ギリシャ、再び混迷

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ギリシャ議会の総選挙は5月6日に投票が実施された。

最大与党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首(前財務相)は総選挙の前の最後の演説で、選挙の結果次第ではギリシャがユーロ圏離脱を余儀なくされる恐れがあると訴え、有権者の支持を仰いだ。
「ギリシャ国民は6日、運命の岐路に立つ。ギリシャが欧州、かつユーロ圏にとどまるのか、もしくは国家を破たんさせ、国民を深刻な貧困に陥れるかは、6日に決定される」と述べた。

しかし、EU/IMFの支援を受けるために数々の緊縮策を打ち出してきた連立与党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の2党が300議席中149議席で、過半数を獲得できなかった。

逆に、緊縮策のゼロからの見直しを求める急進左派連合(SYRIZA)が反緊縮世論の支持を追い風に第二党に躍り出た。

SYRIZAは共産党から分裂した左派小集団が2004年に選挙対策で寄り集まったもの。チプラス党首は行政・外交・経済の実務経験は皆無。「債務を検査し直し、EUと合意を結び直す」とするが、具体的な修正点は不明。
 「無責任で大衆迎合的」と批判されている。

選挙結果は以下の通り。

ギリシャの総選挙では第一党には50議席のボーナス議席が与えられる。

  選挙前 今回 増減   
全ギリシャ社会主義運動(PASOK) 160
(50+110)
41  -119
(-69)
緊縮推進

EUとの合意支持

新民主主義党(ND) 82 108
(50+58)
28
(-30)
(連立与党) (242) (149) (93)
急進左翼連合(SYRIZA) 13 52 39 反緊縮

EUとの合意反対

 

独立ギリシャ人 0 33 33
ギリシャ共産党 21 26 5
黄金の夜明け 0 21 21
民主的左翼 0 19 19
正教民衆集会 15 0 -15
合計 291 300 9  

独立ギリシャ人:新民主主義党(ND)の議員が『反緊縮財政策』を掲げて2012年2月に立ち上げた。

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2011年秋、ギリシャではユーロ圏各国がまとめた支援策の前提条件の改革案に反発、ストが相次いだ。

この時の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)内閣のパパンドレウ首相は当初、国民投票を行う意向を表明した。
最終的にはEUとの協議の後、11月3日に緊急閣議を開き、国民投票を撤回する意向を明らかにした。

しかし、ギリシャの政治的、社会的、経済的混乱は続き、パパンドレウ首相は新たな連立内閣が1300億ユーロの支援策を議会通過させ、財政破綻を避けるよう呼び掛け、自身は首相を辞任する可能性を示唆した。

これを受け、議会は11月5日、内閣に対する信任案を賛成多数で可決した。首相の退陣示唆を受け、与党内で内閣信任に反対していた議員らも賛成に回った。

2009年に全ギリシャ社会主義運動が政権党の新民主主義党を破り、パパンドレウが首相となった。
パパンドレウ首相が前政権の粉飾を明らかにしたのが、ギリシャ危機のきっかけとなった

11月6日に首相辞任と引き換えに、中道右派の最大野党・新民主主義党(ND)が連立政権発足に協力することで与野党が基本合意、11月9日に大連立内閣が誕生し、欧州中央銀行のパパデモス前副総裁が新首相に指名された。

EUは第二次支援を1300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとし、ギリシャにそのため 、「財政緊縮関連法案の議会承認」、「財政緊縮策実行の誓約書」「歳出削減策の具体化」の3条件を科した。    
第二の条件の「緊縮策実行の誓約書」は連立内閣の与党の全ギリシャ社会主義運動のパパンドレウ党首と、新民主主義党のサマラス党首がサインした。

2012/2/23 ギリシャ第二次支援決定 

連立内閣は当初、2012年2月に総選挙を予定していたが、国債の交換完了を優先させるため、5月に延ばした。

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選挙結果を受け、パプリアス大統領は5月6日、第1党になった与党の新民主主義党(ND)に組閣を要請した。(第二党、第三党に順に要請する)

新民主主義党(ND)は極右政党「黄金の夜明け」を除く全党と連立協議を行ったが、5月7日、組閣を断念した。

全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は連立入りに前向きな姿勢を示したが、左派政党の政権参加を条件にした。
急進左派連合(SYRIZA)や民主左派党は連立入りを拒否し、右派新党の「独立ギリシャ人」や共産党は協議自体を拒否した 。

