国際商工会議所の国際仲裁裁判所は5月24日、Dow とKuwait国営のPetrochemical Industries Company (PIC) との間のK-Dow Petrochemical に関する調停結果を発表した。
PICがK-Dow Petrochemical 設立の契約を破棄したため、Dowが損害を被ったとして訴訟を行い、最終的に調停を求めることとしたもの。
仲裁裁判所はPIC側に責めがあると認定し、PICに対しDowへの21.6億ドルの損害賠償支払いを命じた。金利と費用はこれに追加される。
ダウとPICは調停結果に従うことを決めており、これが最終となる。
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Dowは2007年12月13日、Kuwait国営石化会社 PIC との間で50/50のグローバルな石化JV K-Dow Petrochemical を設立すると発表した。
DowのPE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミン などの事業を移管するもので、Dowは事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。
2007/12/14 速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立
一方、ダウ は2008年7月10日、188億ドルでRohm
and Haas (R&H)を買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。
2008/7/11 速報 Dow Chemical、Rohm and Haas を買収
Dow はR&H 買収資金の188億ドルを、つなぎ融資 130億ドル、Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルで賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。
これにより、ダウの変身戦略が成功し、価格変動の影響を受ける石油化学をAsset-light 方式で全てJV化するとともに、R&H 買収でスペシャルティ分野の強化が出来る筈であった。
しかし、2009年1月1日のスタートを目前にして、2008年12月28日、K-Dow Petrochemicals が破談となり、この金が入らなくなった。
2008/12/29 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談に
2009年1月23日、ダウはR&H との統合でFTCの承認を得たと発表した。
2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認
契約ではすべての条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっており、1月27日が期限となる。
しかし、つなぎ融資は1年間の契約のため、 Dowとしては資金繰りの目処をつけるまでは買収を行えない状況に陥り、R&Hに訴えられた。
その後、Dowはこれまでと異なる条件で4月1日までに買収を行うことで合意した。
つなぎ融資の額を減らすとともに、融資期限の延長により、その間に有利な事業売却を検討できることとなった。
2009/3/10 ダウ、Rohm & Haas 買収で合意
また、Dowは史上初の減配を行い、年間10億ドルの資金を節約した。
2009/2/23 Dow
Chemical、史上初の減配
Dowは2009年4月1日、Rohm & Haas(R&H)の買収を完了したと発表した。
2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了
Dowはその後、つなぎ融資返済のため、多くの手を打ってきた。
- 60億ドルの新規長期ローン
- 22.5億ドルの増資
- 30億ドルの永久優先株の回収
- R&H子会社のMorton Salt 売却(17億ドル )
- 塩化カルシウム事業のOccidental Petroleumへの売却(210百万ドル)
- Total とのJVのTotal Raffinaderij Nederland N.V. のTotal への売却(725百万ドル)
- マレーシアのOptimal 売却(660百万ドル )
- Powder Coatings 事業のAkzo Nobel への売却
- 投資会社Bain Capital Partnersへのスタイロン事業売却(16.3億ドル )
Dowはこれらにより資金問題を解決、現在では配当も増やしている。(四半期配当)
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