韓米FTA発効

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韓国と米国との自由貿易協定(FTA)が3月15日に発効した。最初の交渉妥結から5年かかった。

工業製品などの9割弱について両国で関税が即時撤廃され、5年以内に工業製品などの約95%で関税が撤廃される。
米国市場で韓国製品と競合する日本製品の競争力は一段と低下することになる。

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韓米FTA交渉は2007年4月2日に妥結した。最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。
なお、コメについては対象外となっている。

2007/4/4 米韓FTA妥結 

しかし、自動車関連などで米国内の反対が強く、批准されないままとなっていた。

2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、争点を話し合うための通産相会議が11月に行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂 

最終的に、米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れ、その代わり、韓国は自動車で大きな妥協を行い、2010年12月3日に交渉が妥結した。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

米上下両院は2011年10月12日、韓国とのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。

韓国与党ハンナラ党は11月22日、国会で韓米FTA批准案を強行可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

2011/11/25 韓国、韓米FTA批准案を強行可決 

韓国国会は2011年12月30日、米国とFTAの再交渉をするよう政府に求める決議を賛成多数で可決した。
決議は特に「ISD条項」(
投資家対国家紛争仲裁制度)について「主権を脅かしかねない」と指摘、破棄も含めて米国と再交渉するよう求めている。

2012/1/7 韓国国会、「米とのFTA再交渉」決議 

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韓国外交通商部は本年2月21日、韓米FTAが3月15日午前0時に発効すると発表した。

最大の争点のISD条項に関しては、「削除は検討していない」と述べ、「FTA発効後90日以内にサービス投資委員会を開き、ISDをめぐる問題を論議するための特別班を構成する予定」とした。

なお、本条項は2007年の最初の妥結時から入っていた。
韓国が既に80カ国以上と結んだ投資協定にもISDは入っている。

総選挙を4月に控えた韓国の野党内に反発が残っているが、一時は「破棄」を求める姿勢を示していた最大野党・民主統合党の韓明淑代表は、「(問題のある条項の)再交渉に力点を置いている」と語るなど軌道修正を図っている。

付記

米通商代表部は2011年11月に韓国でのFTAの国会批准を控え、「韓米FTAが発効されれば、韓国が提起するいかなる問題にも、韓国と交渉する準備ができている」と明らかにした。

しかし、2012年5月、「米政府は、韓国が心配する様々な問題に耳を傾ける準備ができている」としつつも、FTAの再交渉については否定的な考えを示した。

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韓国は米国、EU、EFTA(欧州自由貿易連合)、シンガポール、ASEAN、インド、チリ、ペルーとFTAを結んでいる。
3月11日には
トルコとのFTAの商品分野の交渉が妥結した。遅くとも来年初めにはFTA発効を目指している。

付記 3月26日、トルコとのFTA交渉が合意に達した。

米国・EU・ASEANの世界3大経済圏とFTAを結んだ唯一の国となり、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」(韓国政府)となる。

世界経済の低迷や欧州財政危機の中でも昨年、欧州企業の韓国への直接投資は急増し、日本や中国企業もその後を追っている。中国など、海外に流れた国内企業各社が次々とUターンの準備をしているという。

 

 

 

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