BASFの電池材料事業

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三菱化学とBASFは7月17日、三菱化学 のビニレンカーボネートに関する特許をBASFに使用許諾するためのライセンス契約を締結したと発表した。

BASFは本年2月にMerckから高機能バッテリー用電解液事業を買収した。
MerckがSelectilyte®ブランドで販売していた電解液材料の全製品、リチウムイオン・バッテリーの製造に使われる各種添加剤のほか、新規電解質や添加剤関連のメルクの研究ポートフォリオも対象となる。

Merckは三菱化学からこの特許の使用許諾を受けていたが、BASFによるMerckの事業買収に伴い、改めてBASFとして使用許諾を受けるもので、BASFはリチウムイオン・バッテリー関連の電解液事業を強化する。

 

三菱化学の電池材料事業については
  
2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

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BASFはバッテリー材料の研究、開発、製造に今後5年間で総額数億ユーロの投資を計画している。
リチウムイオン・バッテリー用材料の開発ほか、リチウム硫黄電池やリチウム空気電池といった新しいコンセプトのバッテリーについても研究を進めている。

BASFのこの分野での昨年来の動きは急である。

1)   BASFは2011年5月、 リチウムイオン電池用電解質の生産事業に進出することを明らかにした。
有機カーボネートに基づいた高品質の電解液フォーミュレーションを開発し、バッテリー・メーカーに販売するグローバルな電解液チームを設置した。
     
2)   同社は2012年1月1日付でグローバルな "Battery Materials"ユニットを触媒事業本部に新設した。
これまで触媒事業本部でやっていた正極材料開発、中間体事業本部の電解液フォーミュレーション、子会社のBASF Future Businessの次世代リチウムバッテリーを統合した。
     
3)   1月12日にはリチウム硫黄 (Li-S)電池開発のグローバルリーダーの米国のSion Power Corporationに50百万ドルを投じて株主となった。Sion とBASF Future Businessは2009年から共同開発契約を結んでいたが、関係を強化する。
     
4)   BASFは2月14日には太陽光パネルなどを製造する米Energy Conversion Devices子会社のOvonic Batteryを買収したと発表した。
OvonicはNickel-Metalhydride (NiMH:ニッケル水素)電池のグローバルリーダーで、正極活物質(CAM) の製造も行っている。
NiMH技術で多くの特許を取っており、ニッケル水素電池メーカーはほとんど同社からライセンスを受けている。


なお、親会社のEnergy Conversion Devicesは同日、子会社の太陽光発電のUnited Solar Ovonic LLCやSolar Integrated Technologies, Inc.とともに、 破産法第11条の適用を申請したと発表した。

     
5)   2月21日にはBASFは上記のMerckの高機能バッテリー用電解液事業買収を発表した。
6)   これに伴い、7月17日に三菱化学のビニレンカーボネートに関する特許 の使用許諾のライセンス契約を締結したと発表した。
     
7)   BASFは3月14日、Clariant AGの関係会社であるLiFePO4+C Licensing AGとの間で、 Lithium Iron Phosphate (LFP:リン酸鉄リチウム)バッテリー材料技術のグローバルな製造・販売権の取得を目的とした長期的なライセンス契約を締結したことを発表した。

Lithium Iron Phosphate技術を独占的・世界的に保護するものであり、LFP材料の基本的な材料に関する特許、LFP材料製造に用いる炭素被覆に関する特許、炭素被覆のプロセスに関する特許を対象としている。

LiFePO4+C Licensing AGは、Hydro-Québec (Montréal); Université de Montréal; Centre National de la Recherche Scientifique (CNRS:フランス国立科学研究センター)で構成されるこの技術の特許権者が代表する組織。

LFPは、革新的なリチウムイオン電池の製造で使用される画期的な正極材料で 、あらゆる種類のリチウムイオン電池で使用することができ、ハイブリッド車のような高出力用途や定置型電池などにも最適である。

BASFは現在、リチウムイオン電池向けのNickel-Cobalt-Manganese (NCM) 正極材料を提供しているが、今後はLFPの知的財産権が加わることにより、活動がさらに強化される。

BASFはNickel-Cobalt-Manganese技術で世界をリードするアルゴンヌ国立研究所と、Lithium Iron Phosphate技術で最先端の特許ポートフォリオのライセンスを持つLiFePO4+Cの双方から、リチウムイオン電池の材料の製造・販売に関するライセンスを取得した世界で唯一の企業とな る。

     
8)   BASFは4月26日、リチウムイオン電池用電解液フォーミュレーションおよびスペシャリティケミカルのメーカーのNovolyte Technologiesを米国の投資会社Arsenal Capital Partnersから買収したと発表した。

買収対象にはリチウムイオン電池向け電解液フォーミュレーションの開発・製造・マーケティングを中心としたノボライト社のでのエネルギー貯蔵関連の事業と、アリルホスフィン類、高機能溶剤、カスタムメードのスペシャリティ製品などの高機能製品事業が含まれる。

更に、Novolyteと韓国のFoosung Co.(厚成)との中国での合弁会社も継承する。
Foosungは、リチウムイオン電池の性能を左右する電解液フォーミュレーションの製造に不可欠な材料である高純度特殊塩「LiPF6(Lithium Hexafluorophosphate)」のグローバルメーカー。

Novolyteは、米国ルイジアナ州Baton Rougeと中国蘇州に製造拠点を所有している。また、FoosungとBASFの合弁会社が操業を行う予定のLiPF6製造工場は、現在中国の南通に建設中。

BASFでは、「今回の買収により、BASFは欧州、米国、アジア太平洋地域に製造拠点を持つリチウムイオン電池用電解液フォーミュレーションのグローバルサプライヤーとなった。BASFはアミン類、ジオール類、有機酸類、ポリアルコール類、スペシャリティ製品を提供しているが、今回の買収はこれらを補完するとともに、北米市場におけるBASFの存在感を強化してくれるものだと言える」としている。

 


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