Shintechは4月30日、ルイジアナ州知事の同席のもと、信越化学の子会社(Shintechの姉妹会社)のSE
Tylose がルイジアナ州PlaquemineのShintech敷地(約900万坪)でヒドロキシエチルセルロース(HEC)を製造すると発表した。
(信越化学も5月1日に発表した)
能力は年産9千トンで、投資額は120百万ドル。年末には着工し、2014年初めの操業開始を予定している。
HECは、セルロース誘導体の一種で、主に水溶性ペイントに使用され、粘度の調節、着色剤の沈殿防止、接着力の向上などで優れた効果がある。
HECの需要は堅調な伸びが期待されているが、Shintechが所有する工業用地の一画を利用できることにより、将来の増設も見据えた事業展開が可能であることが、米国で新工場を建設する決め手となった。
SE Tylose は信越化学が2004年1月にスイスのClariant(1955年にSandozの化学品部門がスピンオフしたもの)からセルロース部門を買収したもので、Shin-Etsu International Europe の100%子会社とした。
同社は医薬用、建築材料用、工業用のメチルセルロース(MC)と塗料用のHECを生産している。
信越化学による買収時には能力はMCが27千トン、HECが10千トンであったが、2006年にMCを40千トンに増強した。
その後更に、MCを50千トンに、HECを16千トンに増強している。
2006/10/10 信越化学、ヨーロッパのメチルセルロース能力増強完了
なお、信越化学は直江津でMCを生産している。
信越グループのセルロース誘導体の能力は下記の通りとなる。
MC HEC 信越化学 直江津工場 (20千トン→23千トン→) 20千トン ー
SE Tylose ドイツ (27千トン→40千トン→) 50千トン
(10千トン→) 16千トン
米国 ー 9千トン 合計 (47千トン→63千トン→)70千トン (10千トン→16千トン→) 25千トン
HECの増設の結果、信越化学は米Ashlandに次ぐ世界第2位のHECメーカーになる。
Ashlandは2010年11月に南京市に10千トンプラントを完成させた。20千トンへの増強が可能。
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MCについては信越化学は2005-06年に200億円をかけて日独で増強をおこない、直江津工場の生産能力を年産20千トンから23千トンに増強、ドイツの能力を27千トンから40千トンに増強して、合計能力を63千トンとした。
この時点で、これまでの首位の米Dow Chemical(約45千トン)を抜き世界第1位の座を確固たるものとした。
しかし、Dow Chemicalは2007年にBayerから主にセルロース事業を行っているWolff Walsrode business group を買収、同社のWater Soluble Polymers businessと統合し、Dow Wolff Cellulosics とした。
(Wolffに関しては信越化学も買収に乗り出していたとされる)Dow Wolff Cellulosicsは2009年2月にドイツBitterfeldに新しい工場を建設した。
更にDowは2011年12月に、アジアでの増設の意向を明らかにしている。
2007年3月に直江津のMCプラントで爆発事故が発生した。
医薬品(医薬品錠剤を固める結合材やコーティングなどに使用)向けは信越化学が国内シェアの約9割を握っており、SE
Tyloseでは医薬品向けは生産していないため、需要家に混乱を生じた。
2007/4/16 信越化学 爆発事故のその後
直江津能力は現在20千トンに減っているが、これは事故に伴うもの。
但し、医薬用は2008年10月に増産した。
ドイツでは2008年に医薬用を4千トン、建材用を6千トン、合計10千トンの増設を行った。
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