東ソーは4月9日、南陽事業所事故調査報告書を発表した。
4月3日に関係行政官庁へ提出、6日に受理された。
http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120409002.pdf
付記
東ソーは2012年6月13日、南陽事業所第二VCM製造施設爆発事故調査対策委員会の報告書を発表した。
http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120613001.pdf
事故は2011年11月13日に南陽事業所第二VCM製造施設で発生した。
2011/11/17 東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故
3時39分にオキシ反応工程の緊急放出弁誤作動で全開、プラントが全停止した。
その後、プラント点検のための液抜き作業等を行ったが、ガス漏れが起こり、15時24分に爆発した。
1名が死亡した。
事故の経緯と原因は以下の通り。
1)最初の緊急放出弁誤作動はバルブポジショナーのトルクモーターコイルの温度変化による接触不良
2)塩酸塔へのフィード組成の変動に気づかず、塩酸塔の塔内温度分布を適正に保てなかったために塩酸塔塔頂のHCL組成が異常となり、塩酸塔還流槽にVCMが多量に混入した。
3)1,1-EDC生成の異常反応の知識が無かったため、通常の停止操作に入った。
4)還流槽とタンク内に反応触媒となる塩化第二鉄が存在したことで、HCLとVCMによる1,1-EDCの生成反応(発熱反応)が進行し、温度・圧力が急上昇。
5)異常時の対応マニュアルが十分でなかった。
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報告書では以下の通り結論付けている。
本事故の要因は、オキシ反応工程のA系列での緊急放出弁の誤作動を発端に、プラント全体の大幅な緊急ロードダウンが発生し、その過程で塩酸塔の温度管理が適切ではなかったため、HCLの中にVCMを混入させたこと、HCLとVCMから1,1-EDCが生成する反応に対する知識が不足していたため、通常と同じ考えに基づいた各機器の停止処置操作を行ったこと、異常時の対応マニュアルが十分でなかったこと、等である。
最初のトラブルから爆発炎上に至るまで約12時間の長時間が経過しており、その間、幾度も災害を回避する機会があったと思われるが、充分な対処に至らず、重大な結果を引き起こした。
報告書では事故の再発防止対策として、ハード対応とソフト対応(マニュアル改定、教育等)を挙げているが、次の記載が気になる。
事業所の体質的な課題に関しては、再発防止策が浸透し、効果を上げるまでには相当の時間を要すると思われる。
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東ソーでは休止中の第一VCM、第三VCMプラントについてもプラント特性に合わせて同様の対策を取り、今回の調査報告書と同時に、両プラントの稼働再開に向け改善計画書を提出した。
これを受け、県と同市消防本部、経済産業省の中国四国産業保安監督部(広島市)は計画書の審査、確認のため、10日に現地で合同の立ち入り調査を行った。
東ソーでは改善策の実施後に報告書を提出し、第一プラントは5月上旬、第三は6月以降の稼働再開を目指している。
なお、ペースト塩ビは2011年12月後半に生産開始している。
事故が起きた第2号機は、撤去して新設となれば運転再開に1年以上かかる見通し。
付記
東ソーは5月9日、第一塩ビモノマープラント(年産能力:25万トン)が8日から稼動再開したと発表した。
東ソーは4月26日、第三塩ビモノマー(年産能力:40万トン)の運転再開が同日、当局から承認されたと発表した。27日から再稼働に向けた準備を開始する。東ソーは7月8日、第三塩ビモノマー(年産能力40万トン)が稼動を再開したと発表した。
東ソーの宇田川社長は7月12日、第一塩ビモノマー(55万トン)について、「再建するが、生産能力は元に戻さず年20~30万トンにする」と述べた。(日本経済新聞)
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