6月27日付ブログで「三菱化学が今後進めるべきものは、ポリオレフィンの構造改革である」と述べた。
三菱化学の子会社の日本ポリエチレンと日本ポリプロは6月29日、川崎市川崎区千鳥地区のHDPE及びPP工場各1系列を2014年4月に停止すると発表した。
(なお、後記の通り、プライムポリマーもPP 90千トンの停止を発表している)
停止するのは次のプラント。
日本ポリエチレン 日本ポリプロ 停止プラント HDPE 第二系列(スラリー法) PP 第3系列(バルクー気相法) 元の所有者 東燃化学(昭電より譲受) 東燃化学 能力 52,000トン/年 89,000トン/年
これにより、東燃化学の川崎工場のPE、PPは全てなくなることとなる。
但し、構内には東燃化学のJVの日本ユニカーの工場は残る。(LDPE 180,000t、LLDPE/HDPE 120,000t)
東燃化学は下記の事情で日本ポリケムの株を三菱化学に売却し、日本ポリエチレン、日本ポリプロに参加していない。
上記のPE、PPのプラントは三菱化学が日本ポリケムの株とともに買収していると思われる。
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日本ポリエチレンは2003年9月に、日本ポリケムのPE事業を分離、日本ポリオレフィンのPE事業と統合し、設立された。
当初の出資比率は日本ポリケム50%、日本ポリオレフィン42%、三菱商事プラスチック8%であったが、
2008年3月に、日本ポリケム58%、日本ポリオレフィン42%となった。なお、この合併には公取委が反対した。
公取委は、統合会社のLDPEの合算販売シェアは約30%で第1位、上位3社累積シェアは約70%だが、東燃化学を通じて日本ユニカーとの結び付きがあり、これを前提にすればグループの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位、上位3社累積シェアは約80%になるとして問題視した。
このため三菱化学と東燃化学が交渉の結果、2003年1月に三菱化学が東燃化学所有の日本ポリケム株式を買取り、日本ポリケムを三菱の100%子会社とすることで合意、これを受けて公取委は日本ポリエチレンの設立を承認した。
三菱化学が同社の58%の株主となる。
日本ポリプロは、2003年9月に日本ポリケムのPE事業を分離した後、10月に残るPP事業をチッソのPP事業と統合した。
出資比率は日本ポリケム(三菱化学 100%)が65%、チッソが35%である。
日本ポリケムの株主の昭和電工と日石化学(JX日鉱日石エネルギー)はPPではサンアロマーの株主である。
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日本ポリエチレンと日本ポリプロは上記の設備停止後も下記の多くのプラントを有している。(能力:トン)
三菱化学が今後も設備停止に踏み切るかどうか注目される。
日本ポリエチレン |
日本 |
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LDPE | LLDPE | HDPE | PP | ||
三菱化学 | 鹿島 | 62,000 | 261,000 | 10,000 | 556,000 |
水島 | 66,000 | 53,000 | 94,000 | 100,000 | |
四日市(停止済) | (75,000) | (37,000) | |||
東燃化学 | 川崎 | 50,000 | 89,000 | ||
JX日鉱日石 | 川崎 | 94,000 | 50,000 | 121,000 | |
昭和電工 | 大分 | 123,000 | 200,000 | ||
チッソ | 千葉 (丸善石化内) |
250,000 | |||
四日市 (東ソー内) |
80,000 | ||||
不明 | 2,000 | ||||
合計 | 347,000 | 364,000 | 475,000 | 1,075,000 |
注 LDPEの内訳で 2,000トンが不明(合計と合わない)
東燃化学のHDPE能力はこれまで 50,000トンとされている。
参考 川崎の両社及び日本ユニカー、サンアロマーのプラントの立地は以下の通り。
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日本ポリエチレンと日本ポリプロの業績は以下の通り。
なお、三井化学 65%、出光興産 35%のプライムポリマーの業績は以下の通り。
プライムポリマーの能力は以下の通り。(単位:トン)
LDPE | LLDPE | LL/HD併産 | HDPE | PP | ||||
LL | HD | |||||||
プライムポリマー | 出光・千葉 | 60,000 | 130,000 | 400,000 | ||||
三井・千葉 | 85,000 | 11,000 | 87,000 | 116,000 | 223,000 | |||
三井・大阪 | 448,000 | |||||||
日本エボリュー | 三井・千葉 | 240,000 | 増強後 300,000 うち住化 50,000 |
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三井デュポン | 千葉 | 110,000 | ||||||
岩国・大竹 | 60,000 | |||||||
三井化学 | 岩国・大竹 | 3,000 | ||||||
徳山ポリプロ | 徳山 | 200,000 |
50/50製造JV 出光/トクヤマ |
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合計 | 170,000 | 385,000 | 11,000 | 87,000 | 249,000 | 1,271,000 |
なお、プライムポリマーは三井化学市原工場のPP製造設備1系列90千トンを2013年6月に停止する。
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