産業革新機構は7月31日、クレハの子会社でリチウムイオン二次電池(LiB)用の材料を扱うクレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン(KBMJ)に総額100 億円を上限とする投資を行うことを決定したと発表した。
これに合わせ、クレハ、伊藤忠、クラレも合計100 億円を投資する。
KBMJは、既に世界No.1 シェアを有するLiB 用のバインダーの販売に加え、クレハ/クラレと共に植物由来原料を有効活用したハードカーボンを開発し、車載用に適した性能と価格競争力を有するLiB 用ハードカーボン負極材の事業化を加速させる。
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クレハと伊藤忠は2011年4月、クレハの開発したリチウムイオン二次電池(LiB)用のハードカーボン負極材「カーボトロン(R)」の製造・販売 とLiB用バインダーの販売を行うことを目的に、クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン(KBMJ)を設立し、2011年10月1日 に営業開始した。
資本金 40百万円 で 、クレハ70%/伊藤忠商事30% となっている。なお、伊藤忠の本分野での取り組みは後記の通り。
対象の製品は下記の通り。
負極材「カーボトロン®P」
難黒鉛化性炭素の範疇に入るが、通常の難黒鉛化性炭素と比べ、リチウムイオンを粒子内部へ容易に拡散できるようデザインされている。
一般的な負極活物質である黒鉛は粒子の体積変化が大きく、耐久性の課題が残されているが、「カーボトロン®P」ではリチウムイオンの吸蔵・放出を繰り返しても結晶構造が安定し体積変化が少ないため、高い信頼性が求められる高性能のリチウムイオン電池に適してい る。
LiB用バインダー「クレハKFポリマー」
高品質のフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)で、1991年に世界で初めて実用化されたリチウムイオン電池のバインダーとして採用されて以降、世界中で使用されている。
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クレハとクラレ子会社のクラレケミカルは、コーヒー穀などを焼成して造る食物由来の負極材を開発した。
クレハとクラレは2011年12月、植物由来原料の新規開発品「バイオカーボトロン」の共同事業化に向けて合意したと発表した。
・クラレが2012年にクレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン(KBMJ)に資本参加・人材投入する。
・KBMJとクラレケミカルの生産合弁会社を新設し、2013年には年産1千トンレベルで量産・供給体制を構築する。
クラレケミカルは岡山県備前市の鶴海工場で各種活性炭を製造するとともに、中国寧夏回族自治区に石炭系活性炭製造の可樂麗化学(寧夏)環境化工有限公司(100%子会社)、フィリッピンのセブ市にヤシ殻系活性炭製造のCenapro Chemical(Cenapro 60%、クラレケミカル35%、丸紅5%)を持っている。
付記
クラレは8月21日、クレハと共同でリチウムイオン電池の材料工場を岡山県備前市に建設すると発表した。
クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパンとクラレケミカルが8月中に共同出資会社「バイオハードカーボン」を設立する。
活性炭を作っているクラレケミカルの鶴海工場の中に、ヤシ殻など植物由来の原料を利用し、年産1000トンの負極材工場を新設する。投資額は約30億円。
2015年までに年産2000~3000トンの設備を別に建設する計画。
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今回、産業革新機構(INCJ)は無議決権優先株式を含め、総額100億円を上限とする投資を行う。
伊藤忠、クラレとINCJの投資は合わせて最大約145億円、クレハもこれに合わせ最大約55億円を引き受け、4社合わせて最大約200億円の資本投入を行う
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この調達資金は、主にLiB用ハードカーボン負極材「カーボトロ ン」及び「バイオカーボトロン」の大規模で安定的なグローバル供給体制を構築するための設備投資に充当される。
引続きクレハがKBMJの議決権の過半数を維持し主導的に業務運営を行 うが、戦略的パートナー各社からKBMJへの取締役派遣を通じ、効率性・透明性の高い経営体制を構築する。ーーー
産業革新機構(INCJ)は、革新性を有する事業への成長資金の供給を目的とする。
詳細は
2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資
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伊藤忠商事は2011年4月からの新中期経営計画で「二次電池」分野を成長分野と位置づけ、取組みを強化している。
・LiB製造メーカーのEner1への出資
伊藤忠は2009年12月にEner1(エナール・ワン)に20百万ドル(5%弱)の出資を行った。
Ener1の100%子会社である EnerDel社は、OEMレベルの車載用のリチウムイオン電池システムを製造可能な電池メーカーで、米国内で唯一、セルから電池システムまで一貫して開発・製造できる量産設備を持っている。・米国大手電力会社Duke Energy社と蓄電池二次利用の共同プロジェクト実施
伊藤忠商事は2010年11月、米国の大手電力会社Duke Energy Corporation と、先端エネルギー技術における提携の契約を締結した。第一弾として、電気自動車用電池の2次利用モデルの検証を開始する。
・米国Simbol Mining Corp. への投資によるリチウム資源の確保
伊藤忠商事は2010年7月、リチウム資源の確保を目指し、米資源開発会社のSimbol Mining Corp. に資本参加した。
シンボルは、カリフォルニア州南部に位置する地熱発電所の使用済み地熱かん水に含まれるリチウムを回収、リチウム化合物を製造する事業を推進している。・北米における戸田工業とのLiB用正極材の合弁事業
伊藤忠と戸田工業は本年3月、リチウムイオン電池の正極材の生産・販売を行う合弁会社を設立し、また、正極材原料を生産するカナダの戸田工業の子会社を合弁会社とすることで基本合意した。
リチウムイオン電池の主要部材である正極材の新工場を米国ミシガン州に建設する。・中国での杉杉集団及び戸田工業とのLiB用正極材合弁事業
伊藤忠商事と戸田工業は2010年2月、寧波杉杉股份有限公司の子会社でリチウムイオン電池の正極材製造分野では中国トップクラスの湖南杉杉新材料有限公司に共同出資することで基本合意した。
両社のSPCが当初25%出資を行い、その後50%の取得を目指す。
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