野田首相と枝野経済産業相、藤村官房長官、細野原発事故担当大臣は4月6日、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(新基準)を正式決定した。
http://www.meti.go.jp/topic/data/120406-11.pdf
政府は関西電力大飯原発3、4号機が基準1,2 を満たすか検証するよう原子力安全・保安院と関電に指示した。
関西電力に対しては、基準3 を踏まえた安全対策の実施計画を示す工程表の提出を要請した。関電は新基準を念頭に入れた安全対策の実施計画を9日にも提出する。
付記
関西電力は4月9日、大飯発電所3、4号機のさらなる安全性・信頼性向上のための対策の実施状況と実施計画を取りまとめ、経済産業大臣に報告した。
「大飯発電所3、4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画(概要)」
週明け以降の会合で、工程表の内容を確認した上で安全性を検証、福井県知事らに説明し、再稼働を要請する。
この後、地元理解を得られているかどうかを政治判断し、再稼働を決める。
* 地元の範囲は不透明
* 官房長官は地元同意について、「法律などの枠組みで義務付けられているわけではない」と述べている。付記
野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断した。
これを受けて、枝野幸男経済産業相は14日にも福井県を訪問し、再稼働を要請する。この日の会合では、関電が実施済み及び計画している安全対策が暫定的な安全基準を満たしていることを最終的に確認した。そのうえで、原発が1基も再稼働せずに一昨年並みの猛暑を迎えた場合、関電管内で約2割の電力不足になるといった電力需給見通しなどを踏まえ、再稼働する必要性を認めた。
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新基準設定に当たり、福島原発事故について、以下の「基本的理解」を行っている。
(1) 事故の原因と事象の進展
○地震の影響
・「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」の安全機能は正常に働いた。
・外部からの受電系統7回線の全てが、地震による電気設備の損傷等で受電できない「外部電源喪失」状態に。
○津波や浸水という共通要因による機能喪失
・津波の来襲により、海側に設置されていた冷却用のポンプ類が全て機能喪失した。
・非常用ディーゼル発電機、配電盤、蓄電池等の電気設備の多くは、建屋の浸水により機能を失った。
・生き残った冷却機能のうち、非常用復水器(1号機)は直流電源の喪失で十分機能せず。
原子炉隔離時冷却系(2号機)、原子炉隔離時冷却系と高圧注水系(3号機)は水位が維持されていたが、
電源喪失及び空気弁の開操作困難等により適切に減圧し低圧の代替注水に移行することができなかった。
・その結果、水位の低下により炉心が露出し、ついには炉心損傷・溶融に至った。
・原子炉建屋内に水素が滞留したことにより、1、3、4号機の原子炉建屋で水素爆発が発生した。
○迅速・的確な事故対応のための環境
・地震及び津波による電源喪失で、中央操作室における計測機器等が全て機能喪失し、
プラントの状況監視や電動弁の制御等が出来なくなった。
コミュニケーション・ツールの確保や情報の収集が迅速にできなかった。
○使用済燃料プール
・電源喪失や水素爆発の影響で、使用済燃料プールへの注水・冷却機能を喪失した。
(2) 地震及び高経年化の影響
安全上重要な機能を有する主要設備については、基本的には安全機能を保持できる状態にあったと推定。
・原子炉圧力容器・格納容器・重要な配管類が、地震で破壊されたのではないかとの指摘もあるが、
そうした事実は確認できていない。
基本的な安全機能を損なう地震の被害があったことを示す知見は得られていない。
・高経年化による劣化事象の影響について評価したが、これは考え難い。
原発再起動にあたっての安全性の判断基準として3つの基準を決めた。
(各項目の最後の「対策」は下記の「30の安全対策」参照)
基準1 地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防ぐ安全対策がすでに講じられていること。
① 所内電源設備対策の実施
1) 全交流電源喪失時にも電源供給可能な電源車等を配備 対策5,6,7,10
2) 直流電源は、津波の影響を受けないよう浸水対策を行う 対策6
3) 電源車等による給電が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施 対策5,7,8,10
② 冷却・注水設備対策の実施
4) 全交流電源喪失時の冷却・注水のため、最終ヒートシンクの多様性を確保 対策16,17
5) 全交流電源喪失時の冷却・注水機能維持のための機器への浸水対策 対策13
6) 震災時に給水が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施 対策12
7) 給水のための消防車・ポンプ車の確保 対策13,16,17
