中国人民銀行(中央銀行)は4月14日、人民元の米ドルに対する変動幅を1日につき上下 0.5%から1.0%に拡大すると発表した。4月16日から実施する。
人民銀は声明で「為替市場が成熟し、取引参加者の価格決定やリスク管理の能力が向上している」と強調。「市場の発展に応じ、(人民元の)弾力性を高める」と変動幅拡大の理由を説明した。
温家宝首相は3月に、「人民元制度の改善を続け、上下両方向に変動が大きくなるようにする」と述べていた。
変動幅の拡大は、2007年5月にそれまでの0.3%を0.5%に引き上げて以来。
中国は2005年7月に2.1%の切り上げをして以来、管理フロート制をとっている。途中、2008年7月から2010年6月まで金融危機に対応してレートをほぼ固定した。
変動幅を1%に変更した初日の4月16日の中間値は6.2960人民元/ドル、終値は6.3150人民元で、中間値からは0.3%の乖離に止まった。なお、弾力化前からは8.1%の値上がりとなった。
米財務省は4月13日に、半期に一度の為替報告書の議会提出を期限の4月15日から当面先送りすると発表した。中国から人民元の変動幅を拡大するとの事前連絡を受けて決めた可能性が高い。
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米国は人民元の切り上げを強く要求しているが、中国の陳徳銘商務相が雑誌「新世紀」で「人民元高は(輸出)企業の経営を圧迫する」と述べるなど、変動幅の拡大による悪影響を懸念する声は根強い。
しかし、貿易黒字の縮小傾向が顕著となるなど(2月には貿易収支は大幅赤字になった)、輸出入が均衡しつつあることで、人民元の上昇圧力は著しく弱まっている。
また、1~3月期の実質成長率は8.1%に沈み、5四半期連続の減速を示した。
市場では「4~6月期は貿易赤字に転落する可能性があり、足元は元高ではなく元安圧力が強くなるのではないか」との見方も浮上している。
「変動幅を拡大しても過度の元高圧力をもたらすことはない」との判断も働いた模様。
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