米商務省は3月20日、中国のソラーパネルメーカーが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税を課す仮決定を下した。
相殺関税の対象となるのは中国製の結晶シリコン型ソラーパネルで、税率は2.90~4.73%。
中国製の太陽電池セル(発電素子)を使ったパネルやモジュールであれば、第三国から輸入する製品にも適用される。
仮決定の税率は以下の通り。 SunTech Power Holdings (尚徳電力) 2.90% Trina Solar(天合光能) 4.73% 他の全ての中国メーカー及び輸出者 3.59%
最終決定は今年6月の予定。
商務省はダンピング課税の調査も進めており、5月17日に発表する。
付記
米商務省は5月17日、中国製太陽電池を対象に、31.14-249.96%の反ダンピング関税を課す仮決定を下した。
仮決定の税率は以下の通り。 Wuxi Suntech 31.22% Trina Solar 31.14% 他の59社 31.18% 他の全ての中国メーカー及び輸出者 249.96% 米国商務省は今回の仮決定に続き、今年10月上旬に最終決定を下す見通し。
付記
米商務省は5月30日、中国から輸入された風力発電タワー(Wind-Turbine Tower)が中国政府から補助金を受け不当に安い価格で販売されているとして、相殺関税を課す仮決定を下した。
CS Wind 13.74%
Titan Group 26%
その他 19.87%付記
中国商務省は7月20日、米国と韓国製の太陽光発電パネル向け多結晶シリコンについて反ダンピング調査を、米国製については更に反補助金調査も開始したと発表した。
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米商務省は2011年10月、ドイツのソラーパネル大手SolarWorld の米国子会社など7社から、「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。
これを受け、米商務省は11月9日、反ダンピング課税と相殺関税について調査すると発表した。
中国からのソラーパネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。
ダンピング課税に賛成するグループは、免税、安い原料、安い土地代や電気水道代、有利な借入金、輸出保険、輸出支援など、中国政府による実質的な補助金に対し、相殺関税を課するよう求めている。他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社(The Coalition for Affordable Solar Energy)はこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。
商務省の調査開始発表に反発した中国商務部は11月25日、米政府による自国の再生可能エネルギー業界への政策支援や補助金拠出が貿易障壁に当たるかどうか、調査を始めたと発表した。
2012年5月25日までに調査結果を公表し、貿易障壁が存在すると判断した場合は、WTOへの提訴など相応の措置を講じるとしている。
ITC(米国際貿易委員会)は12月2日、中国から輸入されたソラーパネルが米市場で不当に安く販売されており国内業界に損害を与えているとの仮決定を示した。
米国のアンチ・ダンピング調査は、ITCが外国企業によるダンピングで国内企業が被害にあったかどうかを認定、
商務省がダンピング・マージンを認定する。
2011/12/1 太陽電池で米国と中国が互いに貿易障壁調査開始
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米国企業が100%超の関税を求めたのに対し、今回の商務省の仮決定の税率は2.90~4.73%と非常に低い。
一般的には中国政府のソラーパネル業界への支援は30%に及ぶとされていた。
米メーカー7社で組織する団体はそれにもかかわらず、この決定を称賛し、この決定が市場でのフェアな競争を回復させるとしている。
中国メーカーは今回の低率の相殺関税の仮決定は、中国のソラー業界が補助金で安値販売をしているという批判が誤りであったことを示していると述べた。
また、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカーには安堵感がある。
ダンピング課税についても、同様の結果を期待するとしている。
しかし、中国側には決定はアンフェアで、国際的なルールに反しているとの意見が出ており、低率とはいえ相殺関税を課したことで、対抗策を打ち出している中国政府の反応が懸念される。
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これとは別に、米国商務省は3月19日、中国製スチールホイールに対し、反ダンピング関税と相殺関税を課すと発表した。
中国の業者は価格を不当に低い水準に設定しているうえに、中国政府から補助金の支給を受けているとした。
反ダンピング関税の税率は44.96-193.54%、相殺関税は25.66-38.32%。
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2011年の米国の貿易赤字(サービスを除く)のうち、対中国赤字が2955億ドルで全体の40%を占めている。(対日赤字は8.5%)
対中赤字は2000年代前半から一貫して増加、2009年には金融危機の影響で貿易量が減少して一時減ったが、2011年は10年比で増加している。
このため、米国内で人民元問題などで対中強硬論が拡大する可能性がある。
共和党の大統領候補のロムニー前マサチューセッツ州知事は「為替操作国認定」の方針を明言している。
オバマ大統領は1月24日の一般教書演説で、「競争相手がルールを無視した場合に傍観はしない」と述べ、中国の通商政策や知的財産侵害を批判した。
中国などの「不公正な貿易慣行」を調査する新部局の新設を明言し、米中摩擦の解消に善処するようくぎを刺した。
2012/2/13 米国の貿易収支赤字
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