東洋紡績は5月24日、サウジアラビアの世界最大級の海水淡水化設備 Ras Al Khair Power and Desalination Plant Phase 1 に、同社の海水淡水化用逆浸透膜エレメント「ホロセップ® (Hollosep)」の採用が決定したと発表した。
東洋紡績は2012年10月1日に「東洋紡」と改称する予定。
海水淡水化用逆浸透膜エレメントは海水を淡水にろ過する中空糸で構成される基幹部材で、圧力容器の中にエレメントを充填し、海水淡水化プラントのモジュールとなる。
エレメントには、微生物の増殖を防ぐために使用される塩素殺菌に優れた耐久性を持つ三酢酸セルロース製の中空糸膜が使用されている。
この計画は、サウジの海水淡水化公団
(Saline Water Conversion Corporation:SWCC) が Jubail市から100kmのRas Al Khairに計画しているもので、日量約100万トンの飲用水を製造、複合サイクル発電設備で2660
MWの発電を行うもの。
Ras Al Khair市は旧称 Ras Al Zawr市。
サウジは同国で産出されるリンとボーキサイトを活用するため、ここにMineral Industrial Cityを建設する。
リン酸2アンモン(DAP)、アルミナ、アルミ精錬、アンモニア、リン酸、硫酸などのプラントを建設するが、電気と水はこれらのプラントに供給される。
アルミ計画はSaudi Arabian Mining Company (MA'ADEN) とAlcoa が担当する。
海水淡水化部分については2010年9月に
韓国のプラントエンジニアリング会社の斗山重工業 (Doosan
Heavy Industries & Construction)が14.6億ドルで受注した。
2014年に運転開始の予定。
日量約100万トンのうち、逆浸透膜法が34.5万トン、蒸発法が72.8万トン(1基
9.1万トンx 8基)で、逆浸透膜法の海水淡水化設備にホロセップが使われる。
斗山重工業の蒸発器は1基で日量 91千トン(30万人分)の飲用水を造る世界最大のもので、大きさでも123m x 33.7m、重量 4,150トンと世界最大。
これまでの最大は、同社がAbu DhabiのShuweihat 2期で建設中の76千トン。
東洋紡では今後も大型案件の受注が見込めるため、岩国機能膜工場の生産能力を3割以上増強する設備投資を行う。
同社は中東での海水淡水化事業の拡大のため、下記により海水淡水化事業の優位性をさらに高めるとしている。
①サウジアラビアでの「ホロセップ」の生産開始
東洋紡は2010年3月、サウジアラビアのArabian Company for Water & Power Development (APD)、伊藤忠と合弁で、サウジアラビアに海水淡水化用逆浸透膜エレメントの製造・販売会社を設立した。
社名 Arabian Japanese Membrane Company, LLC 設立 2010年3月 出資比率 APD 49%、東洋紡 36.1%、伊藤忠 14.9% 所在地 本社・工場:ラービグ市(Rabigh Plus Tech Park内) 事業内容 海水淡水化用逆浸透膜エレメントの製造・販売
APDはサウジにおける主要なIWPP(独立系水・電力事業)案件に出資するなど、同国のインフラ事業における有力企業として事業を展開している。
伊藤忠は1970年代から中東地域において多数の海水淡水化プラントの納入実績を持っている。
本年5月22日に竣工式を挙行、海水淡水化用逆浸透膜エレメント「ホロセップ」の生産を開始した。
今後、サウジアラビアのみならず、その他の中東、北アフリカ諸国にも海水淡水化用逆浸透膜エレメントを広く販売していく予定。
②サウジアラビアの大学機関との共同研究
中東地域に即した海水淡水化技術を開発することを目的として、アブドラ国王科学技術大学(King Abdullah University of Science and Technology)とで共同研究を行うことで合意、5月23日に調印式を行った。
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