中国企業、EUの反ダンピング措置の裁判で勝訴

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欧州司法裁判所は7月19日、浙江新安化工集団が除草剤・グリホサートに関する反ダンピング措置をめぐって欧州連合を訴えていた裁判の最終判決を下した。

同裁判所はEUが同公司に対して取った反ダンピング措置は無効であると認定し、欧州理事会の上告をすべて棄却した。

判決 http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=125218&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=159052

 

EUは1998年に同社の除草剤グリオサートの輸入をダンピングと認定した。

問題は、中国がEUで市場経済国待遇(market economy treatment:MET) を受けていないことである。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。

但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。
EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも
中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている

2006/2/27  EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税

但し、EUの規則には例外規定がある。

Article 2(7)(b)
反ダンピング調査を受けた非市場経済国の製造者が、当該製品に関しては市場経済環境が存在するということを証明した場合、一般ルールが適用される。

具体的には、
原材料コスト、技術や労務費、生産量、価格、投資などが国家の重要な関与なしで、需要と供給を反映した市場のシグナルに対応して決められる場合、等々。

新安化工はこの規定の適用を求めたが、EUは中国政府が新安化工に出資(少数株主)していることを理由に、国家の関与があるとしてこれを拒否した。

このため、新安化工は訴訟に持ち込んだ。

General Court in Luxembourgは2009年に、この例外規定を勘案し、ダンピングでないとの判決を下した。

今回の欧州司法裁判所の判決は、EUがこの判決に対して控訴したもの。

判決では、下級審の判決を支持し、政府が出資しているだけで市場経済国待遇を適用しないのは経済の実態に合っていないとした。

政府の出資と、国家の重要な関与とは同じではないとし(
State control ... cannot be equated to 'significant State interference')、全てのState interferenceが問題なのではなく、 prices, costs, inputsに関する決定でのsignificant interferenceだけが問題であるとしている。

この判決は、今後のEUの中国品の反ダンピング調査に大きな影響を与えることとなる。

EUでは、判決は当該輸出者の実情を基にしたものに過ぎず、今後もケースバイケースで対応するとしている。


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