中国人民銀行(中央銀行)は6月7日、金融機関の貸出基準金利と預金基準金利(一年物)をともに8日から0.25%引き下げると発表した。
利下げは2008年12月以来3年半ぶり。国内外の需要低迷が中国経済を減速させており、本格的な金融緩和でてこ入れを図る。
0.25%の引き下げにより貸出金利は6.31%、預金金利は3.25%となる。
付記 中国は7月5日、追加利下げを行った。(下記の表を参照)
中国経済は欧州の金融危機などによる外需の低迷で、今年1~3月期まで5・四半期連続で成長率が鈍化し、民間企業を中心に経営が悪化。また、今月1日に発表された5月の景況感を示す指数が6カ月ぶりに悪化に転じた。
市場では当初、中国経済は4~6月期を底に上向くとの見方が大勢を占めていた。しかし景気指標が予想を上回って悪化しているため、これ以上の下振れを防ぐために金融緩和に踏み切ったとみられる。
陳徳銘商務相は4日、中国経済の現状について想定の範囲内との認識を示した上で、「さらに下振れすれば、国内消費や投資、貿易を安定的に伸ばすさまざまな措置を取ることを保証する」と語っていた。
人民銀行は同時に、市中銀行が預金や融資の金利を従来より自由に決められる裁量も与えた。市場ではこの措置を金利市場の自由化における「画期的な一歩」と評価した。
これまでは預金金利は基準金利が上限となっていた。今回、これを1.1倍までとした。
基準金利 上限
従来 3.50% 基準x1.0 3.50% 改正 3.25% 基準x1.1 3.575% 7/5追加 3.00%
基準x1.1 3.30%
また、貸出金利については、従来は下限が基準金利の0.9%となっていたが、これを0.8%とした。
基準金利 下限
従来 6.56% 基準x0.9 5.904% 改正 6.31% 基準x0.8 5.048% 7/5追加 6.00% 基準x0.7 4.200%
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今回の銀行による金利決定の自由化で、一部に混乱が生じている。
利下げに伴い中堅銀行はいったん預金金利を3.50%から3.25%に下げた。
しかし大手銀行が預金金利を3.50%に据え置き、一部銀行は新しい上限の3.575%に引き上げた。
このため、利下げをした銀行は、預金が流出することを懸念し、すぐに撤回し、元の3.50%に戻した。
預金、貸し出しともに基準とは違う金利水準で決められるようになったが、他行を意識せざるを得ず、銀行間の競争に一歩踏み出した。
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なお人民元の対米ドル相場は、このところ低下気味となっている。
4月16日に変動幅を基準値の±1%に拡大したが、6月14日以降はほぼ下限に張り付いている。
端午節の祭日の前日6月21日の終値は6.3642人民元で、2010年6月18日比で7.26%高となっている。
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