次いで、第2党へと躍り出た急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・チプラス党首も9日、各党との連立協議を断念すると発表した。

共産党と民主左派党との協議が決裂した。

第3党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首も11日、連立交渉が失敗したことを明らかにした。

ベニゼロス氏は
①EUとユー口圏に残留する
②EU・IMFと合意した財政緊縮策を段階的に解消することを目標に、2014年までの財政再建を目指す
とした「挙国一致政権」構想を急進左派連合(SYRIZA)に持ちかけ、参加を求めた。

だが、SYRIZAのチブラス氏は「民意に反して緊縮策を継続するための政権であり、参加できない」と拒否した。
「緊縮策の廃止という自分たちの選挙公約は変わらない。新民主主義党や全ギリシャ社会主義運動のように緊縮策を推進しておきながら選挙で負けたら『修正に応じる』と態度を変えるようなことはできない」と述べている。

これを受け、パプリアス大統領は13日夜、連立政権発足の成否の鍵を握る穏健派政党、民主的左派のクベリス党首と会談したが、調停は不調に終わった。

パプリアス大統領は14日に議会第1~3党の党首とクベリス氏を大統領官邸に招いて、連立政権発足に向けた最後の調停を試みる。
調停が成立しない場合、6月10日か17日に再選挙が実施される。

最新の世論調査では、緊縮策のゼロからの見直しを求めるSYRIZAが第1党に躍進する一方、旧2大政党は現議会勢力をさらに減らすとの予想が出ている。

ギリシャは6月末に追加歳出削減策の策定期限を迎えるが、SYRIZAは緊縮策反対の左派連立政権樹立を目指しており、政権を取れば、緊縮策の廃止、銀行の国有化、賃金・年金カットの取り消しなどの政策を実施する方針 。

付記

その後、大統領による調整は失敗、再選挙を6月17日に行うこととなり、ピクラメノス憲法裁判所長官が16日に選挙管理内閣の首相に就任した。

 

EUのファンロンパイ大統領と欧州委員会のバローゾ委員長はギリシャの各政党の党首に対し、ギリシャがユーロ圏にとどまりたい場合、EUなどから受けた支援の条件を遵守する必要があると電話で伝え た。
ドイツのメルケル首相、およびショイブレ財務相、欧州中央銀行のアスムセン専務理事らも同様のメッセージを公の場で発している。

EUは「財政緊縮関連法案の議会承認」、「財政緊縮策実行の誓約書」「歳出削減策の具体化」の3つを条件として、第二次支援 を1,300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとした。(1,300億ユーロの追加支援のうちIMFの負担分 が280億ユーロ)

1,300億ユーロの融資は2012-14年に実施される。
このうち、ギリシャが既に融資を受けたのは、
3月の75億ユーロ(ユーロ圏から59億ユーロ、IMFから16億ユーロ)など、少額。

ギリシャが3つの条件を満たさない場合、この融資が受けられない可能性がある。

急進左翼連合(SYRIZA)はユーロ圏残留を主張しているが、緊縮策を廃止して融資を受けられなくなった場合どうするかの方策は持っていない。

ーーー

フランス大統領選では、「欧州には雇用と繁栄こそが必要」と成長重視の財政再建策を提唱するオランド氏が勝利した。
単年度財政赤字をGDPの0.5%以内に抑えることを義務付けた新財政協定について、再交渉を主張している。

これに対し、メルケル独首相は、成長戦略の必要性を認めつつ、「これ以上の財政悪化は容認できない」と言明、新財政協定の再交渉を拒絶した。

ドイツのウェスターウェレ外相は5月11日、ドイツも成長に軸足を置きたいが、歳出拡大を意味するのであれば、そうではないと述べた。ギリシャは、追加支援を受け、ユーロ圏にとどまることを望むのであれば、合意した改革を実施する必要があると指摘した。
 また、ユーロ圏の結束を維持したいが、それはギリシャがユーロ圏にとどまることを望むかどうかに左右されると指摘した。

一旦はギリシャ問題に目処がついたように思われたが、ユーロ圏の政治的混迷懸念が高まった。
ギリシャのユーロ圏離脱の可能性も出てきた。


 

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