関西電力の電力需給予想

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野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、 大飯原発の安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断した。
これを受けて、枝野幸男経済産業相は14日に福井県を訪問し、再稼働を要請した。

この日の会合では、関電が実施済み及び計画している安全対策が 暫定的な安全基準を満たしていることを最終的に確認した。そのうえで、原発が1基も再稼働せずに一昨年並みの猛暑を迎えた場合、関電管内で約2割の電力不足になるといった電力需給見通しなどを踏まえ、再稼働する必要性を認めた。

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政府は4月8日、関西電力の管内のことし夏の電力需給について、最新の見通しをまとめた。

2010年猛暑並みの場合、19.6%の不足
去年を除く過去5年間の平均的な状況になった場合、17.2%の不足
2011年夏の実績( 家庭での節電や企業の土日操業)の場合でも7.6%の不足

これに対する疑問が呈されたことから、枝野経産相がやり直しを指示した結果、4月13日に修正案が提示された。

(1)関電
 ①火力: 積み増し困難。
   今夏、定期検査中の設備はなし。 
   長期停止火力(多奈川第二、宮津エネルギー研究所)は、立ち上げに相当程度の時間が必要。
 ②緊急設置電源: 積み増し困難。
   今夏に間に合うものは調達済
 ③一般水力: 11万kW増。
   今夏に補修を予定していた水力の補修の時期を先延ばし。この結果、全ての水力が稼働。
 ④揚水: 21万kW増
   夜間の電力融通の積み増し、水力発電の増等により積み上げ

(2)他電力からの融通: 現時点で昼間は積み増し困難。
  (より需要が見通せる将来時点であれば上積みはあり得る。)

(3)自家発電からの購入
  5万kWの積み上げにより、今夏は89万kWまで積み上げ。

関電管内の自家発(1000kw以上)は能力680万kwで、このうち自家消費や売電確定分を除くと130万kw。
今回、89万kwを折り込んだ。
残りは万一の場合のバックアップなど。

修正の結果、以下の通りとなる。

2010年猛暑並みの場合、18.4%の不足
去年を除く過去5年間の平均的な状況になった場合、16.0%の不足
2011年夏の実績( 家庭での節電や企業の土日操業)の場合でも5.5%の不足

詳細は下記参照。

関西電力の需給予想に対しては多くの疑問が出ている。

これを受け、政府は4月11日、各電力会社が申告している電力需給見通しを審査する有識者会議を新設する方針を決めた。
国家戦略室の「エネルギー・環境会議」に置き、4月中にも初会合を開く。
これまで政府の電力需給予測は電力会社の申請に基づいてまとめてきたが、第三者の評価を採り入れて予測の精度を高める。

今回はこれを待たず、上記の政府試算で判断した。

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各方面で出ている批判は以下の通り。

(需要)

原発がすべて停止したままの供給力2631万kwを、昨夏の実績が上回るのは昼間のピーク時間を中心にした計19時間で、全体のわずか0.9%。
ピーク時に節電すれば電気料金を割り引く仕組みを作ったり、反対にピーク時の電気料金を高く設定して使用を抑えれば、大規模停電などには至らないとの指摘もある。 (毎日新聞 4月14日)

需要サイドでは、様々な対策で200万Kw程度のピーク時の需要を落とすことができると見られている。
また、需給調整契約が88万Kw以上あると想定されている。(下記 河野太郎ブログ)

*基本料金を割り引く代わりに、ピーク時間帯の使用電力を削減できる契約

(自家発)

この供給力予測では、関電管内の自家発電の購入量を83(→89)万kwとしている。しかし、この数字は1000kw以上の発電容量のところからkwhあたり15円から20円という価格で購入するという前提でつくられている。

ISEPの試算では、関電管内で自家発電容量は700万kw以上あり、購入価格を例えば50円に引き上げれば相当量の掘り起こしが可能だとみている。さらに価格を引き上げれば1000kw以下の設備容量の自家発電も購入対象になりうる。