8) 消防車、ポンプ車等用に必要な燃料の外部からの調達可能な仕組み 対策16,17
③ 格納容器破損対策等の実施
9) 低圧代替注水への移行を確実に行うための手順・体制構築、訓練 対策20
10) ベントの実施の手順・体制構築、訓練(BWR のみ) 対策21
11) ベント弁等に空気駆動弁が用いられている場合、ベントを可能とすること。(BWR のみ) 対策21
④ 管理・計装設備対策の実施
12) 全交流電源喪失時に、中央制御室の非常用換気空調系設備(再循環系)を運転可能に 対策25
13) 全交流電源喪失時における確実な発電所構内の通信手段を確保 対策26
14) 全交流電源喪失時においても、計装設備を使用可能とすること。 対策28
15) 高線量対応防護服、個人線量計等の資機材を確保、要員拡充 対策30
16) 津波等により生じたがれきを迅速に撤去 対策30
大飯原発では、昨年3月末に原子力安全・保安院が電力各社に指示した「緊急安全対策」で既にほぼ実施済み。
基準2 | |
ー | 「福島第1原発を襲ったような地震・津波が来襲しても、炉心と使用済み燃料ピット・使用済み燃料プールの冷却を継続し、同原発事故のような燃料損傷には至らないこと」を国が確認していること。
津波については、15mの津波、あるいは、各発電所の想定津波高さより9.5m以上の高さの津波に耐えられること。 |
大飯原発ではストレステスト(耐性調査)で確認済。
2012/3/26 原子力安全委員会、大飯原発のストレステスト 1次評価を確認
基準3 | |
ー | さらなる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること。 事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施する事業姿勢が明確になっていること。
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①原子力安全・保安院がストレステストの審査で一層の取り組みを求めた事項
②保安院が「東電福島原発事故の技術的知見」で示した30の安全対策
(1) 地震などによる長時間の外部電源喪失を防ぐための対策 (対策1~4)
(2) 所内電源の機能喪失を防ぎ、非常用電源を強化する所内電気設備対策 (対策5~11)
(3) 冷却注水機能の喪失を防ぐ設備対策 (対策12~17)
(4) 格納容器の早期破損や放射性物質の非管理放出を防ぐ格納容器破損・水素爆発対策 (対策18~24)
(5) 状態把握・プラント管理機能の抜本的強化のための管理・計装設備対策 (対策25~30)
大飯原発の対策予定時期は以下の通りで、関電は前倒しを検討する。
外部電源の多重接続(2014年度)
防波壁の5mから8mへのかさ上げ(2013年12月)
緊急時の免震棟(2016年度) →2015年度に繰り上げ
内線電話の交換機などの高台移設(2016年度)
フィルター付きベント設備の設置(中長期)→2015年度完成
発電所へのアクセス道路の整備(中長期)
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東京電力福島第一原発事故の技術的知見から得られた30の対策(保安院)
〇外部電源対策 | 対策1 外部電源系統の信頼性向上 |
対策2 変電所設備の耐震性向上 | |
対策3 開閉所設備の耐震性向上 | |
対策4 外部電源設備の迅速な復旧 | |
①所内電気設備対策 | 対策5 所内電気設備の位置的な分散 |
対策6 浸水対策の強化 | |
対策7 非常用交流電源の多重性と多様性の強化 | |
対策8 非常用直流電源の強化 | |
対策9 個別専用電源の設置 | |
対策10 外部からの給電の容易化 | |
対策11 電気設備関係予備品の備蓄 | |
②冷却・注水設備対策 | 対策12 事故時の判断能力の向上 |
対策13 冷却設備の耐浸水性確保・位置的分散 | |
対策14 事故後の最終ヒートシンクの強化 | |
対策15 隔離弁・SRVの動作確実性の向上 | |
対策16 代替注水機能の強化 | |
対策17 使用済燃料プールの冷却・給水機能の信頼性向上 | |
③格納容器破損 ・水素爆発対策 |
対策18 格納容器の除熱機能の多様化 |
対策19 格納容器トップヘッドフランジの過温破損防止対策 | |
対策20 低圧代替注入への確実な移行 | |
対策21 ベントの確実性・操作性の向上 | |
対策22 ベントによる外部環境への影響の低減 | |
対策23 ベント配管の独立性確保 | |
対策24 水素爆発の防止(濃度管理及び適切な放出) | |
④管理 ・計装設備対策 |
対策25 事故時の指揮所の確保・整備 |
対策26 事故時の通信機能確保 | |
対策27 事故時における計装設備の信頼性確保 | |
対策28 プラント状態の監視機能の強化 | |
対策29 事故時モニタリング機能の強化 | |
対策30 非常事態への対応体制の構築・訓練の実施 |
※ 19、20、24は主にBWRが対象
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