ロシアのプーチン大統領は7月21日、ロシアが世界貿易機関(WTO)に加盟する批准法に署名した。
WTOは2011年12月16日の公式閣僚会議で、ロシアのWTO加盟を正式に承認した。
1993年のロシアの加盟申請以来、18年後の承認となった。
2011/12/22 ロシアがWTO加盟
ロシア下院は7月10日に賛成多数で批准を承認した。
採決の賛否は真っ二つに割れ、賛成238票、反対208、棄権1で、与党第一党「統一ロシア」だけの賛成票で、議定書は批准された。
野党3党は国内産業への打撃を懸念して断固反対の立場をとり、加盟すればロシア経済が崩壊すると警告した。
共産党:我々が売れるのは武器と肥料だけ。WTO加盟は破滅への道。
公正ロシア:経済が現代化していないうちに開放するのは大きな誤り。
WTO加盟が有利に働くのは、国内市場が活発で、競争力のある商品を生産している国だけ。自由民主党(極右):ロシアはWTOに無縁。ロシアはモノを作ることはできても、売ることが下手。
これに対し、経済発展相は、WTOに加盟した場合の経済効果を2年で5000億ルーブル(約1兆2000億円)の歳入増になるとし、一方、輸入関税の減額による予算の直接損失額は、2013年で1880億ルーブル(約4600億円)、2014年で2570億ルーブル(約6300億円)とした。
上院は7月18日、法案を可決した。
プーチン大統領の署名完了をWTOに通知してから30日後 の8月22日にロシアは156カ国目の加盟国となる。
中国は10年前の2001年12月11日に加盟しており(加盟申請は1995年10月)、それ以来の大型加盟となる。
2011/12/13 中国、WTO加盟から10年
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ロシアは加盟後、輸入関税の引き下げと経済の一部の外資開放が求められる。
輸入関税については、現在の平均
9.5%から2015年までに6%へと段階的に引き下げることで合意しており、ロシア政府は9月1日から引き下げを開始する方針を示している。
一方、米国は、対ロ貿易の障壁となっている冷戦時代からの通商規制である「ジャクソンバニック修正条項」の撤廃が議会で認められなければ、ロシアのWTO加盟に伴う恩恵を受けられない可能性もある。
Jackson‐Vanik amendment はアメリカ合衆国通商法第4編の通称で、アメリカによる共産圏諸国への経済制裁と、共産圏諸国に在住するユダヤ人の移住を援助した法律。
ソ連は在ソユダヤ人の海外移住を制限し、高率の税金を掛けていたため、米国は1974年に通商法に本条項を盛り込んだ。
・共産圏については基本として最恵国条項としない。
・移民を阻害しない場合のみ、最恵国条項を適用する。ソ連はこれに反発して1975年1月、最恵国待遇の付与を規定していた米ソ通商協定を破棄した。
1990年になり、ソ連もユダヤ人の出国を全面解禁した。
オバマ米大統領は2011年11月にハワイでロシアのメドベージェフ大統領と会談した後、記者団に対し、ロシアのWTO加盟決定を受けて、ロシアとの通商取引を制限する「ジャクソン・バニック修正条項」の適用を除外するよう議会に働きかける方針を表明した。
米国議会はWTO加盟を目前にしたロシアに対し、同国からの輸入製品への差別を永久に撤廃する内容の「恒久的正常貿易関係」(PNTR)を付与するかどうかの議論を進めている。
* 米国では1998年に最恵国(MFN)からPNTRに名称を変更した。
中国に関しては、米国は1979 年7 月に米中貿易協定を締結し、中国に最恵国待遇を付与した。しかし、非民主主義国には恒久的な最恵国待遇を与えないというジャクソン・バニック修正条項により、最恵国待遇は1 年更新を繰り返す形とした。
その後、2001 年の中国のWTO 加盟の直前に「恒久的正常化通商関係(PNTR)」を付与した。
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