールオイル、シェールガスの開発を禁止した。(Law No.2011-835)
これに基づき、2011年10月に米国のSchuepbach社のNant とVilleneuve-de-Berg での計画とフランスのTotal のMontélimarでの計画の認可が取り消された。
ブルガリア議会は本年1月18日、水圧破砕法による石油・ガス開発禁止法案を可決した。
水圧破砕法の利用禁止に加え、ブルガリアの領土・領海内のシェールだけに限らず、石炭やオイルサンド(油砂)、オイルシェール(油母頁岩)からの天然ガスと石油の抽出も禁止する。
ブルガリア政府は2011年6月にChevronに対し、北東部ドブルジャ地方での試掘を認めたが、認可は取り消された。
米国の各州でも規制の動きがある。
参考 2011/8/8 「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」
付記 コメントで下記記事の紹介がありました。
水質汚染のあった採掘坑では、水道水を汲み上げる帯水層に接する部分がセメントで適切に隔離されておらず、汚染物質が帯水層に流れ込んだという。
評判の悪い水圧破砕法ですが、最近、フラクチャリングが悪いのではなく、掘削方法が悪いという結論が一部の調査で分かったそうです。まだまだ議論が続くと思いますが、建設的な発展を望みたいと思います。
【NewsBrief】水圧破砕法は水質汚染の犯人にあらず=専門家ら
(ウォールストリートジャーナル日本版)
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_407244?mod=KW_Search_Result
しかし、紆余屈折を経て、シェールの掘削方法が確立されると、やっぱり日本の石油化学業界には脅威ですね。
情報有難うございます。
「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」では2つの問題をあげています。
第一は薬剤が漏れて、民家の井戸に混入したり、河川を汚染することで、これは多分、セメント工事を適切にやれば防げるかも分かりません。
第二は廃棄物処理で、回収された薬剤入りの水は仮の溜池に保管されているが、池の土手から水が漏れている。また、溜池から薬剤がどんどん蒸発している。
コンデンセートタンクからもガスがもうもうと蒸発しており、大気汚染を起こしている。更に、天然ガスのパイプラインも途中でガスを放出している。
この大量の回収水の対策は難しいと思われます。
(一部地域では Deepwellに流し込んでいますが、これが出来ない地域が多いようです。)