三菱樹脂は7月10日、同社の管材事業を積水化学工業に譲渡することを決めたと発表した。
公取委の承認を得た後に譲渡する。譲渡額は公表していない。
塩ビ管を中心とする管材事業は、住宅着工件数の減少や公共投資の縮減などによって厳しい状況が続いている。
同社では、今後の厳しい事業環境を勘案すると、自社の枠を超えた取り組みが不可欠であるとの認識に至り、管材製品の生産面で重要なパートナーである積水化学に譲渡することとした。
両社の管材事業を統合し、積水化学が管材のトップメーカーとして本事業を継承していくことが、市場への安定供給と、管材事業の将来の発展のためには最善の策であると判断した。
下水管や給水管に使う汎用タイプの塩ビ管の国内シェアで積水化学は2位、三菱樹脂は3位。積水化学は今回の事業取得で、首位のクボタシーアイを追撃する態勢を整え、管材事業の収益力強化を急ぐ。
事業譲渡の内容は以下の通り。
①同社の管材事業に関わる人員、資産、契約、知的財産権 等
対象は上水道や下水、農水用の塩ビ管、水道やガス用のポリエチレン管などで、住宅の給水給湯管として使う架橋ポリエチレン管(冷熱管材事業)は除く。
2012年3月期の売上高は約230億円で、三菱樹脂の連結売上高の約6%を占める。
②三菱樹脂販売、菱樹商事(いずれも三菱樹脂100%)の管材事業に関わる人員、契約 等
③菱琵テクノ(三菱樹脂100%)の管材事業に関わる機械設備の一部
④同社が保有する以下の管材関連会社の株式
・東洋化学産業(射出・押出・ブロー成型品の製造・販売、三菱樹脂グループ100%)
・羽生プラスチック(押出成形品の製造・販売、三菱樹脂99.8%)
・無錫積菱塑料(樹脂継手等の生産・販売、積水化学51% 三菱樹脂49%)
・M&Aパイプシステムズ(管・継手の生産出荷に関するコンサルティング、積水化学51% 三菱樹脂49%)
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塩ビ管の出荷推移は以下の通りで、住宅着工件数が年間120万戸時代に50万トン弱あったのが、最近(住宅着工が80万戸程度)は30万トン程度となっている。
公共投資は低迷したままである。
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塩ビ管業界は産構法時代には以下の4つのグループをつくっていた。
Aグループ: 積水化学、小松化成(小松製作所)、日本ロール製造
Bグループ: 旭有機材、シーアイ化成(伊藤忠)、アロン化成(東亜合成)
Cグループ: クボタ、日本プラスチック(クボタ)、前澤化成
Dグループ: 三菱樹脂、信越ポリマー
業界は2000年頃から構造改革を始めた。
(積水化学/小松化成)
1997年、積水化学はコマツから小松化成を買収、子会社とし、ヴァンテックと改称した。
(その後、改称し、現在は千葉積水。)
(業界)
2001年11月に、経済産業省の主導の塩ビ管メーカー11社の勉強会が、過剰設備問題等をもとに、設備廃棄や業務提携の必要性を提言する報告書を出した。
(クボタ/シーアイ化成)
2001年11月にクボタとシーアイ化成が塩ビ管での提携で合意、2002年4月に公取委の同意を得て、包括提携契約を締結した。
生産委託、生産集約、設備削減、共同購買、仕様の統一、等々を決めた。2005年4月、両社は本事業を分離し、共同出資会社クボタシーアイ(クボタ 70%、シーアイ化成 30%)を設立した。
2009年4月にクボタ堺工場の塩ビ管・継手の製造を全て中止し、同工場を閉鎖
(積水化学/三菱樹脂)
2001年12月、塩化ビニル管事業での提携を発表
2002年4月、M&Sパイプシステムズを設立
生産工程計画の立案・生産管理・出荷業務管理などの業務を統括
2002年6月、共同で無錫積菱塑料有限公司を設立
今回の三菱樹脂の撤退で、塩ビ管業界はクボタシーアイと積水化学の2トップ体制となる。
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原料PVCメーカーとの関連
三菱樹脂:ヴィテック(三菱化学/東亜合成) 2011年3月に生産を停止、9月末に解散
アロン化成:同上
積水化学:徳山積水工業(積水化学 70%/東ソー 30%)
信越ポリマー:信越化学
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本業界は違法な価格カルテルの容疑で2007年に公取委の調査を受け、2009年2月に公取委から排除措置命令と課徴金納付命令を受けている。
事業者名 排除措置
命令課徴金
納付命令1 積水化学工業 ○ 79億6532万円 2 三菱樹脂 ○ 37億2137万円 3 クボタシーアイ - - 4 アロン化成 - - 5 クボタ - - 6 シーアイ化成 - - 合 計 2社 116億8669万円 クボタシーアイとクボタ、シーアイ化成の3社は違反行為を自主申告した。
アロン化成は他のメンバーから排除され、その後は参加していない。2009/2/18 塩化ビニル管及び同継手で排除措置命令及び課徴金納付命令
積水化学と三菱樹脂は両命令について審判請求を行い、現在も審判手続が続いている。
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