ドイツの太陽電池メーカー大手のQ-Cellsは4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。
太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。
同社は破綻の理由には挙げていないが、ドイツ政府は4月1日から太陽光発電の買取価格(Feed-in-tariff)の大幅引き下げを実施する。
ドイツ議会は3月29日、Renewable Energy Actの改正案を議決した。
ドイツでは送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買取制度」により太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。
しかし価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだ。このため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。
10kW 未満の小規模発電は1kw時当たり0.2443ユーロから0.1950ユーロに引き下げられる。かつ、発電量の80%分しか払われない。
1 MW までは0.165ユーロに、1-10 MWは0.135ユーロになる。発電量の90%分しか払われない。10MW以上についてはFeed-in-tariffは不適用となる。(一定の猶予期間あり)
これらを受けて、多くのメーカーが破綻している。
2011年12月にSolar Millennium AGが破綻した。
本年3月にSolarhybrid AGが破綻した。
同社はこれに先立ち、買取価格の引き下げが同社損益に大きな影響を与えるとしていた。
4月2日、南カリフォルニア州で1000メガワットのBlythe Solar Power Projectを推進しているSolar Trust of America LLCがChapter 11 を申請した。
同社は破綻したSolar Millenniumが70%、Ferrostaal(旧称MAN Ferrostaal、アブダビのIPICが70%取得)が30%のJV。
Solar Millenniumはその持株をSolarhybrid AGに売却しようとしたが、Solarhybrid AG自体が破綻した。
Ferrostaalは資金援助を拒否した。
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Q-Cells は2009年に大幅赤字に陥った。
同社は2009年8月13日、2009年上半期決算が下記理由で大幅な赤字となったと発表した。
・ スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。・ 金融危機による銀行融資の激減 ・ 厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。 スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。
2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調
2010年はかろうじて黒字を確保した。
新たに開始した太陽電池モジュール事業と中型の建物屋根への太陽光発電施設や小規模太陽光発電施設というシステム導入事業という戦略新規事業部門の売上高が全社売上高の27%を占めたのが大きい。
しかし、同社が3月末に発表した2011年決算は、価格下落に歯止めがかからず、最終損益が8億4600万ユーロの最終赤字だった。有形・無形資産の除却損 398.5百万ユーロ、在庫評価損 129.1百万ユーロを含む。
2011年に経営再建のため、生産量を一時的に削減、ドイツの生産能力を半減して生産拠点をドイツから人件費の安いマレーシアに移管した。
本年2月には債権者集会を開き、債務の株式化などの財務リストラの承認を得た。しかし、Pfleiderer社の同様のケースが裁判所で否定されたことからこれを断念、代替案が見つからないため法的整理に入ることを決めた。
同社によると、世界の太陽電池の状況は以下の通り。
1)過剰能力(単位:GWp)
需要 能力 過剰 2010年 19 25 6 2011年予 25 40 14 2012年予 29 50 21
2)2011年のスポット価格下落
Solar cells -60% Modules -40% Systems -20%
Q-Cellsは2008年の年間生産量で世界1位であった。(2位は米のFirst Solar、3位は中国のSuntech Power)
その後の中国勢の台頭で同社のシェアは急減している。
2010年のシェアは以下の通り。
1 Suntech (尚徳電力) 中国 6.6% 2 Ja Solar(晶澳太陽能) 中国 6.1% 3 First Solar 米国 5.9% 4 Yingli(英利緑色能源) 中国 4.7% 5 Trina Solar(天合光能) 中国 4.7% 6 Q-Cells ドイツ 3.9% 7 Gintech(昱晶能源科技) 台湾 3.3% 8 シャープ 日本 3.1% 9 Motech(茂迪) 台湾 3.0% 10 京セラ 日本 2.7%
この状況は液晶パネルなどと同じである。
参考 2011/12/26 2011年 回顧と展望
Q-Cellsの2011年決算は以下の通り。 (単位:百万ユーロ)
2011 2010 2009 2008 2007 売上高 1,023.1 1,354.2 790.4 1,195.1 858.9 EBIT
(金利・税金
控除前損益)-717.4 82.3 -362.5 191.8 197.0 純損益 -845.8 18.9 -1,342.9 177.3 148.4
生産・販売状況 (単位:MWp)
2011 2010 生産量 Solar cells 717 939 Thin-film Modules 66 75 合計 783 1,014 出荷量 Solar cells 319 612 Thin-film Modules 58 36 Crystalline Modules 150 157 Systems 259 120
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