タイの合成ゴム工場で爆発事故

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タイのMap Ta Phut 工業団地にある合成ゴムメーカー、BST Elastomersの工場で5月5日、トルエンタンクが爆発して火災が起こり、11人が死亡、140人以上が重軽傷を負った。

工場はグレード変更のために停止中で、水分を除くためトルエンで設備を洗っていた。爆発の原因は不明。

すぐ近くにIndoramaの年産70万トンのPTAプラントなどがあるが、これらは稼働を続けている。

BST Elastomersはタイの化学メーカー
Bangkok Synthetics (BST)の子会社。

BST本体は以下の製品を生産している。
  ブタジエン 140千トン
  MTBE       55千トン
  ブテン-1     35千トンなど

BST Elastomersは1996年に下記各社による合弁会社として設立された。

BST 60%、タイ企業 8%
JSR 14%、日本ゼオン 12%、三井物産 3%、伊藤忠商事 3%  

JSR(Ni触媒)とゼオン(Ni触媒)の技術によるブタジエンゴム(4万トン)とJSR技術(エマルジョン重合)によるSBR(6万トン)プラントを建設、1998年に商業運転を開始した。

製品の主な販売先は、タイ国内外のタイヤ、PS樹脂、工業用品、履き物メーカーで、タイ国内の販売はBST Elastomersが行い、輸出はJSRとゼオンが支援、協力した。

その後JVを解消し、現在はBSTの子会社となっている。
現在の能力はBRが5万トン、SBRが7万トン。

タイでは他に宇部興産がJVでBRを生産している。

会社名Thai Synthetic Rubbers
設立  :1995/11
出資  :宇部興産 73.1%、丸紅 13.0%、TSRC(台湾) 13.0%ほか

能力  :当初 50千トン、2006年の増設後 72千トン

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JSRはこのJVからは離脱したが、別途2011年6月にBSTとS-SBRの製造のJVを設立した。

会社名JSR BST Elastomer Co., Ltd.
工場 :
Map Ta Phut  
出資  :
JSR 51%
     BST 49%  
能力  :S-SBR 第一期 50千トン (2015年に 100千トンに)

2012年3月に起工式を行った。2013年6月稼働予定としている。

S-SBRはエコタイヤと呼ばれる低燃費タイヤ向けへの需要が世界的に急拡大しており、JSRでは2011年12月に四日市工場で25千トンの増強を完了し、60千トンに生産能力を拡大している。

  
2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ

建設中のこのプラントは事故現場とは2キロメートル離れており、直接の影響はない。
JSRではBSTからの要請があれば、個別に検討し可能な限りの支援を行っていく予定としている。

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Map Ta Phut 工業団地では、急激な重工業化にともない、住民たちが十数年前から大気や水汚染による環境・健康被害を訴えてきた。1990年代末には悪臭騒ぎで学校が避難・休校となり(数年後に移転)、「マプタプット公害問題」が全国でも知られるようになった。

タイ中央行政裁判所は2009年9月、同国東部のRayongMap Ta Phut地区で計画されている石油化学などの76事業について、健康影響アセスメントと公聴会が行われなかったのは違憲という訴えの最終判決を下すまで一時凍結するようタイ政府に命じた。

2009/12/4 タイ最高行政裁判所、マプタプットの石化計画などの凍結を継続

その後、ほとんどの計画が認められたが、住民の不満は強い。

2010/9/24 タイマプタプットで抗議集会開催か

今回の爆発事故を受け、住民の反応は厳しく、工場の再開を認めるべきではないとの声も出ている。

 

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