西日本全域で購入対象になり得る自家発電容量は2000万kwあり、さらに現在は購入対象にしていないガスコジェネの容量がそれに加わる。

河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり(4月13日) この夏関西の電力は足りるか

(融通)

中部電力、中国電力、四国電力の供給力余力は800万kw以上あると見込まれている。(同上)

(揚水発電)

能力の半分の稼働しかない。(昨年は原発の夜間電力が汲み上げに使用可能であった)
 ベース供給力減に伴う揚水汲み上げ電力不足としているが、夜間であれば火力をフル稼働すれば余力がある筈。

 

(火力発電)

八木関電社長は「休止中の火力発電所の立ち上げや、ガスタービン発電機の設置など供給力上積みに努めている」と述べているが、実態は違う。

宮津エネルギー研究所1、2号機、多奈川第2の1、2号機が長期休止中。
宮津市や京都府が宮津火力発電の再稼働を、また岬町が多奈川第2火力発電の再稼働をそれぞれ要望しているが、関電は「主要部品を替える必要があり、新設に近い金額がかかる」として再稼働に否定的な態度をとっている。

また和歌山県と和歌山市は、着工準備中の和歌山火力発電所(出力計370万kw)の早期着工を求めているが、関電は 原発が再稼働すれば過剰投資になる」として着手を見合わせている。

関電は 原発の再稼働を前提に供給計画を立てており、再稼働ができない場合の対策は最初から放棄している。それは、原発を動かさずに他の方式で発電すると燃料費などが「余分」にかかる=儲けが減るからだ。

週刊MDS 関電の「電力不足」はウソ 大飯原発再稼働へ向けての脅し

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関西電力 2012年8月 電力需給予想 (単位:万kw)
  http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/pdf/120413-1.pdf

  能力 2011夏
実績

2012/8見通し

2011夏
並み
2010猛暑
並み
過去5年
平均
需要   2,784 2,784 3,095 3,023
供給力
(除 原発)
4,079
(3,046)
2,947
(2,611)

2,631

2,525

2,540
過不足   163
(5.9%)
-153
(-5.5%)
-570
(-18.4%)
-483
(-16.0%)
           
原子力 977 337 0 0 0
火力 1,697 1,415 1,472 1,472 1,472
一般水力 331 225 203 203 203
揚水 488 448 312 206 221
太陽光 0 0.2 0.2 0.2
自社合計 3,494 2,425 1,987 1,881 1,896
他社一般 585 405 523 523 523
融通 0 118 121 121 121
他社合計 585 523 644 644 644
総合計 4,079 2,947 2,631 2,525 2,540
原発除く 3,046 2,611 2,631 2,525 2,540


供給内訳 (百万kw)

    能力 2011夏
実績
ケースA
2011夏
並み
ケースB
2010夏
並み
ケースC
5年平均
ケースB
(4/9提出)
原子力 美浜①-③ 166.6 50 - - -  
高浜①-③ 339.2 169.6 - - -  
大飯①-④ 471 117.5 - - -  
合計 977 337 0 0 0 0
火力 石炭 舞鶴①-② 180 180 180 180 180  
LNG 姫路第二④-⑥ 165 165 165 165 165  
姫路第一⑤-⑥ 144.2 124 127.5 127.5 127.5  
南港①-③ 180 180 180 180 180  
堺港①-⑤ 200 178.5 181.9 181.9 181.9  
石油 赤穂①-② 120 120 120 120 120  
相生①-③ 112.5 112.5 112.5 112.5 112.5  
宮津①-② 75 0 0 0 0  
多奈川第二①-② 120 0 0 0 0  
海南①-④ 210 165 210 210 210  
御坊①-③ 180 180 180 180 180  
ガス
タービン
関空①-② 4 0 3.2 3.2 3.2  
姫路第一①-② 6.6 0 2.2 2.2 2.2  
その他 火力増出力 - 10 10 10 10  
合計 1,697 1,415 1,472 1,472 1,472 1,472
水力 一般   331 225 203 203 203 193
揚水 喜撰山①-② 46.6 30 21.6 14.2 15.4  
奥多々良木①-⑥ 193.2 181.4 124.2 82 88  
奥吉野①-⑥ 120.6 120 82.2 54.6 58.2  
大河内①-④ 128 116.2 84 55.2 59.4  
小計 488 448 312 206 221 185
合計 819 673 515 409 424 378
太陽光 堺太陽光 1 0 0.2 0.2 0.2  
自社合計 3,494 2,425 1,987 1,881 1,896 1,850
原子力 原電敦賀 56 0 0 0 0 0
火力 卸電気 電源開発* 260 77.8 155.5 155.5 155.5  
IPP
共同火力*

