関西電力大飯原発の再稼働をめぐり、橋下大阪市長と松井大阪府知事は4月24日、首相官邸で藤村修官房長官と会談した。
橋下氏らは再稼働の条件とする8項目の提言を提出し、慎重な判断を求めた。
8項目の提案は以下の通り。
・ 原発から100キロ圏内の都道府県と安全協定を締結できる仕組みを構築する
・ 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現に取り組む(下記参照)
・ 国民が信頼できる規制機関として、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立する(下記参照)
・ 新体制のもとで安全基準を根本から作り直す
・ 新たな安全基準に基づいた完全な安全評価(ストレステスト)の実施
・ 重大な原発事故に対応できる防災基本計画と危機管理体制の構築
・ 電力需給の徹底的検証と結果の開示(下記参照)
・ 事故収束と損害賠償など原発事故で生じるリスクに対応できる仕組みの構築
藤村長官は「8項目の提案については、将来的には考えるべきことで、今回の手続きは進めていきたい」と述べた。
橋下市長は記者団に対し、再稼働に関する政府の姿勢を以下のように批判した。
政権は安全宣言をしたが、これは安全を確認したわけではなく、国民はだまされてはいけない。
今回は政権みずからが考えた手続きで進めているだけであり、科学者や原子力安全委員会のチェックがないまま、政権が政治家の作った手続きをそのまま進めているだけで安全かどうかは分からない。
これは国家の重大な危機だ。藤村官房長官は「いまの手続きは変えられない」と言っていたが、それを変えるのが政治主導ではないか。
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滋賀県の嘉田知事と京都府の山田知事は4月17日、政府に対し「脱原発依存」の工程表を示すことなどを求める共同提言を発表した。「国民的理解のための原発政策への提言」と題して下記7項目を掲げた。
1.原子力規制庁の早期設置や電力の需給状況を点検する第三者委員会の設置
2.福島原発事故の徹底した解明と公表、電力需給状況に係る資料の完全な公開
3.免震事務棟、防潮堤などの恒久的な対策ができていない段階における安全性の説明
4.事故調査が終わらない段階において稼働するだけの緊急性の証明
5.脱原発依存の実現の工程表明示と、核燃料サイクルの見通し
6.事故を想定したオフサイトセンターの整備やマックス2、スピーディなどのシステムの整備と
それに伴う避難体制の確立
7.福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮
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民主党原発事故収束対策PTは4月10日、原発再稼働問題に関する緊急提言(「原子炉の安全」から「人々の安全」へ)を発表し、5条件をあげた。
1、「国会事故調」並びに「政府事故調」の報告による事故原因の究明・解析
2、「原子力規制庁法案等」の成立、新規制組織、法律、マニュアル等の策定
3、 改正原子力災害対策特別措置法に基く地域防災計画の策定
4、「免震重要棟」(「最後の砦」)の設置
5、「ベント管の設置」あるいは「放射性物質を除去するためのフィルター設置」
福島第1原発事故で災害時の指揮拠点となる免震事務棟の重要性が確認された。=「最後の砦」
大飯原発では免震事務棟の完成時期は2015年度である。(当初より1年前倒し)
原子炉内の圧力を下げるための排気(ベント)設備に放射性物質を取り除くためのフィルターを取り付ける工事も2015年度に完了する。
津波対策の防潮堤のかさ上げは、従来通り2013年度の完成を見込む。
政府はそれまでに大きな地震はないと断言できるのだろうか。
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使用済み核燃料処理について
河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり(2011/5/31) 使用済核燃料で原発が止まる
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「三条委員会の規制庁」について
現在の原子力安全庁の案は下記の通りで、環境省の外局と位置付けられている。
提案では、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立するとしている。
自民党もこれと同じで、独立性の高い3条委員会として「原子力規制委員会」を環境省に置き、その下に規制庁を置くとしている。独立性担保のため、規制委の人事は、環境省から切り離して国会同意人事とし、規制庁の人事は規制委が行うとしている。
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「電力需給の徹底的検証と結果の開示」について
政府は4月23日、今夏の電力需要や供給能力を精査する「需給検証委員会」の初会合を開いた。
電力9社(沖縄を除く)が提出した需給見通しによると、原発が再稼働せず2010年夏並みの猛暑となった場合、全国で0.4%の電力不足が生じる見通しで、関西電力の不足は16.3%に上る。
同委員会は各社の試算を詳細に検討し、5月中旬に最終的な需給見通しを確定する予定。
原発稼働をゼロと想定した電力9社の8月の需給見通し
電力会社 供給力 最大需要 需給
過不足予備率 北海道 485 500 -16 -3.1 東北 1,475 1,434 41 2.9 東京 5,771 5,520 251 4.5 中部 2,785 2,648 137 5.2 関西 2,535 3,030 -495 -16.3 北陸 578 558 20 3.6 中国 1,235 1,182 53 4.5 四国 587 585 2 0.3 九州 1,574 1,634 -60 -3.7 合計 17,025 17,091 -67 -0.4 単位:万キロワット。最大需要は2010年夏並みの猛暑を想定。
野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、大飯原発の安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断したが、その際の電力需給見通しは以下の通り。
2012/8見通し 含地熱 5 今回の関西電力の見通しでは、供給力は2,535となっており、上表の2010年猛暑並みケースに近い。
能力
2011夏
実績
4/23
需給検証
委員会
2011夏
並み2010猛暑
並み過去5年
平均
需要
2,784
2,784
3,095
3,023
供給力
(除 原発)4,079
(3,046)2,947
(2,611)
2,631
2,525
2,540
過不足
163
(5.9%)
-153
(-5.5%)
-570
(-18.4%)
-483
(-16.0%)
原子力
977
337
0
0
0
0
火力
1,697
1,415
1,472
1,472
1,472
他社込み
1,923
一般水力
331
225
203
203
203
254
揚水
488
448
312
206
221
232
太陽光
1
0
0.2
0.2
0.2
自社合計
3,494
2,425
1,987
1,881
1,896
他社一般
585
405
523
523
523
融通
0
118
121
121
121
121
他社合計
585
523
644
644
644
総合計
4,079
2,947
2,631
2,525
2,540
2,535
原発除く
3,046
2,611
2,631
2,525
2,540
これには需要面(需給調整契約など)や揚水発電や融通量など、いろいろの問題点がある。
(東電からも周波数変換により 100万kwまでの送電は可能)
また、常時これだけが不足するのではなく、ピーク時の短時間だけであり、それを回避する方法を考えればよい。
2012/4/16 関西電力の電力需給予想
「需給検証委員会」での十分な検証が期待される。
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