サムスン電子が「夢の新素材」と呼ばれる炭素素材グラフェンを活用した新しいトランジスタ構造を開発した。
グラフェンを活用したトランジスタが完成すれば、従来の100倍以上のデータ処理能力が可能になるとされる。
5月17日付のScience誌(電子版)に掲載された。
Graphene Barristor, a Triode Device with a Gate-Controlled Schottky Barrier
半導体にはシリコン素材のトランジスタが数十億個含まれているが、半導体の性能を高めるためにはトランジスタを小さくすることで移動距離を縮めたり、電子の移動速度を高められる素材が必要。
優れた移動速度を持つグラフェンはシリコンにとってかわる物質として脚光を浴びているが、グラフェンが金属に近い特性を持っていることから、電流を遮断できないという問題点がある。
グラフェンをシリコンの代わりに商用化するためには半導体化のプロセスを変える必要があり、この過程でグラフェンの移動速度が急落するため、トランジスタとして使うことには否定的な意見が多かった。
グラフェン (graphene) は炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。
参考 グラフェンの高速トランジスタ応用への注目と課題
(科学技術政策研究所 科学技術動向 2010年5月号)
パク・ソンジュン専門研究員(41)が率いるサムスン電子綜合技術院の研究陣は、2009年から3年にわたる研究で、グラフェンの長所を損なうことなく電流を遮断することのできる素材を開発した。
グラフェンとシリコンを接合して Schottky Barrier
というエネルギーの壁をつくり、壁の高さを調節することで電流を発生させたり、消したりできる。
Barrierを自在に調節することから、サムスン電子は新素材を「Barristor」と命名した。
サムスン電子総合技術院はグラフェンを用いたトランジスタの動作方式に関する中核技術を9つ確保している。
パク・ソンジュン専門研究委員は、 「グラフェンの素子研究の難題を解決したという点で大きな意味を持つ。グラフェン半導体の商用化は約10年後になるだろうが、関連分野でリードするための基礎を築いた。商用化に尽力して、半導体強国としての位置を維持するのに貢献したい」と述べている。
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