 

新日鉄広畑 13 13.3 13.3 13.3 13.3  
神戸製鋼神戸①-② 134 131.8 131.8 131.8 131.8  
神戸製鋼加古川 6 5.4 5.5 5.5 5.5  
ガス&パワー 15 14 13.6 13.6 13.6  
中山共同発電 14 14 13.6 13.6 13.6  
和歌山共同火力①-③ 30.6 14.5 14.5 14.5 14.5  
JX 麻里布 13 13.2 13.2 13.2 13.2  
自家発   - 55.3 89.1 89.1 89.1 83.9
合計 (486)
452
339 451 451 451 445
水力 一般   54 48 51 51 51  
揚水 電源開発* (35)
18
17.5 16.4 16.4 16.4  
合計   72 66 67 67 67 67
太陽光   4.5 0 4.5 4.5 4.5 4.5
融通 中部電力     70 70 70  
北陸電力   0.5 3 3 3  
中国電力   71.9 37 37 37  
四国電力   34        
その他   11.2 11.4 11.4 11.4  
合計 - 118 121 121 121 121
他社合計 585 523 644 644 644 638
総合計 4,079 2,947 2,631 2,525 2,540 2,488
同上(原発除く) 3,046 2,611 2,631 2,525 2,540 2,488


他社の*印は総能力で、関電の受け入れはその一部。

 



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コメント(2)

何か話しがずれてしまってきている気がします。
すでにこの問題はピーク時の電力不足(設備の不足)という問題ではなくなっていて、燃料代の負担に経営的に耐えられなくなってきているという問題に変わっていると思います。

要するに、「停電するかしないか」ではなく、「電気料金が大幅に上がるか上がらないか」という問題でしょう。

ですから、「停電は起こらない」といって関電を批判しても意味はなく、「でしたら電気料金を上げますけどいいですか?」と返されるだけでしょう。

だれに責任があるにせよ原発を止めれば確実に発電コストは嵩むわけで、電力会社の体力が尽きれば購入者に転嫁するしかありません。

チェルノブイリでは同じ敷地内で被災を免れた原発の再稼働までやったわけで(日本で言えば福島第一の五、六号機を動かすようなもの)、安全とは言えないが経済が持たないので動かす、というところに追い込まれつつあるのがいまの日本ではないかと。

いま起こっているのはオイルショック後のエネルギー政策の完全破綻という、バブル崩壊に匹敵ないし、上回るような破綻なのであり、「良い」選択肢は存在せず、「悪い」「とても悪い」「致命的に悪い」という選択肢しか存在しないのではないかと思います。

政府の対応もおかしいと思います。

現在の説明は、
①とりあえずは安全
②電力が不足
だから、原発を動かすとなっています。

コストを問わなければ電力は確保できるなら、
国民に求めるべき選択は、
①問題はあるが、電気代を上げないために原発を動かすか、
②原発をやめる、その結果として電気代はあがる
とすべきでしょう。

コストに関係なく、電力を確保できなければ、
①停電をしないために、原発を動かすか
②原発は動かさず、停電も覚悟
とすべきでしょう。

はっきり説明すれば、おそらく、かなりの人が原発停止に賛成すると思います。

現状を明確にしないのが問題と思います。
今の政府及び関電の説明は、原発を動かすための説明のように見えます。

政府の説明は、停電とコストアップを避けたい財界の意向を受けてのものでしょう。

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